Liner Notes

観たこと、聴いたこと、読んだことを忘れないように印象に残った光景を栞として綴ってみました

∫30「伊勢神宮」 三重, ---?.

2014-06-05 | Architecture
 奉るのは皇室の祖神・天照大神と穀物の女神を司る豊受大神(トヨウケビメ)。

 春秋戦国時代に大陸から逃れ、農耕をはじめとする技術や材料としての鉄をもたらした渡来人とその技術や材料を伝搬させた航海術に長けた海人。そして、群雄割拠する倭における様々な勢力や信仰を受け入れつつ幾多の国譲りを経て統一した大和朝廷という共同体。

 御神体が神奈備(かんなび)という自然から八咫鏡(やたのかがみ)という人工物に替わるのは、労働集約型の農耕基盤を確立した鉄を中心とする技術の賜物のような気がします。

 とはいえ、西暦690年よりおよそ1400年にわたる20年ごとに全ての社殿を造り替える式年遷宮の意義は共同体としての集団的無意識を継続的に再構築することなのかもしれません。

初稿 2014/06/05
校正 2021/01/23
写真 伊勢神宮(三重)

∫29「賀茂別雷神社(上賀茂神社)」 京都, 678.

2014-06-04 | Architecture
 古来より、日本には神奈備(かんなび)と呼ばれる聖域があるそうです。

 それは人智を越えるものが宿るとされる山や森や岩磐であり、ひょっとしたら、自然への畏怖の念が信仰に転化したのかもしれません。

 稲作を可能とする河に沿った低湿地を見下ろす標高約300m程の神奈備としての神山(こうやま)に降臨したとされる賀茂別雷命(カモワケイカヅチノミコト)。

 雷を別けるほどの力をもち、恵みの雨をもたらすとされる雷神を奉る祭祀の数々は、弥生期に渡来したとされる稲作を中心とする技術と集約型労働を可能とする統治プロセスの原形のような気がします。

初校 2014/06/04
校正 2021/01/24
写真 岩上※
撮影 2014/01/26(京都・上賀茂神社)
※「がんじょう」と呼ばれ、葵祭の折りには宮司はこの岩の上で神のご意志を勅使へ伝える神聖な場所であり、神奈備としての神山とともに古代祭祀の原点とも呼べる場所でもあるそうです。