なんでも内科診療日誌

とりあえず何でも診ている内科の診療記録

アルコール性ケトアシドーシスだった?

2016年04月09日 | Weblog

 昨夜意識レベル低下・共同偏視の70歳男性の男性が救急搬入された。当直は外部から応援の先生だった。頭部CTで頭蓋内出血はなかった。血糖は280程度だったが、血液ガスでpH7.2とアシドーシスで血中ケトン体陽性だった。糖尿病性ケトアシドーシスを疑って、生理食塩水の点滴を開始した。大量輸液になるので、尿カテーテルを留置しようとしたが、挿入できなかったそうだ。いろいろ工夫してみたが、まったく入らない。点滴で自然に排尿があればそれでいいような気がするが、最悪膀胱穿刺かと思ったそうだ(当院は泌尿器科常勤医なし)。糖尿病性ケトアシドーシスとして違和感があったのと、血清アミラーゼが上昇して急性膵炎が疑われることなどもあり、地域の基幹病院に連絡して搬送したという。

 今日日直で病院にきて、申し送りを聞いた。かなりの大酒家で焼酎を2L飲むそうですと言われたが、1日でなのか数日でなのかわからない。昨日も飲酒していた。どうもアルコール性ケトアシドーシスのようだ。当直だった先生に、アルコール性ではと言うと、一瞬頭をかすめたが、良く思い出せなかったそうだ。林寛之先生のStep Beyond Residentにありますねと伝えると、読んでいたらしい。Wernicke脳症疑いとしてビタミンB1は十分に投与されていた。アルコール性ケトアシドーシスは経験されてないそうだ。こちらも明らかなものは1例しか経験がない。

 向こうの病院もよく引き受けてくれましたねというと、救急隊は当初意識障害・共同偏視なので脳血管障害を疑って最初に基幹病院(脳外科2名・神経内科4名)に受け入れ要請をしていたそうだ。そういう事情もあってとってくれたのかもしれない。林先生の本には、治療の基本は十分な補液+糖の補充+ビタミンB1補充とある。意識レベルも点滴開始で改善していたというので、短期間でよくなるのかもしれない。

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心嚢液貯留を治してもらう

2016年04月08日 | Weblog

 地域医療連携室の職員が、心臓血管センターからの返事を持ってきた。すっかり忘れていたが、2月に心嚢液が貯留して心不全症状を呈した84歳女性を救急搬送していた(2月24日に記載)。3月末に退院したとある。退院後はかかりつけの内科クリニックに通院するという。

 心嚢液が貯留して、救急搬入された翌日に増加していた。心原性酵素の上昇がないことから、病名は急性心膜炎疑いとした。転院後に心嚢穿刺を行って、ドレーンを留置したそうだ。悪性細胞も結核菌も検出されず、原因は不明だった。心嚢液貯留は治まって無事に抜去できた。ところがその後に肝機能障害が進行して、無石胆嚢炎と診断された。PTGBDの処置が行われて軽快治癒している。急性心膜炎・心タンポナーデ~うっ血性心不全~うっ血肝~胆嚢炎という流れでとらえられていた。ウイルス性心膜炎だったのだろうか。よくわからないが、とにかく送ってよかった。いつも危ないところを助けてくれる病院で、本当にありがたい。

 60歳女性が外来を受診した。糖尿病で外来通院していたが、予約日に来院しなかった。まだ残薬があるので、そのうち1週遅れくらいで受診すると思っていた。2か月前のHbA1cが6.5%で、今日は9.4%と上昇していた。子供さんが遺伝性の神経疾患から悪性腫瘍が発症して、緩和ケアを受けているとは聞いていた。その子供さんが亡くなって、好きだった食事(甘い物)をお供えして、それを食べていたそうだ。また野菜を先に食べるなど食事に気を付けていたが、それも一切やっていない。ジャヌビア50mg+メトホルミン500mgの処方だった、食事を極力以前のようにもどすことと、追加処方の希望があったので(追加しないで経過をみるつもりだったが)グリミクロン10mgを追加して、1か月後に再受診とした。いつもは濃いキャラクターの方だが、さすがに元気がなかった。

