下町流三間飛車 先崎学vs小倉久史 1990年 C級2組順位戦

2023年04月26日 | 将棋・名局
 三間飛車が、いつの間にか復権している。
 
 もともと、軽いさばきを得意とする振り飛車党には人気の戦法だが、平成のころというのは居飛車穴熊に組まれやすいということで、いわゆる「勝ちにくい」戦い方を余儀なくされるイメージがあった。
 
 そのため「スペシャリスト」である中田功八段の「コーヤン流」が孤軍奮闘しているような時代が長かったが、その後
 
 
 
 「三間飛車藤井システム」
 
 「トマホーク」
 
 「阪田流三間飛車」
 
 
 などなど様々な試行錯誤や新アイデアがあり、今ではメジャー戦法に見事昇格。
 
 ということで、今回はそんな三間飛車の熱局をお届けしたい。
 
 
 舞台は1990年C級2組順位戦、2回戦。
 
 先崎学五段小倉久史四段の一戦。
 
 小倉と言えばコーヤンと並ぶ三間飛車のスペシャリストで、こちらは「下町流」の愛称で人気である。
 
 当然のごとく三間飛車に振ると、先崎はこちらも得意の居飛車穴熊
 
 序盤でちょっかいを出した先崎だが、小倉の対応が巧みでゆさぶりに失敗する。
 
 むかえたこの局面。
 
 
 
 
 
 
 飛車がさばけそうなうえに、△58にいると金も大きく、振り飛車が指しやすそうに見える。
 
 実際、先崎も苦戦を意識していたようだが、ここですごい勝負手をくり出す。
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 ▲96歩と突くのが、ちょっと思いつかない反撃の筋。
 
 を取られたはずのから逆襲していくのを、俗に「地獄突き」なんていうけど、穴熊からのそれなど見たこともない形。
 
 △同歩なら、▲93歩と打って、△同香▲66角とのぞく筋で反撃。
 
 
 
 
 
 本人も成算はなかったというか、なかばヤケクソのような心境だったようだが、
 
 
 「△96同歩とは取りにくいはず」
 
 
 という目論見もあった。
 
 なんといっても相手は穴熊だ。いくら無理攻めといっても、固さにまかせてどんな乱暴をしてくるかわからない。
 
 そこまでしなくても指せそうだし、ましてや負けられない順位戦では、ますます取りにくいだろう。
 
 小倉は放置して△46角とするが、先崎もあれこれ手をつくして端を取りこみ、以下▲94歩△92歩とあやまらせることに成功。
 
 
 
 
 
 これで優勢になったわけではないが、将棋はよく、
 
 
 「たとえ不利でも、どこかで主張点を作っておくことが大事」
 
 
 なんて解説されるもので、この端歩を詰めた形などがその例だろう。
 
 9筋のかけ引きが一段落したところで、まずはオードブルが終了。
 
 ここからはお待たせ、メインディッシュのねじり合いに突入するのだ。
 
 
 (続く
 
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