女の子を口説くのに、昭和特撮ヒーロー番組は禁物。
今回は、そういうオタク的苦い教訓をふくんだお話である。
私は怪獣が好きである。
大傑作怪獣映画『パシフィック・リム』での「kaijyu」という呼び名通り、怪獣というのは日本が成熟させた誇るべき文化であるが、残念なことに世間的なイメージでは「子供の趣味」といったところであり、評価は不当に低い。
特に女子に対してのアピール度は致命的であり、アニメやマンガがきっかけで恋が芽生えるというのは、昨今けっこうあると思うが、これが怪獣ではこうはいかない。
「『進撃の巨人』っておもしろいよね」
「うん、あなたはアニメとマンガ、どっち派?」
なんていう男女の会話の糸口はあるだろうけど、
「『帰ってきたウルトラマン』いいよね」
「うん、あなたはミステラー星人は善玉派? それとも悪玉派?」
とかから生まれる恋など、まずありえないであろう。
そんなモテとは無縁のロンリーウルフな特撮野郎だが、それを実感したのが大学生のころのあるパーティーに参加したときのこと。
「今度、女子を集めてビデオ上映会するからけーへん?」
そんなお誘いをしてきたのは、友人キタノダ君だった。
ビデオ上映会。なんでも男女が集まって、お酒でも飲みながら夜通し映画やテレビドラマなど映像作品を楽しむ、というイベントだそうな。
そんなリア充な話が、なぜにてボンクラ学生たる私などに転がりこんできたのかと問うならば、
「シャロン君って映画好きやん。だから、おもしろい作品あったら、持ってきてもらおうと思って」
なるほど、キタノダ君からすると、彼はこういった学生的チャラい企画は得意だが、映画のような文化系の趣味はうとい。そこでヘルプを頼みたいとのこと。
さらにいえば、その会にはもうひとつ使命があり、それはキタノダ君の友人であるサカイ君の恋の橋渡しだ。
そもそも、映像作品にくわしくないキタノダ君が、このような会を開いたのには理由があり、語学の授業で知り合ったノリコちゃんという女子に恋をしたサカイ君のため、一肌脱ごうとのことなのだ。
チャラ男であるキタノダ君の情報網により、その彼女が映画ファンということが判明したので、それで仲を取り持とうというわけだ。
青春である。いい話ではないか。
そうなるとこっちも気合も入ろうというもので、当時の私は映画青年であり、映画館やレンタルビデオ屋をハシゴしては、数々の名画を観まくっていたのであった。
そこを買っての依頼というわけで、女の子が来るということもさることながら、上映会で流す作品を選ぶ役をおおせつかるというのは、映画好き冥利に尽きるともいえる。
私はこのビデオ上映会を「リュミエール作戦」と命名。文化系人間の腕の見せ所と、気合一番ハチマキを巻くことにする。
ただ問題だったのは、私が映画好きであると同時に、
「狂った昭和特撮番組好き」
でもあったこと。
このかたよった嗜好により、私は大いに「やらかす」こととなるのだが、このときはまだそんな悲劇のことなど知るよしもないのであった。
(続く→こちら)