Liner Notes

観たこと、聴いたこと、読んだことを忘れないように印象に残った光景を栞として綴ってみました

§65「猫だましい」 河合隼雄, 2000.

2017-02-19 | Book Reviews
 猫であって、猫にあらず。身近で愛くるしい親近感を持ちながらも、思った通りにならない存在を示唆しているような気がします。

 TV版『ドラえもん』は、のび太の願いを叶えてくれるはずの未来の道具が、いつも思いもよらない展開で、のび太の願いは裏切られてしまいます。言わば、自らの無意識に潜む「コンプレックス」が、自らのまわりに対する自らの劣等感として作用する「おはなし」のような気がします。

 一方で、映画版『ドラえもん』は、みんなの願いを叶えるために自らが勇気をもって挑み、思いもよらない助けによってみんなの願いを叶えてくれます。言わば、自らの無意識に潜む「コンプレックス」が、自らの理想像に対する自らの劣等感を克服するように作用する「おはなし」のような気がします。

 いづれにしても、猫は自らの「コンプレックス」をよい方向にも、そうでない方向にも起動させてしまう「トリックスター」のひとつのような気がします。

初稿 2017/02/19
校正 2020/11/23
写真 通勤路にて見かける猫
撮影 2017/02/18(滋賀・大津)

§64「おはなしの知恵」 河合隼雄, 2003.

2017-02-09 | Book Reviews
 やりがいを見出せるほどの自由な発想の源とは如何なるものか?自らの知識や経験に基づいて人や物の関係性を連想することだけでは充分じゃないことを示唆しているような気がします。

 昔ばなしや神話等に語り継がれる「おはなし」は、全てが必ずしも納得できるわけではありませんが、なぜかしら記憶や印象に残っていることがあります。

 そんな「おはなし」を、大人になって読み返してみると、一部は教訓として理解できるものの、その想定しづらい条件の特異性だったり、話の展開の多様性に惹かれるような気がします。

 そうかもしれない、そうあってほしいこと。そうあってほしいのに、そうはならないこと。そうあってほしくないのに、そうなってしまうこと。大人になればなるほど、結果には必ず原因が存在するという因果性に支配されてしまいそうになりがち。

 普遍的ではないとはいえ、時代や場所を問わず、多くの人の記憶や印象に残っているそんな「おはなし」には、やりがいを見出せるほどの自由な発想の源が潜んでいるのかもしれません。
   
初稿 2017/02/09
校正 2020/11/24
写真 無意識に印象が残るものとは
「踊り子」フェルナンド・ボテロ 作
撮影 2016/05/23(大阪・御堂筋彫刻ストリート)