Liner Notes

観たこと、聴いたこと、読んだことを忘れないように印象に残った光景を栞として綴ってみました

#74「もうひとつの夏休み」

2022-08-28 | Liner Notes
 子どもたちの夏休みも終盤。来年には中学生になる次女にとっては、頭を悩ませる宿題のひとつが読書感想文なのかもしれません。

 楽しみにしているユニバに行くのを明日に控えた次女との会話の幾つかから。

「二回もこの本を読んだんだけど、読書感想文っていったい何を書けばいいの?」

「そうだね。ではまず、その本を選んだのはなぜかな?例えば、表紙の絵やタイトルとかでもなんでもいいからね。次に、印象に残った文章を幾つか書き留めて順番をつけてみるといいかもね」

「そしたら、そのなかで一番印象に残った文章を選んでみて、それはなぜだろうって考えてみてごらん。そうすると、その本を選んだ理由とか作者が伝えようとしたことなんかが、なんとなく分かるかもしれないね」

 とかく、学校や塾とかで正解を答えなければならないという焦りを感じると思うけど、答えを知ることよりも考えることの大切さを知るきっかけにしてほしいと思います。

 追伸 次女とのそんな対話もまた、もうひとつの夏休みの思い出になるのかもしれません。

初稿 2022/08/28
写真 フライング・スヌーピー
撮影 2022/08/22(大阪・ユニバーサル・スタジオ・ジャパン)

§158「ハイデガー『存在と時間』の構築」 木田 元, 2000.

2022-08-22 | Book Reviews
 ハイデガーの「存在と時間」が未完の書に至った理由について、彼の手記や講義録を紐解いて書き遂げたかったであろうことも探った物語です。「ハイデガーの思想」 木田元(§157)の続編として読むと興味深いかもしれません。

 第一次世界大戦がもたらした破壊と惨劇によって、そこに在るものとして認識していた出来事や物事のかたちやありようが消失したとき、「そこに在ったものは何か、そもそも存在とは如何なるものか」という問いから、「存在と時間」という物語が始まったような気がします。

「存在という視点の設定は、ある範囲内で自由に委ねられている。その視点の設定の仕方によって、その視点のもとに見られる存在者全体のあり方が変わってくる」(p.197)

 過去から未来へと一方向に進む時間軸に沿って発達する科学技術が豊かな生活や安全な社会や平和な世界をもたらす近代化という世界観にとって、第一次世界大戦は危機的な問題だったと思います。

 ひょっとしたら、ハイデガーは戦禍による惨劇を再び繰り返すことのないように、「世界とは如何なるものであるか」を考えるきっかけを世に問おうとしたのかもしれません。

「彼は、人間中心主義的な近代ヨーロッパ文化を克服し、文化形成の新たな方向を切り拓くことができると思ったに違いない」(p.202)

 とはいえ、第二次世界大戦のみならず今もなお戦争を抑止することがいまだ困難な時代だからこそ、「存在と時間」は未完のままであり続けるような気もします。

初稿 2022/08/22
出典 「ハイデガー『存在と時間』の構築」
木田元, 2000. 現代岩波文庫 学術9
写真 プラハの天文時計, 1420.
撮影 2001/09/11(チェコ・プラハ)

#73「もうひとつのインターンシップ」

2022-08-15 | Liner Notes
  2025年卒の就活から、採用する側がインターンシップに参加した情報を選考に利用することができるようになるそうです。

 インターンシップの二日目、最終日のレポート発表に頭を悩ませる大学三年生の長女へ送った三つのメッセージ。

「経験した現場の問題はなにかな?『問題』とは、在るべき姿とのギャップ、もしくは、放っておいたら大変なことになること、そのいづれかと考えるとわかりやすいかもね」

「経験した現場の課題はなにかな?『課題』とは、『問題』を解決するために必要なことと考えるとわかりやすいかもね」

「その二つの観点から現場の方々や同行してくれる先輩と話してごらん。思わぬ気づきを得られるかもね。そして、その対話そのものが最終日のレポート発表として自ずからまとまりますよ」

 とかく、何社に応募したとか、就活に有利だとか、メディアや友達の情報に焦りを感じると思うけど、何かを知ることよりも考えることの大切さを知るきっかけにしてほしいと思います。

 追伸 長女とのそんな対話もまた、もうひとつのインターンシップなのかもしれません。

初稿 2022/08/15
写真 干満の彼方に続く道
撮影 2022/08/11(佐賀・太良町)