Liner Notes

観たこと、聴いたこと、読んだことを忘れないように印象に残った光景を栞として綴ってみました

#75「もうひとつの同窓会」

2022-10-10 | Liner Notes
 高校を卒業して約三十年、コロナ禍による延期があったものの、恩師の方々の模擬授業など、同期百有余人が集った同窓会。

 英語の模擬授業は、Apple社の創始者であるSteve Jobs氏が五十歳の時、とある大学の卒業式で講演した内容で、印象に残った言葉が、

「Stay Hungry, Stay Foolish.」
(愚直に取り組み、安住することなかれ)

 高校時代には意識して考えなかった校訓の一つである「鍛身養志」、その言葉を揮毫した書やレリーフがいまもなお教室や正門の傍らに在るさまをふと眼にすると、その言葉がもたらす意味や価値観なるものをあらためて考えるきっかけも与えてくれるような気がしました。

 ところで、"世界"という言葉をごくあたり前のように使いますが、ひょっとしたら、卒業した一人ひとりが歩んだ約三十年の道に沿って、それぞれの"世界なるもの"がそれぞれに存在しているのかもしれません。

 もしかしたら、それは自分にとって大切な物語の一つであるからこそ、そこに安住することなく、それはどういうことなのか、なぜそうなっているのか、そして、どうしたいのかと、問い続けることが大切なのかもしれません。

 ふと、約三十年前の卒業式で斉唱した校歌のフレーズがなんとなく甦えってくる気がします。

「〜世界の平和 祈りつつ 力ためさむ この生命」(佐賀県立佐賀西高校 校歌第四番抜粋)

追伸 幹事会や事務局のみなさま、充実した時間をありがとうございました。

初稿 2022/10/10
写真 母校正門に佇む校訓を刻んだレリーフ
撮影 2022/10/9(佐賀・卒業30周年記念同窓会)

§161「メタフィジカル・パンチ」 池田晶子, 1996.

2022-10-01 | Book Reviews
 フィジカルという言葉は「物理的」という意味ですが、眼の前にある事象、即ちあたり前と思っている出来事や物事のかたちやありようを示唆するのかもしれません。

「それがそこになければ、それについて言うことができない」(※1, p39)

 一方、メタという言葉はギリシャ語で「超えた」という意味らしいですが、転じて視点を変えることを示唆しているのかもしれません。

 本書「メタフィジカル・パンチ」は、その道の専門家や著名人と称される人々の考え方について、なぜそうなのか?と考えることの大切さを示唆しているような気がします。

「この人が見ているその先にあるもの、を、私もまたこの人の目を通して見る」(※2, p.12)

 ところで、魔法使いであることを知らされた少年が魔法の学校に入学して、魔法の世界で様々な人達との出会いを通じた成長を描いた「ハリー・ポッター」という物語に惹かれてしまう人も多いと思います。

 ひょっとしたら、現実には在りえないとは認識していても、観る者がその自らの意識のなかにその物語を"存在させながら"、自らもまたその物語に"存在している"のかもしれません。

「〜『ひょっとしたら』、この種のことばが発語されるとき、そこには、『存在』が、顔さえ見せずにその顔を覗かせているのだ」(※3, p.220)

初稿 2022/10/01
出典
※1)「事象そのものへ!」 池田晶子, 1991.
※2)「メタフィジカル・パンチ」 池田晶子, 1996.
※3)「オン! 」 池田晶子, 1995.
写真「ウィザーディング・ワールド・オブ・ハリー・ポッター(ホグワーツ魔法魔術学校)」
撮影 2022/08/21(大阪・ユニバーサル・スタジオ・ジャパン)