なんでも内科診療日誌

とりあえず何でも診ている内科の診療記録

消化器病学会

2016年04月22日 | Weblog

 21日から消化器病学会(京王プラザホテル)。HCVのInterferon-free therapyについてシンポジウムやランチョンセミナーで繰り返し聴いて、馴染もうと思っていた。ちょうど「慢性肝炎・肝硬変の診療ガイド2016」が学会場の医学書売り場にあったので購入した。講演を聴くと、簡単な記載しかない診療ガイドには載っていないことがわかる。抗ウイルス療法を考慮する患者さんは、肝臓専門医のいる地域の基幹病院消化器科へ紹介するので、直接処方することはない。

 C型慢性肝炎の70歳台半ばの男性は、数年前の腹部エコーで肝細胞癌と判明した。高齢だが、市の中央公民館館長を勤めていた知的な方で、できるだけの治療を受けてもらいたいので大学病院消化器内科へ紹介した(部位的に治療が難しかった)。数年経過して大学病院で診ていた肝臓専門医が基幹病院に赴任してきたので、そちらに通院することになった。昨年発売されたばかりのソホスブビル+レジパスビル配合剤の治療を受けて、ウイルスが排除された(SVR)。HCCはまだある。

 ダグラタスビル+アスナプレビル併用療法は、ウイルスの耐性変異(D168・Y93・L31)がなく、シメプレビルの既治療歴がなければ、約90%のSVRを達成する。排除不成功はviral breakthroughが起きるか、薬剤の副作用による中止例。viral breakthroughはダイレクトシークエンス法で検出できなかった耐性変異が起きたもので、その変異はディープシークエンス法では検出できる。

 Interferon-free therapyはgenotype1慢性肝炎・代償性肝硬変で認可されている。高齢者や肝細胞癌治療例でも治療できる。代償性肝硬変のうち適応があるのはChild-Pugh分類のgradeAのみでgradeBまたはCは禁忌。非代償性肝硬変には投与できない。治療によってChildスコアのうち、血清アルブミンは改善するが、総ビリルビンやPTは改善しない。

 ソホスブビル+レジパスビル配合剤はviral breakthroughや薬剤の副作用による中止がなく(少なく)、SVR率はさらによい。ただし、ソホスブビルは腎排泄のため重度の腎機能障害(eGFR<30mL)では使用できず、併用禁忌薬が多い。さらに新しいgenotype1に対するオムビタスビル+パリタプレビル+リトナビル配合剤、genotype2に対するソホスブビル+リバビリン併用療法も良好なSVRを達成できる。

 ちなみに、原発性胆汁性肝硬変primary biliary cirrhosisは肝硬変に進展する症例がごく少数となり、病名は原発性胆汁性胆管炎primary biliary cholangitisに変更された。略号はやはりPBCなので混乱はないということだった(確かに)。

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