前回に続いて、「安用寺孝功世代」が中心のオタク談義。
ウルトラマンにくわしくない友人ワカバヤシ君が、昭和の狂った特撮エピソードを聞いて、そのあまりのハイセンスな内容に、
「ボクをだまして、からかってるんだろ?」
すっかり疑心暗鬼に。
そりゃまあ、
「水ばっかりガブガブ飲んでる主人公が、弱っちい正義のロボットを差し置いて、ムチでバシバシ巨大怪獣を倒す話」
なんて言われても、「え? それネタやろ?」としか思いませんわな。
では、まずは登場人物。
1.ベットウ君
後輩。戦隊ヒーロー、アニメ、マンガ、プロレスが得意ジャンル。
好きな『ウルトラQ』の怪獣はぺギラ。
2.ワカバヤシ君
元関東人。オタクではなく、映画、文学、哲学などにくわしいインテリ。
好きな『ウルトラQ』の怪獣は特になし。
3.カネダ先輩
SF、ミステリ、映画、ゲームなどが専門。
好きな『ウルトラQ』の怪獣はパゴス
4.私
特撮、SF、ミステリ、映画あたりが専門。
好きな『ウルトラQ』の怪獣はマンモスフラワー
「なんか、日本の特撮って、すごいんだね」
「すごいやろ。なんかねー、頭狂ってるよな」
「ファミコン黎明期みたいな、闇鍋カオスな勢いはありましたよね」
「今やったら、一時期のなろう系みたいな感じかもな。ちょっと前のニコ生とか」
「どんなジャンルも、出始めのときは無茶できるねん。それが楽しい。昭慶爆発とか」
「『日本沈没』とか最高やけど、絶対にケガ人出てますよね」
「見ただけで、【あ、これヤバイやつや】ってわかるもんな。でもこの時代の怖いところは、別にこの人が特別でもないという」
「ふつうのアクションシーンでも、俳優さんの周りでバンバン爆発させるし」
「こないだ亡くなった団時朗さんも、外ロケでそこらじゅうに火薬の仕込んであるところを走るのとか、メチャ怖かったって言うてはりましたね」
「どこに埋めてあるかとか、本番中にイチイチ気にしてられへんから」
「芝居しながら、めくらめっぽうで走るしかない」
「マジで、地雷原で運動会とか、してるようなもんですもんね」
「『空手バカ一代』の特訓シーンみたいや」
「アハハハハハ! まあ、あれは創作ですけど」
「なに言うてるねん。あれは全部、ホンマのことやん」
「んなわけあるかい! カネダ先輩、この人アホですわ」
「(真顔で)あのマンガには事実しか描いてないぞ」
「出た、大槻ケンヂの【ウソしか描いてないのに、信者はあれを全部本当のことと信じている】という意味で『空バカ』=聖書説」
「あのさー、盛り上がってるところ悪いけど、ひとつ質問していい?」
「どうぞ、どうぞ」
「その『シン・ウルトラマン』ってさあ、劇中に正義の組織みたいなの出てくるの? 【地球防衛隊】みたいな」
「あー、それは出ますよ」
「【気特対】やったけ」
「それは山本弘の『MM9』ですわ」
「【気象庁特異生物対策部】やね」
「『シン・マン』は禍威獣特設対策室で【禍特対】。ちなみに、どっちも科学特捜隊の略称である科特隊が元ネタっすね」
「で、それがどした?」
「うーん、こういうこというと言うと、怒られるかもしれないけど、そういう組織があるなら、ウルトラマンっていらないんじゃないかって」
「ほう」
「だってその、科特隊だか禍特対って、怪獣退治のスペシャリストなわけでしょ? それなりの戦力は持ってるわけで」
「スーパーガンにスパイダーショット、マルス133だって、立派に怪獣を倒してるよな」
「なんか、ふつうに戦って、勝てる気がするんだけど。怪獣って、要はデカい動物みたいなもんだし」
「あー、それは全然勝てますねえ」
「あ、そうなの?」
「それはなー、特撮ファンの間では、まあ常識というか」
「全然、怪獣に人間は勝てるねん」
「科特隊とか出んでも、自衛隊で充分」
「戦車とか出したら、【撃て】【どどどーん】でオシマイ」
「熊退治のノリっすね」
「へーえ」
「だから、それこそ『MM9』は怪獣を倒す方法よりも、【いかに倒せない状況を作るか】を考えるのがキモやったって、作者も言うてた」
「本気出したら勝つから【怪獣の血液が劇薬で、飛び散ると大惨事になるから攻撃できない】みたいな縛り作ってね」
「有川浩『海の底』も、自衛隊出たら一発でしたもんね」
「だから、あの小説は自衛隊を《出せない》葛藤がドラマになってる」
「まあ、レガリスは数メートルくらいで、ちっこいからホンマに害獣退治と変わらん」
「じゃあ、自衛隊とか地球防衛軍が攻撃するミサイルを次々はね返されて《ウルトラマン、助けて!》みたいなシーンは、基本フィクションなんだね」
「ドラマを盛り上げるために、あえて噛ませ犬をやってくれてる」
「けど、初代マンの方の科特隊は結構がんばってますよ」
「そうなんだ」
「結構、怪獣は倒してるのよな。えーと、なにあったけ。まず、アントラー」
「ウルトラマンが大苦戦するのを、キャップのナイススローでね」
スペシウム光線にノーダメのアントラー。カッケー。
「スゴイ遠投とコントロールで、青い球を命中させるねんな。あの回はバラージのセットもすばらしい」
「別の映画のセットに、勝手に入って撮ったんですよね」
「そういや『奇巌城の冒険』って観たことある人に、会ったことないなあ」
「たしかに。そもそも、ソフト化されてるんやろか」
「アントラー出るんかな」
「出るわけないでしょ」
「オレ、世界中のすべての映像作品に、怪獣出てほしい人やから」
「ただの気ちがいですやん」
「『ローマの休日』とかでも?」
「あーいいッスねえ。全然ありです」
「なに出すんです?」
「ビルガモとか」
「どういうセンスなんスか。やっぱそこはアボラスとバニラやないんですか?」
「スタジアムあるからな。今度、『名作映画に怪獣が出るなら、どれが合う?』って企画やろうか」
「それ、いいですね!」
ローマが似合う男(?)。ロボット怪獣ビルガモ。「バルタニック・ウェーブ」がイカす。かわいい。
「話を戻して、アントラーの次はマグラーか」
「マグラかマグラーかで、一晩悩むやつですね」
「ナパーム手榴弾でノックダウンってのが、シブいんよなあ」
(続く)