 昨日内視鏡室の看護師さんから、個人的なことでと相談を受けた。遠方の施設入所中の85歳の母親が、先月から腰痛・臀部痛を訴えているという。診療所の整形外科で診てもらって、陳旧性の腰椎圧迫骨折はあるものの、新規の病変はないと言われそうだ。処方されたリリカでかえってぼんやりしてしまって逆効果だった。自分の住居近くの施設に移らせたいが、痛みもあり入院でお願いできないかということだった。内科病棟は空いているので、今日来てもらった。背中が「くの字」に曲がって、ちんまりと座っている。ポータブルトイレへの移乗でも痛いという。X線検査をすると、確かに腰椎圧迫骨折があり、かなりの骨粗しょう症(スカスカ)だった。1~2か月の入院で処方の調整とリハビリを行って、施設入所を目指す。

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会議で終わった日

2016年04月07日 | Weblog

 地域包括ケア病棟をつくる必要があり、10月開始に向けての準備を大急ぎですることになった。看護必要度(重症度)25%を満たすためには、病状が落ち着いている患者さんを地域包括ケア病棟に移して、一般病棟の重症度の高い患者さんの比率を上げなければならない。また手術など集中治療を要する入院患者は入院費が6000点になるが、安定すると2000~2500点になる。地域包括ケア病棟では一律に3000点取れるので、収益の面でも有利になるそうだ。地域の基幹病院ですら、地域包括ケア病棟をつくらないと経営が成り立たない見込みだという。

 今日は外来がなくて余裕があるはずだったが、診療としては94歳男性の内視鏡的胃瘻造設(PEG)を行ったくらいで終わってしまった。正副院長会議(一番下っ端の副院長)、医局会と続いて、会議だけしていた気がする。普段は30分くらいで終わる医局会も、今は電子カルテ導入や病棟再編の問題があり、1時間半を越えてしまった。輸血拒否の患者さんの受け入れについても話も出ていた。基本的には病院として受け入れないことを明記するという。

 今日の午後は救急当番だったが、忘れていた。幸いに救急要請がなくて、得した気分。5月にあるプライマリケア学会の春季セミナーは、希望のコースがとれたので楽しみだ。

 

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造影剤で腸閉塞? 

2016年04月06日 | Weblog

 一昨日の夕方過ぎに、血液透析中の57歳男性が急に嘔吐して血圧が低下した。その日当直だった内科の若い先生が呼ばれて診察した。腹部膨満があり、手術の既往はないが、腸閉塞が疑われた。腹部CTで確認すると、小腸内にも造影剤は多少あるが、上行結腸から肛門側にかけての造影剤が目立ち、S状結腸から直腸にかけては内腔を閉塞するほどだった。これが原因なのか。

 

 この患者さんは、5年前のCTと3年前のCTにも、同様の造影剤が認められた。当院では、透析患者さんに年に1回くらい検診としてCTが行われていた。普段は腹部症状がなかったのだろうか。昨年10月にもCTが行われていて、その時にはむしろ小腸内の造影剤が目立つが、大腸内にはそれほどなく、S状結腸から直腸にかけてはほとんどなかった。小腸から次第に肛門側に下がってきたのか。数年の経過で誰もCTで見える腸管内の造影剤を気にしていなかった?

 肺炎が治癒した後に、嚥下訓練をすると発熱した94歳男性にどういう対応をするか迷っていた。認知症相当だが、案外元気だった。一時下肢(下腿末梢側から足)の血流が悪かったが、2日くらいで改善した。最近は80歳代後半の患者さんには胃瘻造設は勧めていなかったが、この方にはやってみることにした。車いすに移乗しての散歩ができそうだったから。家族で相談してもらって、息子夫婦が同意された。

 「臨床消化器内科」という雑誌がある。2004年9月号は「イレウス診療のpitfallーいつ外科に送るか」の特集だった。消化器内科とはいえ、内科の雑誌でイレウスの特集をするのは珍しいので購入していた。当然だが、執筆者は全員外科医だった。その後内科系雑誌でイレウスの特集をしたのは診たことがないから、これはレアものだ。その中に非閉塞性腸管虚血症non-occlusive mesenteric ischemia(NOMI)の項目がある。高齢者でNOMIと判断されるの症例があって、結局亡くなられた。

