高血圧症で通院している88歳女性が、めまいを訴えて耳鼻咽喉科外来(大学病院からのバイト)を受診した。回転性めまいではなく、ふらつきだった。
耳鼻咽喉科的には問題がなかったらしく、また症状が起き上がるとめまいがするという起立性低血圧様の訴えだったので、内科に紹介された。
ただ起き上がるとふらつくというが、血圧の変動はさほどなかった。横になっていても向きを変えるとめまいがするという。起き上がって、上を向いたり下を向くとなるというのは起立性らしいが?。
自宅で息子と二人暮らしで家事をしなければならない。床の拭き掃除をしている時は調子がいいというのが変だった。貧血もなく、不整脈もない。食事摂取は問題なかった(実際は少し低下)。
当初は降圧薬を減薬して経過をみていたが、1週間経たないうちに、また予約外で受診して入院させてほしいという。話をよく聞くと、不眠があった。寝つきが悪く、ちょっと寝ても3時間くらいで早朝に目が覚めてしまう。不眠はめまいが始まったという時からあった。
朝は調子が悪くて、夕方になると少し良くなるともいうが、こちらの日内変動を意識した訊き方が誘導したかもしれない。もともとそれほど明るい方ではないが、年齢を考慮すれば認知症もなく、日常生活を過ごしていた。
なんだかうつの症状のようだ。ジェイゾロフト(セルトラリン)25mg/日を開始した。睡眠薬は飲みたくないと言っていたので、不眠時は看護師さんからもらえるので使用してよいと伝えた。
68歳女性がジェイゾロフ2週間で症状軽快して退院するのと、ほぼ入れ違いになる。2週間経過をみることにした。
この患者さんは、10年以上前に当方がこの病院に来てから、他の先生から回されてきて診るようになった。症状はなかったが、定期検査で小球性貧血と判明した。消化管精査でS状結腸癌と上行結腸癌が見つかった。手術して治癒している(StageⅡ)。