なんでも内科診療日誌

とりあえず何でも診ている内科の診療記録

ステロイドで血糖上昇

2020年09月29日 | Weblog

 皮膚科医から88歳男性の糖尿病治療で相談された。皮膚に多発性の結節が出現して、4月に生検して皮膚T細胞性リンパ腫と診断されていた。

 5月に大学病院皮膚科に紹介していた。血液内科に相談したが、年齢と抗癌剤治療の副作用を考慮して、本格的な治療は推奨しないということになった。家族も希望しなかった。

 明らかな内臓浸潤は認めず、皮膚の掻痒感はあるが、全身状態は今のところそう悪くない。大学病院からいったん当院皮膚科に転院になったが、本人の希望もあり、早期に退院にしたいそうだ。ただし、血糖コントロールの問題があった。

 

 糖尿病・高血圧症で近くの内科医院に通院していた。糖尿病の処方は、SU薬(グリメピリド1mg/日)・DPP4阻害薬(ジャヌビア5mg/日)・メトグルコ750mg/日・α-GI(ボグリボース0.6mg/日)で標準的なものだった。5月のHbA1cは6.7%で良好だった。(グリメピリドを0.5m/日に減量でもいいくらい)

 7月から緩和的治療として、プレドニン20mg/日が開始された。血糖はみごとに上昇して、9月11日に当院に転院してきた時は、血糖694mg/dl・HbA1c12.2%になっていた。

 診療情報提供書の記載は、「血糖上昇傾向にあり、かかりつけの内科医院でコントロールをお願いしていますが、今後はプレドニン減量の調整が必要になりそうです」という、のんびりしたものだった。

 皮膚科医はとりあえず内服薬はそのままにして、ヒューマリンRのスケール対応としたが、血糖高値が続くので、内科に声をかけたという経緯だった。

 

 プレドニン投与が緩和的治療として効果を発揮したようには見えない。皮膚科医もプレドニンを漸減して、中止も考えているという。(2か月の投与なので、まだ中止できるだろう)

 連休中だったので、ヒューマリンRのスケールはそのままにして、持効型インスリンを少量から追加した。トレシーバ4単位から6単位にして、ヒューマリンR皮下注での補正は1日1回くらいになってきた。

 超速効型インスリン1日3回も追加して、インスリン強化療法にする予定だったが、インスリン漸減もあるので、そのまま持効型少量+スケール補正でいけば、スケール補正も不要になりそうだ。

 患者さん本人は認知症はないが、視力の問題でインスリン量の目盛り合わせは難しく、注射針の装着も難しい。同居の妻は認知症でインスリン注射を頼めない。別居の息子が毎日手伝いに訪問するので、インスリン1日1回打ちならできるらしい。

 皮膚科医がプレドニンが10mg/日からさらに5mg/日に減量してきたので、持効型インスリンも中止できるかもしれない。結果的には、大学病院皮膚科のプレドニン処方は血糖を急激に上昇させて、糖尿病を悪化させただけだった。

 

 糖尿病の患者さんだと、癌の緩和ケアとしてのステロイド投与は、やってみないとわからないが裏目に出ることもある。内科だと、頻回に血糖をチェックしながら診ていくので、ここまで悪化することはまずないが。

 別の病院の皮膚科で、帯状疱疹になった糖尿病の患者さんにプレドニンを投与して、糖尿病性ケトアシドーシスになって当院に入院したこともあった。

 

 

 

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