日曜日の日直の時に救急隊から、急に左下肢痛が出現したという89歳女性の搬入依頼があった。
転倒による大腿骨頸部骨折を考えるが、転倒したわけではないという。急性動脈閉塞かと思って確認してもらったが、左側肺動脈の触知は問題なく、左下肢の冷感はないそうだ。来てもらって直接診るしかなかった。
搬入された患者さんは、症状を訊くとそれなりに答えてくれた。一人暮らしで家族が訪問して、気づいたいう経緯なので、正確に転倒していないかどうかはわからない。
ご本人は左股関節から膝上の大腿外側が痛いと表現した。両膝は変形性関節症で屈曲していて、ふだんからある程度痛いそうだが、悪化はしていない。
その日玄関の戸を開けて網戸だけにしていたが、戸を閉めて部屋に戻ろうとした時から痛みが生じたそうだ。転倒はしていなくても、玄関の段差でも骨にひびが入ったりするだろうか。
しつこく診察を繰り返したが、大腿骨頸部骨折ではないようだ。まず通常のX線で確認したが、骨折は指摘できない。整形外科医がみれば指摘できることもあるので、まずCT骨条件で確認することにした。
CT骨条件でも骨盤・大腿骨頸部の骨折はしてきできないかった。その代わりに、左閉鎖孔ヘルニアが描出された。閉鎖孔ヘルニアだと大腿内側の痛みではないのか。確認したが、大腿内側は痛くないという。
外科日直は当院の外科常勤医だった。エコーガイドで整復しようとしたが、できなかった。手術になるので、地域の基幹病院外科に転倒することになった。
外科医からは閉鎖孔ヘルニアに痛みだろうと言われた。まあそうなのだろう。教科書的には、大腿内側が痛いと言ってほしかった。