なんでも内科診療日誌

とりあえず何でも診ている内科の診療記録

Restless X syndrome

2022年11月10日 | Weblog

 毎年楽しみにしているCareNeTVの千葉大GMカンファンスの配信が始まった。第1回はRestless legs syndromeは下肢以外でも起きうるというものだった。

 

CareNeTV 千葉大GMカンファランス2022 

第1回 10年前から左下腹部痛が続く63歳男性

 10年前から夜間のみの左下腹部痛が続き、他院で上部・下部内視鏡検査、CT検査を行ったが、異常を認めなかった。下肢の症状ではないが、Restless legs syndromeの亜型として治療したところ、症状が改善消失した。

言語化困難な痛みは、錐体外路症状を鑑別すべきであり、本症例は夜間のみの症状で、運動や圧迫による改善を認めることから、Restless legs syndromeの亜型を疑った。
・プラミペキソール0.125mg/日を開始したところ、48時間以内に圧迫感と痛みは完全に消失。

診断
 Restless Abdominal Syndrome(RLS variant)

 

RLSの診断基準
1.通常、脚の不快な感覚を伴うか、または脚の不快な感覚によって引き起こされると感じられる、脚を動かしたい衝動がある。
2.症状は横になったり座ったりするといった安静時または不活動時に始まるか、悪化する。
3.症状は歩行やストレッチなどの運動によって、少なくともその活動が続いている間は、部分的または完全に緩和される。
4.安静時または非活動時の症状は、日中よりも夕方または夜間にのみ起こる、または悪化する。
5.上記の特徴の発生は、他の医学的または行動学的状態(例えば、筋肉痛、静脈うっ滞、下肢浮腫、関節炎、下肢けいれん、体位性不快感、習慣的な足踏み)に起因する症状としてのみ説明されない。

Restles X syndrome ※Xには体の部位が入る                                     X:Head、Mouth、Chest、Back、Abdomen、Genital、Legs、Bladder、Bowel、Trunck、Arms

鉄欠乏からのドパミン不足によって起こる。貧血がなくても潜在的な鉄欠乏をみるために、血清フェリチン値を測定する。

治療
薬物療法
1)ドパミンアゴニスト(ビ・シフロール)1錠(0.125㎎)就寝前(症状発現の2時間前)1日1回0.5㎎まで
2)ガバペンチンエナカビル(レグナイト)300mg1錠1回夕方(特に痛みが強い場合)ドパミンアゴニストほどの改善は期待できないが、ドーパ薬長期投与に必発の増強減少augmentationが生じにくい
3)ベンゾジアゼピン薬(クロナゼパム)0.5~1mg就寝前 夜間のふらつき、翌日の眠気などの副作用あり 軽症例のみ
4)その他:ドパミンアゴニスト貼付薬、l-dopa合剤(保険適応外)、プレガバリン(リリカ)(保険適応外)

Take-Home Message
 体動や圧迫で改善する夜間の感覚異常はRestless X syndromeを考える
※Xには体の部位が入る

 

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イメグリミンの講演会

2022年11月09日 | Weblog

 火曜日は市医師会の学術講演会があり、座長をしていた。新規経口血糖降下薬のイメグリミン(ツイミーグ)についての講演だった。たぶん医師会講演会の座長をするのはこれが最後になると思う。

 講師は大学病院糖尿病代謝科の若手の先生(助教)で、他県からのWeb講演だった。最初はイメグリミンの作用機序に関する話で、ミトコンドリアへの作用を介するが、これはなかなか複雑でわかりにくい。

 しかし作用機序の話が10分くらいで終わると、その後は臨床試験(TIMES試験)に話になり、自験例での単独あるいは他の糖尿病薬と併用した際の血糖の変化の話になり、具体的でわかりやすかった。

 1名の先生が質問されたが、訊いてみたいことがいっぱいあったので、もっぱら当方が質問してしまった。イミグリミンのイメージがはっきりして個人的にはよかった。

 

 メトホルミンの改良薬ということで、インスリン抵抗性改善作用にインスリン分泌促進作用も付随した薬という印象を持っていた。実際には違っていて、むしろインスリン分泌促進作用にインスリン抵抗性改善作用も付随している薬ということだった。

