映画『ビバ!マリア』を観る。
『死刑台のエレベーター』
『地下鉄のザジ』
『さよなら子供たち』
などなど、お気に入りのルイ・マル監督といえば、これは手を出さないではいられません。
主演が名女優ジャンヌ・モローに「BB(べべ)」ことブリジット・バルドーと豪華版だが、まさにそれにふさわしい、盛りだくさんな内容に仕上がっている。
私は映画紹介に関しては「浜村淳スタイル」を採用しているので、ネタバレがイヤな方は、今回、全部飛ばしてください。
オープニングは1889年のアイルランド。
イングランド軍が衛兵交代をしている隣の芝生で、小さな女の子が毬遊びをしている。
かわいらしい光景で、なんとも牧歌的なはじまりかと思いきや、女の子のむかう先にいたパパが毬に火をつけると、なんと衛兵たちのいる砦が大爆発!
続けて1884年のロンドン。
やはりかわいらしい少女が、雪の中でりんご売り。
健気な彼女が、お届け物を警察署に。
おまわりさんから、頭をなでられたりしながら、しばらくすると署がドッカン!
パパと少女が、逃げ込む先の建物には貼り紙があり、そこには「賞金首」の文字。
もちろん、そこにあるのは2人の写真。
そう、なんとこの仲睦まじい父娘は、支配者であるイングランドに対抗する、アイルランドの爆弾テロリストだったのだ!
そこからさらに時が過ぎ、すっかり大人になったブリジット・バルドーは相も変わらぬテロ生活。
ジブラルタルで、中央アメリカで、憎きイングランド軍をバッコンバッコン爆発させます。まさに爆弾娘。
残念なことに、中央アメリカの仕事でパパは捕まり、最後の命令で泣く泣く橋とイングランド人もろともパパを吹っ飛ばしたべべは、ボードビル一団にまぎれむことに。
そこで、なんとジャンヌ・モローと「マリアとマリア」というユニットを結成し旅芸人になる。
そこから、急にミュージカルがはじまり、ジャンヌとべべが歌うわ踊るは、足や肩までチラリと見せるサービスぶりで、そこにロマンスもはさまって、楽しい歌劇と恋愛ものに。
『地下鉄のザジ』を撮ったルイ・マルのことだから、スラップスティックな恋愛コメディーに走るのかと思いきや、ジャンヌが革命青年に恋して、物語はまさかの急展開。
死んだ恋人の意志を継ぎ、さすがは女芸人ということでシェイクスピアの『ジュリアス・シーザー』のセリフで民衆をアジってアジって、なんと気がつけば革命軍のリーダーに(!)。
さっきまで機嫌よく、歌って踊ってしてたのに、
「なんでそーなるの?」
という話だが、最初は嫌がっでたべべも、女の友情と昔取った杵柄ということで、いつも間にやら爆弾片手に手助けするハメに。
そこからは美女2人が、ライフル撃つはマシンガンぶっ放すは、当然のことながら爆弾もバンバンで、もう大変なことに。
いつの間にか物語は南米風西部劇になり、アクションあり美女の危機ありのハラハラドキドキで、でもそこはルイ・マル監督だから、やたらとエレガント。
なにかもう、娯楽要素てんこ盛りで、まー観ていて楽しく、ただただゴキゲンだ。
あと、この映画はエンタメの裏に、ひそかな風刺性もある。
中南米といえば、とにかく「独裁」のイメージがあった時代背景もあり、しかも権力といえば資本家と軍隊と宗教がワンセットということで、時代や地域を問わず普遍性があることもわかる。
今なら「メディア」も入ることだろうけど、
「電気がある」
ことが権力者の自慢なんだから、まだそういう時代ですらないのだろう。
「ここは中世」
ってセリフもあるしね。
こういうのは、できたら「他人事」として楽しみたいけど、今の日本だとどうなんでしょう。
そんなことも感じさせてくれる、ハチャメチャでゆかいな娯楽作『ビバ!マリア』は、女優の魅力もすばらしく、とってもオススメです。