Liner Notes

観たこと、聴いたこと、読んだことを忘れないように印象に残った光景を栞として綴ってみました

♪9「美しいということは」

2013-12-25 | Season's Greeting
「美しい花がある、『花』の美しさというものはない」

小林秀雄は、「無常という事」のなかでこう記しています(「当麻」59頁, 1942.)

 「当麻」とは能の曲目のひとつ、作者自らが美しいと感じた印象は舞台を介して観る人に伝わることはあっても、その美しさなるものを説明することは難しいかもしれません。

 言葉は、自分が思いついたことを記すのではなく、ありのままの自分があるがままに記すとき、言葉が私に何かを語らしめるのかもしれません。

初稿 2013/12/25
校正 2022/05/12
写真 大阪証券取引所
撮影 2013/12/10(大阪・北浜)

∫15「勝鬨橋」 東京・隅田川, 1940.

2013-12-22 | Architecture
 川は交通の障害にもなりますが、逆に水運の盛んなオランダ等では橋が航路の妨げ。

 川を渡るという機能に加え、船を通すという機能を持たせたのが跳ね橋(可動橋)と呼ばれるもので、勝鬨橋は日本の代表的な存在です。

 とはいえ、約3,000トンの船を通すために、約2,000トンの橋を日に5回ほど跳開したのはかつてのこと。

 もはや、増える交通量を捌くことができず、橋を跳ねあげる役割は終えたものの、いまもなお存在し続けるのは、作った技術者だけでなく、渡った歩行者、眺めた人びと、それぞれがそれぞれの記憶のなかで、その姿になんらかの価値を持たせているのだからかもしれません。

初稿 2013/12/22
校正 2021/02/13
写真 勝鬨橋, 1940.
撮影 2013/12/15(東京・隅田川)

§21「無意識の構造」 河合隼雄, 1977.

2013-12-13 | Book Reviews
 目的をかなえるために努力すれば、必ず報われるはず。結果には必ず、原因が存在するという考え方は因果性と呼ばれ、古典力学における決定論の基本的原理ともいえるもの。

 日常生活を支えるあらゆる製品やシステムのほぼすべてが因果性を原理として働いてると思います。言うなれば、すべてはあらかじめ決められているべきという必然性ともいえるもの。

 とはいえ、思いがけず、ちょっとしたきっかけで大切な人と出会ったときであったり、思いもよらず、遅刻したおかげで事故を間一髪で避けれたときのように、そういった意図せず行動した時に織り成す偶然の一致を共時性(シンクロニシティ)と呼ぶそうです。

 言うなれば、因果性とは異なった予期せぬ様々な偶然の出来事に意味を持たせ解釈することなのかもしれません。

 量子力学における不確定原理によれば、目に見えない分子レベルの位置と速度は決して予測できないものの、統計確率的にその振る舞いを解釈することが出来るそうです。 
     
 いままでの人生を振り返っても、必ずしも、すべてが上手くいっているわけではありませんが、ものの見方を変えてみれば、いままでの人生に無駄なことなんてひとつもないのかも知れません。

初稿 2013/12/13
校正 2021/02/14
写真 大阪市立図書館
撮影 2013/08/24(大阪・中之島)

∫14「十三専用橋」 大阪・淀川, 1984.

2013-12-07 | Architecture
 専攻が土木工学だった大学時代に、最も頭を悩ませた科目が構造力学でした。でも、デザインとしての橋は子供の時から興味があったような気がします。

 橋の起源は倒木が偶然、川に架かったことからという説もありますが、世界史的には紀元前6世紀頃には既に橋を架けていたようです。

 しかし、橋桁が長いとその重さだけでもたわんでしまうものですが、たわみにくいことは長い橋を架けるときの条件のひとつです。

 その重さや橋桁にかかる力を分散する仕組みのひとつがアーチと呼ばれ、幾何学的には、アーチは円周の一部であり、下向きにかかる力を円周方向に変換するのでたわみにくいそうです。

 ところで、アーチ橋といっても多くの種類があり、河幅約750mの淀川に架かるふたつの橋もそのひとつです。

 手前に見える「十三専用橋」は下路式七連ランガー橋と呼ばれ、七つの連なるアーチが橋桁を抱え、かかる力を薄いアーチと厚い橋桁の双方で支える構造です。

 一方、奥に臨む「十三大橋」は下路式五連ローゼ橋と呼ばれ、五つの連なるアーチが橋桁を抱え、かかる力を同じ厚さ程度のアーチと橋桁の双方で支える構造です。

 ふたつの橋は共に、アーチが橋桁を吊るすように見える下路式ですが、それぞれにその役割は異なり、五つの車輪が淀川を渡るようになぞらえた「十三大橋」は車を運び、「十三専用橋」は人と人との通信を繋いでいます。

初稿 2013/12/07
校正 2021/02/15
写真 十三専用橋と十三大橋
撮影 2013/12/07(大阪・淀川)