「The Farm」はBBCドラマ「London Spy」の脚本家トム・ロブ・スミスの小説です。日本語訳の小説でさえすぐツンドク化させてしまう私が(例えばドイルのシャーロック・ホームズとかも)英語で読むことになったわけはコチラに・・・。
簡単に言えば「上級+」クラスに入れてもらえなかった意地で自力で読む決心をしただけの話です。
それでね、その週1クラスでは毎回約60ページを読んで来てディスカッションするという内容なので、60ページ×5回=300ページを5週間で読むのを目標としました。
結果は、約4週間で全360ページ読み終わったので目標達成です。イェーイ!
と言うのも、おもしろかったので読めただけなんですけどね!
あとたぶん、私が最近英語で読んだのはコナン・ドイルとかシェイクスピアとかまったくの現代作品ではなかったので、現代小説がそれに比べて読みやすかったからかな?
それとこれもたぶん(比較対象がないのでなんとなくの推量ですけど)、トム・ロブ・スミスさんの文章は短文が多いのも読みやすかった原因です。
あとデジタルですぐに単語の意味が辞書で引けるのもとても助けになりました。10年くらい前ハリー・ポッターを紙の本で読んだ時は、第7巻とか長くてわからない単語は推量だけで辛かったですもん。でもあの時は日本語版がなかなか出なかったから仕方なく読みました。
ということで、デジタル版がある限り、英語の小説は読める!と自信がつきました。ブリティッシュ・カウンシルの英語クラスでは、読んでディスカッションするのでそれに参加するには上級+の英語力がないとダメなんですが。
あらすじ
ダニエルはスウェーデン人の母とイギリス人の父に愛されてロンドンで育った。その両親は退職後スウェーデンの田舎に移住したが、急に父と母からそれぞれ電話が。父は「ママは病気なのに病院から逃げ出した。」母は「パパは陰謀に巻き込まれてる。今からそっちに行くから。」と母がまずロンドンに戻って来て、スウェーデンにて数ヶ月の間に起こった事件を話し始めた・・・
感想
読者はダニエル目線で、父母のどちらを信用すればいいのか、真実を知るために母の話を聞かされます。ここが長いのだけど、真実が知りたくて、そして途中からはダニエルと同様、やはり母はどこか妄想の世界に生きているのでは?と疑いが頭を擡げながら読み進むことになります。
前半のこのへんでは、妄想狂の人の頭の中をのぞくような興味深さがあります。話の展開はいっけん合理的でつじつまがあってはいるんです。しかも証拠物件までバッグに入れて持って来ていて見せられる・・・だけど、そのアイテムはどれも、母が主張する犯罪の決定的な証拠とは言えないので、話がウソっぽく大げさに聞こえてしまうのでした。
ダニエルも結局「母は病んでいる」と判断し、その時から母は彼にも心を閉ざしてしまいます。ダニエルがスウェーデンの両親の土地へと旅立つところからが本当に面白い。それまでは、ほぼ母の見た世界だったので、どこからどこまでが真実かがわからなかったわけですが、ダニエルの目で母のストーリーを検証して行くわけですね。
彼がスウェーデンで発見したのは、そこで起こっていたことと、母の少女時代のこと。このへんで、London Spyにも出て来た主人公達の幼少時代と親の隠されたストーリーというのが暴かれるのです。
平和なヨーロッパの田舎の閉鎖的な社会、権力の力、北欧って先進国のはずが、現代でも田舎はこうなの?!人種差別に男社会。こわい~~~!
思い出したのは映画「ミスティック・アイズ」。あの映画も狭い村での人間関係が怖かった。そしてどちらも表面上は平和で美しい自然の風景でした。
そうそう、London Spyと共通しているのは、話の本筋にはあまり影響ないけど主人公ダニエルがゲイだということです。名前も同じ。こういうふうにそれ自体がテーマではない話の主人公がゲイというのは差別撤退に貢献すると思います。
本を読み終えてから、作家についてウィキを見たら、トムさんもお母さんがスウェーデン人でお父さんがイギリス人でした。スウェーデンのことをそれでいろいろとダニエル目線でご存知なんですね。
作中に、両親の農地の隣に住む美少女が出て来ますが、彼女は黒人で、スウェーデンの田舎ではさぞかし目立って窮屈だったろうなあと思いました。なんとなくあの国にも黒人がいるんだ・・・って意外だったけど、私もロンドンに住んでいた時ママ友のスウェーデン人のダンナさんは黒人だったわ。夫婦でロンドン大学で研究していたインテリ夫婦でしたけど。
あとウィキって「配偶者」って欄があって、トムさん既婚なんだと思って何気なくその人のリンク先見たら、BBCのエグゼクティヴのBen Stephensonと言う人でした。むむ。London Spyが世に出るにあたりその方の存在は影響があったのか・・・ブツブツ。さらにそのBenさんはスタトレ&スターウォーズのJ.J.率いるバッド・ロボットのTV部門のトップもかねていると。なんか、私たち、すごくお世話になってる気がしますね?!ウィキってば、年収なんかも出ちゃってるんですが、そこには、私達の年貢が含まれてる気がしてなりません。ははっ!私たちもお世話してると思ったら罰が当たるかな~~
原著の読了、おつかれさまでした! 私はズルして日本語訳で読みましたが、ね、「London Spy」を観た人には薦めたくなる小説でしょう?
>読んでディスカッションするのでそれに参加するには上級+の英語力がないとダメ
その理屈も分かるのですが、でもあの小説を題材にして「上級+」の英語力を求めるのはちょっとなあ、という気がしてなりません。日本語訳で読んだ私が言うのもなんですが、それほど難解な文章でもないし、それほど難解な構成でもない。普段、英語で話すことに慣れていらっしゃるしましまさんなら資格十分だと思うのになあ……ぶつぶつぶつ。
日本語版でもズルとは言わないですよ~^^;
<<あの小説を題材にして「上級+」の英語力を求めるのはちょっとなあ
英語力なのかなんなのか・・・
小説じたいはけして難しくないですよね。
何をディスカッションするのか興味あります。
主題みたいなものはちょっと検索すると商品解説みたいな文章が出て来るだろうし、
では、感想?
それだと日本語でも私「こわ~~い」としか書けてない・・・(涙)
よく事件についてニュースで犯行の理由を簡単に言うじゃないですか。
あれを聞くとその裏にはドロドロした人間関係や感情があるんだろうなあ、
でもそれを掘り起こせる人って警察にはいないだろうなあ、って思うんですよね。
この小説の場合はお母さんが真相を妄想で膨らましていたのがおもしろいです。
でもその妄想力がなければ過去の事件の真相も別のストーリーで隠されたままになっていた。
世間から見た「精神病患者」の思考もおもしろかった。
ロンドンスパイは私には謎も残ったけど、こちらの小説は
出来事の断片の表層をひとつひとつ事実はこうだったと説き明かしてくれた
よくできた推理ものだったなあと思います。