 イメグリミンのインスリン分泌促進作用はよくわかっているが、インスリン抵抗性改善作用はそれほどわかっていないらしい。

 イメグリミンはDPP4阻害薬+弱いメトホルミン作用、ということだった。消化器症状の発現に注意は必要だが、メトホルミンの代わりに使用するというより、(インスリン抵抗性改善作用の)メトホルミンと併用する薬だった。

 消化器症状の発現の問題があり、併用する時はメトホルミン1000mg/日以下に減量したほうが良いと言われた。もっともメトホルミンを1500mg/日まで使用している例は少なく、ほとんどは500~1000mg/日で使用している。

 高齢者には、DPP4阻害薬以外は使用しがたいが、腎機能に問題なければ、消化器症状に注意は必要だが案外使用しやすいかもしれないという話もあった。

 日本のみでの販売で、そうなると大規模臨床試験は行い難い。心血管疾患の予防効果が証明できないので、欧米のガイドラインに載るのは難しいのかもしれない。

 

(糖尿病治療ガイド2022-2023)

イメグリミン 

 商品名ツイミーグ錠500mg 1回1000mgを1日2回朝夕(4錠分2)                                                   グルコース濃度依存性インスリン分泌促進作用インスリン抵抗性改善作用による血糖降下作用                                作用機序はミトコンドリアへの作用を介すると推定                                      ビグアナイドを作用機序の一部が共通、両者の併用で消化器症状が多い、ビグアナイドとの併用は慎重に           インスリン、SU薬、グリニド薬との併用で低血糖リスクが増加(3剤の減量を検討)                   eGFRが45mL/分/1.73m2未満の腎機能障害者への投与は推奨されない

 

イメグリミンの臨床試験                                                イメグリミンの第3相臨床試験(TIMES試験:Trial of IMegrimin for Efficacy and Safety)

1)TIMES 1試験  イメグリミン単剤投与(24週間)による血糖降下作用

20歳以上の2型糖尿病患者、HbA1c7.0~10.0%(平均年齢62歳、平均BMI25.4kg/m)                  除外基準:腎機能障害(eGFR<45mL/1.73m2)、心不全(NYHA心機能分類Ⅲ度・Ⅳ度)、24週以内に発症した冠・脳血管疾患患者                                                     一次エンドポイント:24週時点のベースラインからの平均HbA1cの変化                        二次エンドポイント:24週時点での「反応者割合」(24週時点でHbA1c7%未満に達した被験者あるいは24週時点でHbA1cがベースラインの値よりも相対的に7%以上減少した被験者)

イメグリミンでベースラインからのHbA1cの変化が24週時点で-0.87%

24週時点でHbA1c7%未満に達した被験者はイメグリミン群で35.8%に対しプラセボ、あるいは24週時点でHbA1cがベースラインの値よりも相対的に7%以上減少した被験者)

イメグリミン投与で、                                               1)HOMA-βは増加(インスリン分泌能の改善効果)                                2)HOMA-IRは有意差は認められなかったが、QUICKIは有意に低下(インスリン抵抗性改善の可能性)

イメグリミンの副作用                                              プラセボ群と同程度、重症の副作用なし、重症低血糖なし

2)TIMES 2試験  既存薬剤へのイメグリミンの上乗せ効果

イメグリミンの上乗せ効果により有意な血糖低下                                   DPP-4阻害薬-0.92%、チアゾリジン薬-0.88%、α-グルコシダーゼ阻害薬-0.85%、グリニド薬-0.70%、メトホルミン-0.67%、SGLT2阻害薬-0.57%、SU薬-0.56%、GLP-1受容体作動薬-0.12%

3)TIMES 3試験 イメグリミンのインスリンへの上乗せ作用

 HbA1cがベースラインから0.60%低下

イメグリミンの血糖降下作用                                            グルコース依存性インスリン分泌促進作用が大きな役割を果たす                           インスリン抵抗性改善作用も一定の効果が期待できる                                 心血管イベントの抑制作用や腎障害の予防などの臓器保護作用を示すことも期待される

 

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NHK「あしたが変わるトリセツショー」

2022年11月08日 | Weblog

 9月29日のNHK「あしたが変わるトリセツショー」はダイエットがテーマだった。岐阜大学医学部付属病院・糖尿病代謝科の矢部大介教授が出演して、いわゆる「食べ順ダイエット」を勧めていた。

 最初の5分間は蛋白質を食べると(野菜もOK)、GLP-1受容体作動薬が分泌されて、満腹中枢を刺激して、胃の運動を緩やかにして満腹感を持続させる。さらにインスリン分泌を促して、血糖値の上昇を抑える。

