病院で年に4回出している患者さん向けの小冊子がある。その中に病気について医師が解説するページがあり、次回号に書くようにと依頼が来た。市で出している広報誌の「一口健康メモ」に高血圧のことを書いた。地域医療連携室長の副院長(外科)からは、また高血圧でもいいからと言われた(同じことでいいからとにかく書いて、という意味)。7月に出るので風邪のシーズンでもないが、風邪について書くことにした。
1200字なので大した内容は書けないが、岸田直樹先生や山本舜悟先生の風邪の本を基に、さらに市民の方にわかりやすく書くことにした。月刊レジデント2016年1月号「がぜくらい診られますよって本当ですか?」岸田直樹先生編集も買っていたので、読み始めた。
その中の、「かぜに使う西洋薬の種類とそのエビデンス」は、上田剛士先生らが書いている。何と引用文献が2ページもある、らしい内容だった。まず、かぜに対する抗菌薬投与を戒めている。コラムに結核に効く抗菌薬としてフルオロキノロンが知られているが、肺炎の治療に使用されるアンピシリン/スルバクタムなどの抗菌薬も結核菌に効果があるそうだ。アンピシリン/スルバクタムで改善したことが結核の否定にならないというのは驚いた。
解熱鎮痛薬として、アセトアミノフェンは効果が認められているが、過量により急性肝障害を来たす危険がある。アセトアミノフェンは500mg錠もあり、注意を要する。抗ヒスタミン薬は有用性は認められず、むしろふらつき・転倒が危惧される。総合感冒薬は含有量が少なく、中に含まれる抗ヒスタミン薬は高齢者に好ましくない。鎮咳薬・去痰薬・トラネキサム酸もエビデンスはない。
薬剤がなくても軽快することを患者に伝え、安心させることが最も重要とある。この考え方をもとに、プラシーボ効果を期待して妥協した処方を行うのがいいかもしれない。