Liner Notes

観たこと、聴いたこと、読んだことを忘れないように印象に残った光景を栞として綴ってみました

§26「コンプレックス」 河合隼雄, 1971.

2014-08-08 | Book Reviews
 「虫が好かない」と感じたとき、ひょっとしたら、心のどこかでコンプレックスが働きかけたのかも知れません。

 コンプレックスとは、光が網膜に投影された瞬間の感覚や映像そのものや言語化までには至らない喜怒哀楽の感情そのものを純粋経験として無意識の中に蓄積し、形成された心の動きのような気がします。でも、「魔がさした」と感じたときには、自我を脅かすものなのかもしれません。

 天球に舞う星をひとつ見つめてもひとつの星に過ぎませんが、天球に舞う星を星々として眺めてみると、その特徴や配置から連想される星座のように、言語化できていないものを言語化しようとするとき、関係性が見いだせない事象に関係性を見いだすことができると思います。

 もしかしたら、コンプレックスは解消すべきものではなく、自我に統合されて成長する大きな機会を与えてくれるような気がします。

初稿 2014/08/08
校正 2021/01/23
写真 カレル橋
撮影 2001/09/11 (チェコ・プラハ)

♪12「美しさを表すには」

2014-08-05 | Season's Greeting
 杜に射し込む木洩れ陽が織りなす光景に思わず美しいと感じて撮った写真。

 小林秀雄は「夏よ去れ」でこう記しています。

「あゝ 夏よ去れ 心明かすな 棲みつかぬ季節よ 失せ行け 切れぎれに 惑うわれかな」(p.86)

 五感によって認識した事象やその背後に、なんらかの秩序や構造めいたものを見つけたとしても、その美しさを表すには表現方法を超えた何かが必要なのかもしれません。

初稿 2014/08/05
校正 2021/08/09, 2022/09/11
出典 『Xへの手紙・私小説論』小林秀雄, 1962.
新潮文庫, 「夏よ去れ」pp.84-86, 1937.
写真 杜に射し込む木洩れ陽
撮影 2007/11/25(大阪・箕面)