 その後は炭水化物を同時に食べてもいいそうだ。5分はスマホのタイマー機能でもいいが、砂時計を使用すると時間の経過が一目でわかるという(儀式的でいいのかも)。

 丼ものや麺類の場合はサイドメニューを活用するか、上に載っている肉や野菜を最初に食べると達成できる。

 そんなにうまくいくのかとも思うが、食べる内容は同じでそれほどの努力は要しないので、勧めるのもいいかもしれない。矢部大介教授は一般向けの著書は出されていないようだ。

 

 番組のMCは女優の石原さとみさんが勤めている。石原さとみさんは本名と芸名のギャップがある芸能人としてよく出ている。石原さとみさんの本名は石神国子(いしがみくにこ、結婚されて姓は変わったはず)さん、石坂浩二さんの本名は武藤兵吉(むとうへいきち)さん、綾瀬はるかさんの本名は蓼丸綾(たでまるあや)さん。

 以下は番組ホームページから。煽った感じの表現はテレビ的。

 

 

【トリセツ01 ごはんの前に たんぱく質を先に食べること!】

■食べる順番を変えるだけで劇的な変化が!

あなたはふだん、どんな順番で食事をしていますか?

実は、ごはんを食べる前に肉や魚などのたんぱく質を食べると、ダイエットに効果があることが判明!そこで 食事制限をせずに、食べる順番だけを変えてもらうと…

①体重が減る

②自然と食事の量が減る

③間食が減る

とうれしい変化が起きたのです!

■医学界で大注目の“やせホルモン”GLP-1!

その秘密は・・・たんぱく質を取ることで、GLP-1というホルモンが腸から分泌“やせホルモン”とも言われる物質で、脳の満腹中枢を刺激したり、胃の運動を緩やかにすることで、満腹感が持続!さらにインスリンの分泌を促して、血糖値の上昇を抑える効果も!今、医療現場でも食べる順番の指導が行われています。

【トリセツ02 ごはんを5分我慢して“やせホルモン”パワー全開!】

■ごはんを5分我慢! あとは好きな順番でOK!

そうはいっても、ごはんとおかずは一緒に食べたい!という方に朗報です!

最新研究によると、ごはんを先に食べたときに比べ、たんぱく質5分先に食べたときのほうが、血糖値の上昇が抑えられることが分かったのです。だから、最初5分はたんぱく質を食べて、ごはんは我慢。あとは好きな順番で食べてOK!

■最初の5分はたんぱく質や野菜を楽しもう

ごはんを5分我慢するために、ちょっとしたアイデアを紹介します!

①砂時計を利用する

短いようで長い5分…でも砂時計があれば時間の経過が一目で分かります。スマホのタイマー機能でもOK!

②丼ものや麺類はサイドメニューを活用

丼やラーメンは5分待つのが難しい…そんなときは最初にサイドメニューでたんぱく質や野菜を注文!ぜひ5分間を楽しんでみてください!

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肺炎球菌肺炎

2022年11月07日 | Weblog

 金曜日の午後に、1週間高熱が続く58歳女性が発熱外来を受診した。咳と痰があり、気道感染は明らかだった。

 発熱外来は、新型コロナの抗原定性試験とインフルエンザ迅速試験から始まる。両者をキットを使用しているためインフルエンザの検査もしているが、陽性になったのはこれまで1例しかない。

 この方は両者陰性だった。発症前に同居の孫がヒトメタニューモウイルスに感染したという情報もあった。それに感染した可能性もあるが、日数的には二次的に細菌感染を併発したくらいになる。おそらく肺炎があると判断された。

 胸部X線を撮影すると、両側肺特に左肺に陰影を認める。コロナ自体も抗原定性試験では心もとない。肺炎の範囲を見るためと、コロナらしい陰影がないか見るために胸部CTを行った。

 すりガラス様陰影がややまだらに分布している。黙ってこの画像を見せられたら、COVID-19は鑑別に上がるだろう(むしろコロナと断定するかもしれない)。新型コロナの院内でできる迅速PCR検査も追加した。

 血液検査では、白血球14300・CRP16.2と炎症反応の上昇を認める。数値的には細菌性を示唆するか。新型コロナらしい検査異常はなかった。

 肺炎球菌の尿中抗原が陽性と出た。陰影は気持ち気持ち悪いが、コロナのPCRも陰性だった。肺炎球菌肺炎と判断される。肺炎の入院は個室で治療開始することにしている(後でコロナと判明する可能性があるため)。

