Liner Notes

観たこと、聴いたこと、読んだことを忘れないように印象に残った光景を栞として綴ってみました

§106「ファーストレディ」 遠藤周作, 1988.

2020-08-26 | Book Reviews
 太平洋戦争末期、東京を襲った空襲によって偶然に出逢った男女四人の物語。

 戦後、慕い続けた辻への想いを告げることもできぬまま、政治の道を志す渋谷と結ばれた百合孑。そして、そんな彼女の想いを知りながら、抑留されたシベリアから帰国した辻と結ばれた愛孑。

 流れる時間のなかで、思いがけぬ出逢いは成長や救いをお互いにもたらすものですが、それを運命として意識し過ぎると、お互いにどことなく違和感を抱いてしまうような気がします。

 ひょっとしたら、時間は一様に流れるものではなく、自らが幸福感や充実感を抱いた時に、自らの時間が存在するのかもしれません。

 見上げた夜空に輝く星々のなかから織姫と彦星の物語をなぞらえるよりは、お互いが同じ場所に寄り添い、同じ夜空を見上げる時間を過ごす方が大切なような気がします。

初稿 2020/08/26
校正 2021/05/02
写真 上智大学・目白聖母キャンパス 
撮影 2020/08/21 (東京・下落合)


#54「時間と記憶」

2020-08-15 | Liner Notes
 それぞれの実家に順番に帰省してそれぞれにお墓参り。なにも意識することはなく時間は一様に流れるのが例年のお盆休みでした。

 もしかしたら時間は、止まることなく過去から未来へ連続的に進むはす“と思うからこそ、一瞬でもいいから孫の成長を親に見てほしいと思う気持ちと年老いた親の健康を心配する気持ちが強まるような気がします。

 コロナ禍によって実家への帰省を自粛した今年のお盆休み。それぞれが一様ではないそれぞれの時間を過ごさざるを得なかったからこそ、敢えて10年前の写真を記憶を頼りに物語にした写真集を届けてみました。

 ひょっとしたら、記憶は連続的な瞬間の積み重ねというよりは、お互いがお互いにふれあった出来事のワンシーンを記録した写真さえあれば、その時の懐かしさを再現したり、まだ見ぬ将来の物語を想像するきっかけを与えてくれるのかもしれません。

初稿 2020/08/15
校正 2022/01/15
写真 山陽新幹線記念公園
撮影 2020/08/15(兵庫・西宮)

♪44「A piece of summer 2020」

2020-08-01 | Season's Greeting
 再び、コロナ禍の緊急事態宣言が危ぶまれるなか、ようやく梅雨明けが宣言されました。

 今年の梅雨も、線状降水帯による記録的豪雨がもたらした水害の爪痕をいたるところに残しましたが、自然との関わり方を考えさせられます。

 堰は、せきとめた河川の水を利用するための土木構造物。ダムや水門と違って水位を調節する機能が無い堰は洗堰と呼ばれ、平時および有事においても、水は堰を超えて流れるので、水害を制御することは出来ないそうです。

 ひょっとしたら、水害の制御も然り、コロナ禍の制御も、その目的に応じた処方箋としての機能や役割を再認識することが必要なのかもしれません。

初稿 2020/08/01
校正 2022/01/14
写真 高麗川一号堰
撮影 2020/06/17(埼玉・坂戸)