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かぜの話を書くことにした

2016年04月05日 | Weblog

 病院で年に4回出している患者さん向けの小冊子がある。その中に病気について医師が解説するページがあり、次回号に書くようにと依頼が来た。市で出している広報誌の「一口健康メモ」に高血圧のことを書いた。地域医療連携室長の副院長(外科)からは、また高血圧でもいいからと言われた(同じことでいいからとにかく書いて、という意味)。7月に出るので風邪のシーズンでもないが、風邪について書くことにした。

 1200字なので大した内容は書けないが、岸田直樹先生や山本舜悟先生の風邪の本を基に、さらに市民の方にわかりやすく書くことにした。月刊レジデント2016年1月号「がぜくらい診られますよって本当ですか?」岸田直樹先生編集も買っていたので、読み始めた。

 その中の、「かぜに使う西洋薬の種類とそのエビデンス」は、上田剛士先生らが書いている。何と引用文献が2ページもある、らしい内容だった。まず、かぜに対する抗菌薬投与を戒めている。コラムに結核に効く抗菌薬としてフルオロキノロンが知られているが、肺炎の治療に使用されるアンピシリン/スルバクタムなどの抗菌薬も結核菌に効果があるそうだ。アンピシリン/スルバクタムで改善したことが結核の否定にならないというのは驚いた。

 解熱鎮痛薬として、アセトアミノフェンは効果が認められているが、過量により急性肝障害を来たす危険がある。アセトアミノフェンは500mg錠もあり、注意を要する。抗ヒスタミン薬は有用性は認められず、むしろふらつき・転倒が危惧される。総合感冒薬は含有量が少なく、中に含まれる抗ヒスタミン薬は高齢者に好ましくない。鎮咳薬・去痰薬・トラネキサム酸もエビデンスはない。

 薬剤がなくても軽快することを患者に伝え、安心させることが最も重要とある。この考え方をもとに、プラシーボ効果を期待して妥協した処方を行うのがいいかもしれない。

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インフルエンザ+肺炎球菌肺炎

2016年04月04日 | Weblog

 内科新患を、発熱・咳・食欲不振で85歳女性が受診した。インフルエンザ迅速試験でB型陽性と判明した。胸部X線で主に右肺に浸潤影が散在して、肺炎を併発していた。尿中肺炎球菌抗原が陽性で、肺炎球菌肺炎だった。今月から来た内科の先生にコンピュータ入力を覚えてもらいながら、一緒に診ることにした。治療はラピアクタ点滴静注とセフトリアキソン点滴静注で開始した。点滴500ml2本も入れる。喀痰培養も提出した。

 内科に新しい先生はもともとは外科医で勤務医をしていたが、父親の医院を継承した。ところが多額の借金があり、またスタッフも8名かかえていて経営が成り立たないとすぐに判明したそうだ。なんとか処理をしてその後は内科的な仕事をしながら職を探していたらしい。当院の外科医と同門同期で、当院の内科系不足を補充してほしいと依頼して来てもらった。消化器系は得意だと思うが、循環器呼吸器はいっしょに勉強していく。

 県立がんセンター緩和ケア科から59歳女性が亡くなったという報告書が来ていた。経過が丁寧に書かれていた。そういえばそんな人がいたと思い出した。一昨年の10月に内科医院からの紹介で当院内科を受診した。頸部リンパ節が複数腫脹して、胸部X線・造影CTでは両側肺門リンパ節・縦隔リンパ節が腫脹して、脾腫もあった。当院外科で生検しているうちに急変する可能性を危惧して、悪性リンパ腫疑いとして、そのままがんセンター血液内科へ紹介した。頭頸部外科で頸部リンパ節生検を行って、びまん性大細胞型B細胞リンパ腫と診断された。その後、血液内科でR-CHOP療法その他の治療を受けて、緩和ケア科で治療を受けていたらしい。私が外来で診たのは紹介で受診した日の2時間くらいだろうか。

 3月29日に循環器科に入院した64歳男性は、入院後に大量の排尿があり、心不全症状は改善した。大学病院循環器科の先生と相談していたが、そのまま当院で治療を継続している。白血球数は正常域でCRPは1.0前後で推移している(ウイルス感染だとこんなもの?)。受診時のCK-MBは正常域。DCMということになるが、それ自体はごみ箱診断なので、その原因は何かとなるそうだ。発症が急性~亜急性となると、心筋炎からの変化なのか。大学病院での心筋生検などの精査を勧めるという。