 セフトリアキソンで治療を開始して、翌日からは解熱していた。食事も普通食も小盛をほとんど食べられていた。肺炎球菌でいいのだろう。

 ヒトメタニューモウイルスの迅速検査は陰性だったが、ウイルス感染からの二次性細菌感染だろう。

 

 

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3年前に筋炎で入院していたCOVID-19

2022年11月06日 | Weblog

 11月2日水曜日に、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の87歳男性が保健所の依頼で入院した。当院の神経内科に脊髄小脳変性症で通院していた。

 10月31日月曜日から発熱(微熱)・咳があり、翌日11月1日に近くの医院を受診した。抗原定性検査だと思うが、COVID-19と診断されて、抗ウイルス薬のラゲブリオが処方されていた。

 保健所では、神経疾患があり、入院治療が必要と判断した。翌日に当院の感染病床が1床空くのを見越して、入院が依頼されていた。

 

 入院してきてカルテを確認すると、3年前に入院歴があり、当方が担当していた。原因不明の筋炎だった。

 3年前に日曜日の早朝に脱力で救急搬入されていた。土曜日の日当直で来ていた外科医(大学病院からバイト)が対応した。38℃の発熱があり、白血球14900・CRP1.8と炎症反応が上昇していた。

 胸部CTで両側肺下肺野背側にすりガラス様の陰影が写っていた。カルテには「軽度の肺炎か」とあり、点滴・抗菌薬投与を行って、「来院後は顔色が良くなった」として帰宅にしていた。

 その日の午後に再度脱力で救急搬入された。日直は循環器科医(当時はいた)だった。再度検査して、白血球21600・CRP11.9と半日の間隔で急激に上昇していた。さらにCK 12100・AST 213・LDH 420と筋原性酵素が上昇していた。(最初に搬入時はCK 133)

 「肺炎ははっきりしない、尿もきれい」として、「本日は補液・ロセフィンで経過みる。リピトール内服しており、中止する」としていた。内科入院の依頼がきて、その日の指示は出してくれた。血液培養2セット・尿培養を提出してもらった。

 

 入院後もその方針で経過をみたが、炎症反応・筋原性酵素上昇は軽快しなかった。多発筋炎のマーカーは陰性だった。培養は陰性で、胸部CTの所見は背側に水分貯留としての陰影らしかった。

 プレドニン20mg/日から開始すると、発熱(微熱)・炎症反応・筋原性酵素上昇は軽快していった。プレドニンを漸減していたので、2か月弱の入院となった。プレドニン5mg/日になったところで退院として、神経内科の外来で1mgずつ漸減してもらうことにした。(数か月で漸減中止になっていた)

 

 今回も入院時の検査でCKが7000と上昇していたが、レムデシビル点滴静注と補液を開始して(入院時、嚥下困難・内服困難)、11月4日の再検でCKが4000と低下して、炎症反応も軽減してきた。

 ウイルス感染の影響で一過性に上昇してだけなのかもしれないが、経過をみないと安心はできない。

 

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横行結腸憩室炎

2022年11月05日 | Weblog

 11月1日火曜日に心窩部痛・背部痛の49歳男性が内科新患を受診した。内科の若い先生が新患担当だった。

 10月30日日曜日に心窩部痛・背部痛で、地域の基幹病院の救急外来を受診していた。患者さんの話だが、心電図や心エコー検査を受けて、異常なかったそうだ。原因不明として帰していた。

 その後も症状が持続しての受診だった。37℃台の発熱がある。心窩部に圧痛・反跳痛を認めた。ふだんは糖尿病(DPP4阻害薬+メトホルミンの合剤)・高脂血症でクリニックに通院している。

 急性冠症候群・大動脈解離の評価が必要として、心電図をみたが、まったく異常がなかった。メトホルミン内服を気にして、胸腹部単純CTを施行していた。(緊急時は造影剤使用して問題はないかもしれないが、単純CTで当たりをつけるというのはある)

 大動脈径は正常域で解離を示唆するようではない。上行結腸から横行結腸にかけて、大腸憩室が多発していて、肝彎曲部から横行結腸口側にかけて、周囲脂肪織に軽度に炎症像を認めた。十二指腸下降脚の周囲にも炎症が軽度に及んでいる。(放射線科の読影でも「横行結腸憩室炎疑い」だった)

 確かにこの部位であれば、後腹膜にかかるので心窩部痛と背部痛を説明できる。横行結腸憩室炎として入院となった。絶食・点滴と抗菌薬使用で、入院後は解熱して症状は軽快してきた。

 受診時の検査で、白血球19900・CRP16.8とかなりの炎症反応上昇を呈していた。2日前の発症時にはそれほどではなかったかもしれないが、上昇は始まっていたと思われる。最初に受診した基幹病院では、どう思って帰したのだろうか。

 

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NP-SLE?

