鷲は舞い降りた 羽生善治vs米長邦雄 1993年 第43期王将戦 その2

2023年01月30日 | 将棋・シリーズもの 中編 長編

 前回の続き。

 1993年王将リーグ

 羽生善治五冠(竜王・棋聖・棋王・王位・王座)と米長邦雄名人の一戦は、相矢倉から羽生が入玉を目指すのを、米長が角金銀損を甘受して押し返して大熱戦に。

 

 

 

 図は米長が△46飛としたところだが、これで一見、先手に受けがないように見える。

 △76飛を防いで▲77歩と打っても、△83銀と取って、これが△84桂からの詰めろで、ほとんど必至

 進退窮まったようだが、ここから羽生が次々と手を繰り出すのにご注目を。

 

 

 

 

 

 ▲66歩と打つのが軽妙な手。

 △同飛は「大駒は近づけて受けよ」の格言通り、▲77銀と先手で受けられる。

 ▲77銀に△67飛成など逃げれば、4筋に飛車の利きがなくなるので、▲41銀などの筋で攻守所を変える。

 後手は単に△83銀と成桂を取るが、▲73とと捨てて、△同金に▲65角と打つのが、また雰囲気の出た手。

 

 

 ▲76ヒモをつけながら、どこかで▲32角成の強襲もねらった攻防だが、時間もないのに、よくひねり出せるものである。

 米長は△84桂と打ち、▲同桂△同銀とせまる。

 

 

 

 先手玉は金縛りだが、後手はしかないため王手がかからない。

 一瞬のチャンスに、羽生は▲34桂と反撃。は渡しても自陣に響かない形だから、そこが頼みの綱である。

 △同銀▲同歩△84桂の効果で△66飛と王手されるも、そこで▲76角打(!)。

 

 

 嗚呼、かなしいかな。先手玉は一歩も動けず、飛車金銀香のどれかがあれば1手詰みなのに、頭の丸いだけではせまるのがむずかしい。

 こうなると大ピンチに見えて、反面読みやすい局面ともいえる。

 一手スキの連続でせまるか、そうでなくとも、角桂歩以外の駒を渡さず事を進めればいいのだ。

 それも容易というわけではないが、その勝利条件を羽生は見事にクリアしてしまう。

 後手は▲32角成を防いで△54歩と打つが、▲44銀△36飛▲41銀とラッシュ。

 

 

 

 

 以下、△34飛▲33香と打ちこんで、△44飛▲32香成△12玉▲22金△13玉▲23金△同玉

 

 

 この熱戦も、ついに結末が見えてきたようだ。

 ここからの3手で先手が勝ちになる。

 実戦で現れるには、あまりにもカッコイイ筋なので、みなさまも考えてみてください。

 

 

 

 

 

 ▲67角と引くのが妙手

 △同とと取らせて△56への利きを消してから、そこで▲56角と引くのが、すばらしい組み立て。

 

 

 2枚がヒラリと舞い降り、これが△34から△45の逃走ルートを封鎖して、先手勝ち。

 △24玉▲23飛

 ▲56角△45歩合駒しても、▲22飛と打って詰み。

 まるで江戸時代の古典詰将棋のような形で、泥仕合から最終盤は華麗な手で収束と、将棋のおもしろさのエッセンスが詰まったような一局でした。拍手、拍手。

 

 (続く

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