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(今夜の金沢・梅の橋)
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お知り合いが朗読会のメンバーでチケットをいただいていました。
かつては北陸の玄関口として栄えた金沢・橋場町に
小さな朗読小屋があり、その中での今回の朗読会は
「秋・朗読で彩る郷土文学」。9月中のイベントだったのですが
ギリギリやっと今日になって出かけてきました。
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メニューは日替わりで石川ゆかりの作家、
五木寛之、井上靖、井上雪、曾野綾子、加能作次郎、谷崎潤一郎、
永瀬清子、中野重治、中原中也、濱口國雄、水芦光子、室生犀星、
の作品から選ばれています。
今日、朗読されたのは民話「ちーふれ、ちふれ」・「怪物なまず」、
中野重治詩集数編、井上雪の『郭の女』より「梅の橋」、
井上靖の「驟雨」 でした。
私自身、郷土文学にはあまり詳しくないので
郷土文学に親しむいい機会となりました。
浅野川・梅の橋は私の家からすぐ近く。
この辺りはかつては、遊郭やサーカス小屋や飲食店が並ぶ
北陸で最も栄えた場所です。「梅の橋」の話の中では
その当時のにぎやかな町の様子が再現されていました。
暗い空間に物語の声だけが響き渡り、
その語りの中に吸い込まれていく感覚は独特です。
井上靖の「驟雨」では彼の自伝とも思えるような
思春期を迎えた少年の繊細な心の動きが描かれていました。
秋の夜長のほんのひととき、郷土文学の彩りの中に
入り込んだ時間でした。帰り道、梅の橋のたもとに立ち止まると
浅野川の流れが優しくすゞやかに通り過ぎていくのでした。
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