Liner Notes

観たこと、聴いたこと、読んだことを忘れないように印象に残った光景を栞として綴ってみました

§17「アメリカ海兵隊」 野中郁次郎, 1995.

2013-06-29 | Book Reviews
 アメリカ海兵隊、よく耳にしますがどのような組織かはよく知りませんでした。陸軍とも海軍とも異なる軍隊であり、太平洋戦争における南方諸島を奪還するための上陸部隊だそうです。

 時代に応じて絶えず、組織の存亡をかけて自らがその役割と目的を変えて、自らでその役割と目的を果たした組織ですが、目的は時代や状況に応じて絶えず変わるものの、決して変わらない必要なことがあるような気がします。

 暗黙知とは、いかに技術が進化しても五感で経験し、獲得する直感的なイメージや熟練したノウハウの塊であり、これが無ければマニュアルやスペックとしての形式知に変換しても底の浅い知にしかならないような気がします。これこそがまさに競争力の源泉かもしれません。

 以心伝心とは、必要なことは明確な指示ではなく、お互いを深く理解しあい、お互いの考えていることを察しあい、重要な言葉だけに留めること。これこそが統制のありかたのような気がします。

 このふたつを繋げる唯一の術は、共に苦労して、基本的なことをひたすら繰り返すこと。それも、自らの身の丈をちょっとだけ越えた環境や状況下で、自らの身の丈にあったちょっとした工夫や努力が実るとき、自らでなんとかできるようになり、まわりもなんとかしてくれるように思ってくれることこそが信頼感だと思います。

 余談になりますが、娘のバレーボールを見ていてふと思うのは、勝つことを目的とすると、とかく負けないことであったりミスしないことを意識しがちです。

 ひいては人のミスにほっとすることに繋がりかねず、敵であれ味方であれ、素晴らしいプレーには、素晴らしいと言える素直さと向上心が大切であり、まず、そこがスタートラインのような気がします。

初稿 2013/06/29
校正 2021/03/11
写真 揚陸機能も担うおおすみ型輸送艦
撮影 2009/02/14(広島・瀬戸内海)

§16「失敗の本質」 野中郁次郎 他, 1984.

2013-06-14 | Book Reviews
 勝利とは、相手を完膚なきまでに打ちのめすことして捉えてしまうがゆえに、自らが完膚なきまでに打ちのめされることを敗北として捉えざるをえないかもしれません。

 その結果、完璧な勝利は完璧であるがゆえに省みることすら忘れてしまうかも知れず、完璧な敗北は逆説的に自らの存在を否定せざるを得ないような気がします。

 そもそも、勝負に臨むにあたっては、長期的な視点に立脚した戦略目的と短期的な指標をもった戦術目標があるべきだと思います。

 とはいえ、目的として完璧な勝利を追求するがあまり、勝利の本質を見失った戦史を紐解くと、

「よかれと思って、やったのだが」
「あのときは、ああせざるを得なかった」
・・・・・

と、つい日頃から言いたくなる言葉に潜むのは、必ずといっていいほど曖昧な目的や二重の目的が存在しているような気がします。

初稿 2013/06/14
校正 2021/03/12
写真 大艦巨砲主義・大和型戦艦(1/10模型)
撮影 2008/07/26(広島・呉市海事歴史科学館)

§15「危機管理のノウハウ」 佐々淳行, 1984.

2013-06-06 | Book Reviews
 よきにつけ、あしきにつけ、人にとって特筆すべき能力のひとつは忘れることが出来ることなのかもしれません。あとになって、いつまでも過去の苦しみや悩みを常に思いだして考え続けてしまうことは、とても身も体ももたないからいわば自浄作用なのでしょうか。

 一方で、過去の失敗経験や歴史を紐解けば、幾度も繰り返すことも人にとって特筆すべき能力のひとつなのかもしれません。

 とはいえ、すべてを忘れ去る必要はなく、すべてを思い起こす必要もなく、大事なことは栞(インデックス)をつけることのような気がします。

 責任や権限がないのに外から口をはさむことを「Double Eagle」、相手を見くびり小手先で対応することを「Piecemeal Attack」と呼ぶそうです。

 やってはならない、べからず集ではないのですが、問題の本質を端的に捉える言葉の数々は、読んで納得するだけでなく、自らが置かれた状況で実践してみてはじめて言葉が意味を持ち、自らに意味を与えてくれると思います。

 志(こころざし)や心構えだけを身に付けても、固執や執着に繋がりかねず、護る術を身に付けなければ何も護れないような気がします。

初稿 2013/06/06
校正 2021/03/13
写真 旧因州池田屋敷表門
撮影 2012/08/24(東京・上野公園)