Liner Notes

観たこと、聴いたこと、読んだことを忘れないように印象に残った光景を栞として綴ってみました

∫33「西本願寺」 京都, 1591.

2016-09-16 | Architecture
 過酷な修行を通じて、自らの力でよこしまな考え方や他人を見くびり侮る気持ちを消し去ることは限り無く困難を極めるもの。

 だからこそ、よこしまな考え方や他人を見くびり侮る気持ちを消し去る為に、ひたすらに「南無阿弥陀仏」と唱え、限り無き光を司る阿弥陀の力にすがることを「他力本願」と言うそうです。

 即ち、「本願」とは願いを叶えてくれることを期待するのではなく、よこしまな考え方や他人を見くびり侮る気持ちを消し去る自らの覚悟そのものなのかもしれません。

初稿 2016/09/16
校正 2020/12/08
写真 龍谷山 本願寺 御影堂門(浄土真宗)
撮影 2016/07/18(京都・堀川六条)

§53「夏草の賦」(長曽我部元親) 司馬遼太郎, 1968.

2016-09-02 | Book Reviews
 京よりはるか南海の地 土佐から四国統一を志し、天下取りに名乗りを挙げんとする長宗我部元親。彼の仮想敵国は、土佐よりはるか京に通ずる要地である美濃。そして彼の好敵手は、その美濃 岐阜を根拠地とする未だまみえることなき織田信長。

 彼が織田信長の重臣 明智光秀の筆頭家老の娘を娶るところからこの物語は始まります。

 将の将たる所以は、先を駆けぬもの 逃げぬもの。勝つべくして勝つことに他ならず、抜かりなく備えを施しても、その備えのみしか役には立たず、よもや信長が光秀に討たれることなど思いもよらなかったかもしれません。

 ひょっとしたら、元親の目的は、信長と肩を並べることだったのかもしれず、その目的の喪失がもたらしたことは、元親のみならず、嫡男 盛親の人格形成のみならず、長曽我部家そのものの終焉にまで影を落としているような気がします。

初稿 2016/09/02
校正 2020/12/09
写真「夏草や兵(つはもの)どもの夢のあと」
撮影 2016/04/30(兵庫・竹田城)