前回(→こちら)の続き。
恋わずらいに悩む友人サカイ君のため、ビデオ上映合コン(まだDVDでなくVHSの時代だったのです)を企画した男気あふれるキタノダ君。
そこで流す映像作品選考係をおおせつかった不肖この私は、オペレーション「リュミエール」を発動。
カップル誕生の後押しをすべく気合十分で、どどんとここに用意した作品がズバリこれであった。
『流星人間ゾーン』
昭和特撮のファンとしてははずせない名作であり、さらに私がチョイスしたのが、
第18話「指令『日本列島を爆破せよ』」
第19話「命令『Kスイ星で地球をこわせ』」
この前後編。
そう、「迷作」の多い『ゾーン』の中でも、とびきりぶっ飛んだ、近年ネットの動画サイトでも有名になったあの回だ。
さすがは私、女子相手とはいえ、恋愛ものや「泣ける」映画などといった安易には走らない。
まさに「エース投入」という言葉がピッタリの起用法と言えよう。
『流星人間ゾーン』とはどんな番組なのかと問うならば、故郷の星をガロガに滅ぼされたゾーンファイターが防人一家と……。
……って、めんどくさい設定はどうでもよかろう。要は、昭和の時代にアホほど作られた「ウルトラマンのバッタもの」といえるB級巨大ヒーローである。
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ゾーンファイターの雄姿
ゾーンファイターの命と地球征服をねらう悪の宇宙人ガロガは、今回も卑劣な手段で襲いかかってくる。
まずとった手段というのが「PS73」という爆弾を強奪すること。
爆発すると、東京が一瞬で吹き飛ぶという超強力な破壊兵器。
平たくいえば核兵器みたいなものだが、それを使って日本を壊滅させようというのが、ガロガのねらいである。
続いて宇宙から「Kスイ星」という彗星を呼び出し、地球に接近させる。
その磁気によって爆弾の機能を狂わせ、爆発を誘おうという魂胆なのである。
と解説してみると、なんでそんな回りくどいことをするのか、とっとと爆発させたらいーじゃんと傍目には思うかもしれないが、まあともかくもこれが、
「彗星接近まであと何分」
というタイムリミットサスペンスを呼ぶというシナリオ上の都合なのだから、男がこまかいことを言ってはいかんな。
ピンチはもうひとつあって、それがガロガの送りこんできた恐獣(怪獣のこと)ガンダーギラスというおそろしい怪物。
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/4c/46/742152004b15663cd9010cffc6ec6b82.jpg)
恐獣ガンダーギラス
ガロガはPS73を、なんとこのガンダーギラスの体内に埋めこむ、という暴挙に出るのだ。
ただでさえ怖ろしい爆弾に怪獣の上乗せ。これではピンチの二乗である。なんと卑劣で狡猾なガロガなのか!
この状態でパンチやキックなどの大きな衝撃をあたえると、PS73が爆発してしまう。ならゾーンファイターは手も足も出せないではないか!
と派手に「!」つきであおってみたが、みなさんもすでにお察しの通り、
「だからー、それだったら、とっとと爆発させりゃーいーんじゃね?」
やはり、つっこみたくなるところではある。
まあ、子供のアイスクリームを盗み食いするショッカーや、ニセのUFO写真をばらまいて人間同士をケンカさせるバルタン星人など、悪の組織や侵略宇宙人の作戦というのは、まわりくどいものと相場が決まっているのだ。
こうして、彗星の接近、攻撃を仕掛けるわけにはいかない恐獣と、二重のピンチに立たされたゾーンファイター。
このまま放っておけば、地球はガロガの手に落ちてしまう。こちらが手を出せないのをいいことに暴れ狂うガンダーギラスだが、ここでとうとうファイターが仕掛けた。
手も足も出ないこの状況で、正義の男が選んだ起死回生の手段とは、
「ガンダーギラス、ジャンケンで勝負だ!」
このセリフが出た瞬間の、ビデオ上映パーティーの空気をどうか察してほしい。
ただでさえB級丸出しのスットコヒーローであるところへ持ってきて、なんとそいつが恐獣にまさかの「じゃんけん勝負」を挑んだのだ。
こんな展開があり得るだろうか。どこかで「カクン」というアゴがはずれたような音が聞こえた気がした。
だが番組の方は絶好調だ。「負けたらいさぎよく宇宙へ帰る」という条件でジャンケンをするヒーローと怪獣。
そこに、なんらためらうことなく、超かっこいい声でナレーションが入る。
「こうして地球の命運をかけたジャンケンゲームがはじまった!」
そんなものに地球の命運をかけていいのか、という正義のつっこみもなんのその。
場面は大まじめなジャンケンに、突入することになるのである。
(続く→こちら)