2022年11月04日 | Weblog

 発熱・好中球減少(単球増加)・胸膜炎で入院した89歳男性のその後。

 単球性白血病・骨髄異形成症候群疑いで、骨髄穿刺をしたが診断はつかなかった(血液内科医と相談)。検査で抗核抗体陽性・抗dsDNA抗体陽性と判明して、全身性エリテマトーデス(SLE)の診断となった(リウマチ膠原病科の先生と相談)。

 プレドニン30mg/日で解熱して胸膜炎は軽快したが、好中球減少は続いていた。G-CSF(グラン注)には反応していた。プラケニル(ヒドロキシクロロキン硫酸塩)を投与をして経過をみると、好中球減少は改善した。

 プレドニンをゆっくり漸減して、リハビリをしていた。もともとやっとトイレに行けるくらいのADLが低下して、在宅介護は困難となり、施設入所の手続きの使用としていた。

 

 先週、意識レベルが低下していると報告があった。開眼して、問いかけると返事はするが、反応が鈍い。もともと構語障害様のしゃべり方だが目立つようだ。頭部CTでは陳旧性ラクナ梗塞がわずかにあるくらいだった。

 経過をみると、症状が変動して良くなったりもするが、また傾眠様になったりする。頭部MRIも行うと、脳全体と表現するしかないような脳梗塞が多発していた。MRAで少なくとも描出できるメインの脳動脈に問題はない。動脈硬化性ではないようだ。

 心房細動はなく正常洞調律だった。SLEの診断がついてから、抗リン脂質抗体症候群(APS)のマーカーを提出して、心エコー・下肢静脈エコーを行ったが(リウマチ膠原病科医師の指示)、異常はなかった。ただDダイマーが正常ではないので、抗凝固剤(リクシアナ)も投与していた。

 

 大学病院に連絡して、相談していたリウマチ膠原病科の先生に報告した。抗リン脂質抗体症候群(APS)があるのかもしれな、中枢神経ループス(現在は、神経精神SLE:neuropsychiatric SLE=NP-SLE)かもしれない、ということだった。

 ヘパリン化(持続静注)をして、プレドニンは30mg/日(1mg/kgではないが年齢を考慮。入院中に90歳になった。)にして経過をみてほしい。また病院に行った時に診ます、ということだった。

 血小板減少もあり、少し貧血になっている。TTP/TMAなども考えられるか。大学病院で引き取るべきなのでしょうが、とも言われたが、超高齢・ADL低下・認知症となると、難しいようだ。

 

 放射線科の読影レポート(大学病院放射線科の遠隔診断)は、単に「多発性脳梗塞」となっていた。確かにそうだが、この分布をみて奇異に感じないのだろうか。

 

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血便

2022年11月03日 | Weblog

 火曜日午前の救急当番を、内科の若い先生の都合で別の日と交代していた。その日朝病院に来た時に、救急の音が聞こえると思っていたら、病院の前を通り過ぎて行った。迎えに行くところなのだろう。

 その後、下腹部痛・血便の90歳女性が救急搬入されていた。気になっていた病棟の仕事を一通り行ってから、確認した。

 前夜から下腹部痛と血便が続き、動けない状態になって(家族が)救急要請していた。認知症があり、簡単な受け答えしかできないようだ。

 市内の医院に、高血圧症・GERDで通院していた。心房細動があるが、抗凝固薬ではなく、抗血小板薬が処方されていた。

 37.3℃の発熱があったので、発熱外来扱いになったが、陰性確認後は通常の救急患者として診察・検査が行われた。貧血はなく(Hb12.1g/dl)、BUN35.1・血清クレアチニン1.61と、元々CKDと消化管出血を示唆する値だった。

