Liner Notes

観たこと、聴いたこと、読んだことを忘れないように印象に残った光景を栞として綴ってみました

α19A「マリとキャシー」朝倉響子, 1989.

2023-01-28 | Exhibition Reviews
 バンダナを頭に巻いた「マリ」が両手をベルトにかけた瞬間に、ベンチにもたれて脚を組んだ「キャシー」といまにも言い争いを始めかねないような一触即発な印象。

 「キャシー」はギリシャ語で「純粋」を意味するそうで、決してぶれることのない、あるがままの〈わたし〉なのかもしれません。

 一方、「マリ」はフランス語で「主人」を意味するそうで、あるべき姿を追い求めようとするもう一つの〈わたし〉なのかもしれません※1

 でも、近づいてじっと観てみると、二人は言い争おうとしているのではなく、口を固く閉じて見つめあっているような気もします。

 ひょっとしたら、私を私たらしめているそれぞれの〈わたし〉なるものが、然るべき〈わたし〉として歩き出そうとする覚悟と別離を物語ろうとしているのかもしれません。

初稿 2023/01/28
校正 2024/01/05
写真「マリとキャシー」朝倉響子, 1989.
撮影 2023/01/22(千葉・佐倉)
注釈 ※1)α18A「マリとシェリー」朝倉響子, 1990.

α18A「マリとシェリー」朝倉響子, 1990.

2023-01-21 | Exhibition Reviews
 どちらかと言えば、向き合う二人が抱える何らかのわだかまりを解こうとしているような印象。

 「マリ」はフランス語で夫や主人を意味し、「シェリー」は性別を問わず愛おしい人を意味するそうです。

 ポケットに手を入れた「マリ」はどことなく苛立ちを覚えつつ、手をこまねいた「シェリー」はそれとなく、その苛立ちから抜け出させるように悟しているようにも感じます。

 ひょっとしたら、そんな二人の姿はあるべき自分を追い求めようとする〈わたし〉とありのままの〈わたし〉との対話なのかもしれません。

初稿 2023/01/21
校正 2024/01/05
写真「マリとシェリー」朝倉響子, 1990.
撮影 2022/12/11(東京・池袋)

#76「かけがえのない選手権」

2023-01-13 | Liner Notes
 全国高等学校学校サッカー選手権は、高校サッカー日本一を決める最後の夢の舞台だと思います。

 たとえ、力が及ばず試合に出場できなくとも、どのような形であろうとも、その夢の舞台に立ちたいという思いで入部した長男。でも、その夢は高校三年間ではかなえられませんでした。※

 現役最後の昨年は、国立競技場への切符を僅差で逃しましたが、今年は大学一年生になった長男がOBとしての応援ではあるにせよ、その夢の舞台に立つことができました。

 約五万人の観客が応援するなかで、遠目から長男を覗くと、本人はどう感じているのかは分からないまでも、家族みんなでその夢に立ち会えたかと思えばこそ、「かけがえのない選手権」という物語なのかもしれません。

※)#68「もうひとつの選手権」

初稿 2023/01/13
写真 国立競技場(オリンピックスタジアム)
撮影 2023/01/09(東京・千駄ヶ谷)

α17A「フィオーナとアリアン」 朝倉響子, 1992.

2023-01-06 | Exhibition Reviews
 現地では銘板の向きが逆でしたので、おそらく向かって左がアリアン、右がフィオーナだと思います。

 アリアンはギリシャ神話に登場する王女の名を意味し、フィオーナは人名というよりも明るく青白いイメージも意味するそうなので、ありのままの姿を示唆しているような気がします。

 しかしながら、彼女たちはそれぞれの存在に気づいてはいるものの、お互いの瞳をあわせて話すまでにはいたっていません。

 ひょっとしたら、幼き少女※1の姿から目指すべき自分の姿へと成長しようとする過程で、ありのままの自分なる姿に出逢う物語の序章なのかもしれません。

初稿 2023/01/06
写真「フィオーナとアリアン」 朝倉響子, 1992.
撮影 2023/12/11(東京・教育の森公園)
注釈 ※1)α16「ジル」 朝倉響子, 1988.

♪57「稜線の遥かその先に」

2023-01-01 | Season's Greeting
 昨年は、これまでを振り返りつつ、子どもたちや家族の将来について考える機会が多かったような気がします。
 
 思いどおりにならぬものもあれば、思いもよらぬ巡り合わせが、結果として迷うことのない選択や判断を導くことを感じた一年でもありました。 

 あらゆる景色は観る人によって様々かもしれませんが、稜線の遥かその先に観える光景は自らにとって二つとなく、今年も充実したと思える一年でありますように。

初稿 2023/01/01
写真 稜線の遥かその先に
撮影 2022/11/19(東京・高尾山)