 

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「救命センター カルテの向こう側」

2016年04月03日 | Weblog

 土日は都立墨東病院救命救急センター・浜辺祐一先生の「救命センター カルテの向こう側」集英社を読んだ。プロローグには、阪神淡路大震災のあった20年前から勤務しているとある。「こちら救命センター」から5冊目の著書になり、こちらもずっと愛読してきた。

 「孤独死」 自宅(アパート)で倒れているところを発見された60歳代後半の男性。昏睡・下顎呼吸・徐脈・血圧測定不可から治療開始。広範な脳梗塞と判明。クラッシュ症候群からの高カリウム血症で人工透析、下腿のコンパートメント症候群で減張切開。人工呼吸器からは離脱でしる見込みだが、意識障害は継続。若い先生は救命救急センターとしての治療を精いっぱい行ったが、部長(浜辺先生)は果たして患者さんはこんな治療を希望しているのかと思う。

 「刺創」 心窩部と前頸部に刺創のある70歳代男性。心窩部の傷は心臓に達して、心タンポナーデを呈している。手術により救命したが、意識が戻ると、妻を殺したと証言。寝たきり状態の妻の介護に疲れて、無理心中を図った。集中治療室から出た時から、警察官が張り付き、退院後はそのまま逮捕されて警察署へ連行された。助けたことは本人にとって良かったのかどうか。

「リピ-ター」 警察から自宅で死亡した60歳代男性について問い合わせが来た。過去に急性心不全で繰り返し救急入されるが、少し良くなると点滴に引き抜き、血まみれの大立ち回りを演じて勝手に退院してしまっていた(治療費の支払いもしてにあらしい)。半年墨東病院に搬入されていないことから、他の救命救急センターに直近の搬入(と搬入後の騒ぎ)があるはずと回答する。

「同意書」 飲酒して自転車で自爆事故の40歳代半ばの男性。フリ-エアーがあり、腸管穿孔による急性腹膜炎と判明。遅れて病院に来た父親は手術同意書へのサインを拒否する。その息子は仕事につかず、酒浸りで、置いた両親に家庭内暴力を働いていた。

 など、いつもながら、救命救急センターでの治療で九死に一生を得て良かった良かったとならない話?が満載で興味深かった。

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呼ばれずに済みました

2016年04月01日 | Weblog

 4月になって内科に新しい先生が赴任した。もともとは外科医で、当院の外科医の同期だそうだ。父親の医院を継いだが、経済的な問題(父親の)で廃院にしたという。内科外来的なことはしてきたが、内科の入院は未経験になる。内科外来にあふれている患者さんのうち、高血圧症のみの患者さんから診てもらうことにした。まあゆっくりやっていきましょう。

 昨日は内科の当番で、当直医が若い整形外科医なので入院の連絡がくると思っていたが、案外来なかった。画面で確認すると、ちょっと遠い地域から(救急車で30~40分)心肺停止の69歳男性が救急搬入されていた。点滴・アドレナリン注や採血もしてなかったので、すでに体温が低下していたのだろう。AIとして頭部CTと胸腹部CTが施行されて、大動脈解離による心タンポナーデだった。

 内科新患に大学病院消化器内科から新しい先生が来ていた。前の先生は大学院を卒業して、市中病院に赴任になったはずだ。午前中に呼吸困難で96歳男性が救急搬入されていた。肺炎かと思ったが、心不全で救急当番の外科医から循環器科に依頼されていた。少し前に急性心筋梗塞(前壁中隔梗塞)になって、その後にうっ血性心不全に陥ったものと判断されたそうだ。胸部CTで見ると肺気腫もありそうだ。心電図は新規の左脚ブロックだった。

 入院では日曜日に、自宅で倒れているところを訪ね息子が発見して救急搬入となった肺炎の89歳男性は、入院後に肺浸潤影が広がって酸素化も悪くなった。高熱も続いて、なかなか厳しいなあと思いながら数日みていたが、何とか解熱して回復に向かいそうだ。土日は休みなので、福島県会津若松に行く予定だ。

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