 腹部CT(単純)では横行結腸から直腸まで腸管壁の肥厚と、腸管周囲の毛羽立ちを認めた。たぶん発症の順序は腹痛が最初で、血便が後だと思うので、虚血性腸炎が疑われる。

 若い先生は、心房細動があるので、腸間膜動脈閉塞と感染性腸炎も疑っていた。部位的には上腸間膜動脈ではなく、下腸間膜動脈になるので、動脈閉塞はたぶん違うとは思うが否定もできないか。まずは虚血性腸炎疑いで入院となった。

 

 診察記事には「血便」とあり、CT検査依頼には「下血」と記載していたのが気になった。「下血(melena)は通常上部消化管出血でみられる黒色便を、血便(hematochezia)は通常下部消化管で認められる赤色便(鮮血便)を指すものとして用語が定義されている.」から。

 他科の先生に下血と言われると、「赤い便ですか黒い便ですか」と確認している。

 

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扁桃周囲膿瘍

2022年11月02日 | Weblog

 昨日の火曜日に、4日前から発熱・咽頭痛が続く21歳男性が内科新患を受診した。外来は内科の若い先生が担当していた。

 鼻汁・咳はなく咽頭痛だけだった。十分に開口できないが、左側が腫脹しているようには見えていた。単純CTで確認して、膿瘍は指摘できないと判断したようだ(後からだとあるという目で見てしまうが、単純でも膿瘍はある)。

 耳鼻咽喉科に紹介されて、造影CTが追加された。明らかに左扁桃周囲膿瘍があり、右側にも軽度にあった。耳鼻咽喉科で入院治療となり、切開排膿の処置が行われた。

 扁桃周囲膿瘍はCTでこう見えると、いう画像になっている。killer sore throatsの中では一番多い。

 内科ですでにセフトリアキソンを入れていたので、クリンダマイシンが追加された。(スルバシリンABPC/SBTでいいような気はするが)

 溶連菌迅速試験は陰性で、切開後に培養検査が提出された。A群溶連菌以外にも、C群・G群溶連菌や口腔内嫌気性菌(Corynebacterium)など、案外扁桃炎の起炎菌も複雑らしい。

 耳鼻咽喉科医がいると助かるが、時間外の救急対応はしていない。週1回バイトで不在だったりもするので、いる時はいる(診てもらえる)という形になっている。

 

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直腸癌術後再発

2022年11月01日 | Weblog

 月曜日の朝病院に来ると、日曜日の日当直(バイト)だった大学病院の外科の先生から、連絡がきた。直腸癌術後再発で消化器科の外来に通院している89歳女性を入院させたので、よろしくということだった。

 日中に食欲不振で受診して、いったん帰宅としたが、夜間に再受診したので入院にしていた。肺炎として抗菌薬を投与していた。

 外部の病院からの日曜日当直の場合、午前7時半ことには帰っていいことになっている。(夜間の入院があったことは、当直の看護師が担当医に連絡する)慌てる様子もなく、朝食(検食)を食べて帰って行った。

 

 2016年に血便で受診して、当院外科(当時)で診断されていた。直腸癌を診断されて、家族の希望でがんセンターに紹介となった。

 手術した後に腸閉塞になった時も同じ外科医が診て、手術適応として癌の手術をしたがんセンターに紹介していた。その後再度腸閉塞になった時もまた同じ外科医が診て、その時ほ保存的に軽快した。なんだか、がんセンターの下請け?のようになっている経過だった。

 その後は、腹腔内のリンパ節転移(大動脈周囲、骨盤内)と肺転移が出現したが、治療対象とはならず、当院の消化器科で経過をみていた(外科常勤医がいなくなっていた)。電子カルテにDNRの印が付いていた。できるだけ自宅で過ごして、最期は入院でという話になっていたようだ。

 外科医は単純X線だけ撮影していた。臥位で撮影したので、両肺野全体が白くなっている。多分胸水貯留だと思うが、CTで確認しておきたい。(胸部単純X線は左が今回、右が9月の座位撮影)

 

 外来で診ている消化器科医が病院に来たので、その患者さんが入院になったことを伝えた。消化器科で診ますといってくれたので、お願いした。心不全というより癌性胸膜炎なのだろうか。利尿薬投与で経過をみるようだ。

 

 日当直の外科医は女性医師だった。たぶん当院には初めて来たと思う。発熱外来9名を診て、COVID-19の診断を付けていた。その他は蜂刺傷を2名診ていた。

 

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