「男子はすべからく巌頭に悍馬を立てるべし」
屹立した岩の上にて気性の荒い馬に跨がったその一瞬に自らを賭けよ。
江藤新平が時代の寵児として登場するのは、佐賀藩主・鍋島閑叟への死を賭けた嘆願書から。脱藩までしたその嘆願は、京の長州藩邸に構える桂小五郎にその志を説き、京に潜伏し政情を見極めればこそ、佐賀の工業力を以てしていまこそが起つべき時。
京における藩外交の全権に抜擢され、薩長に続く雄藩として認められる契機は、戊辰戦争の最高司令官として大村益次郎を擁立し、彼の比類なき合理的な戦略観と佐賀藩が持つアームストロング砲による戦術的優位性の結実によって混迷した幕末を終焉させました。
一方で、フランスを範とした司法制度の確立に向けて原典を翻訳・解釈させる専門家集団を組織化し短期間で法治国家の礎を築くだけでなく、民を護るべく官の癒着を徹底的なまで弾劾する姿勢はまさに近代国家の幕開けをもたらしました。
幕末の志士とは一線を画し、群れることなく自らの志と持てる力を研ぎ澄まし貫いた彼にとっては、日本の将来を見通すことはできても、他ならぬ自らを見透すことはできなかったのかもしれません。
「歳月人を待たず」とは、時は留まることを知らず、時を逃すことなく勉学に励み、時に及びてはまさにその役割を果たすべし。とはいえ、自らが果たすべき役割と時代が求める役割とは必ずしも一致するとは限らないような気がします。
初稿 2015/11/28
校正 2020/12/19
屹立した岩の上にて気性の荒い馬に跨がったその一瞬に自らを賭けよ。
江藤新平が時代の寵児として登場するのは、佐賀藩主・鍋島閑叟への死を賭けた嘆願書から。脱藩までしたその嘆願は、京の長州藩邸に構える桂小五郎にその志を説き、京に潜伏し政情を見極めればこそ、佐賀の工業力を以てしていまこそが起つべき時。
京における藩外交の全権に抜擢され、薩長に続く雄藩として認められる契機は、戊辰戦争の最高司令官として大村益次郎を擁立し、彼の比類なき合理的な戦略観と佐賀藩が持つアームストロング砲による戦術的優位性の結実によって混迷した幕末を終焉させました。
一方で、フランスを範とした司法制度の確立に向けて原典を翻訳・解釈させる専門家集団を組織化し短期間で法治国家の礎を築くだけでなく、民を護るべく官の癒着を徹底的なまで弾劾する姿勢はまさに近代国家の幕開けをもたらしました。
幕末の志士とは一線を画し、群れることなく自らの志と持てる力を研ぎ澄まし貫いた彼にとっては、日本の将来を見通すことはできても、他ならぬ自らを見透すことはできなかったのかもしれません。
「歳月人を待たず」とは、時は留まることを知らず、時を逃すことなく勉学に励み、時に及びてはまさにその役割を果たすべし。とはいえ、自らが果たすべき役割と時代が求める役割とは必ずしも一致するとは限らないような気がします。
初稿 2015/11/28
校正 2020/12/19