先日読んだ「虹の家のアリス」の後書きに、加納朋子と北村薫の関係が書いてあった。
加納朋子の「ななつのこ」が北村薫へのオマージュだという。
まだ「ななつのこ」を読んでいないが、一度北村薫の本を読みたいと思って図書館で探した。
『円紫さんシリーズ』や『覆面作家シリーズ』を読むべきなのだろうが、図書館の書架で私が惹かれたのはこの本だった。
『ひとがた流し』は、40代の女性3人が主人公で、彼女たちと彼女たちの家族のありようを淡々と重ねていく感じがとても好もしかった。
この中の一人千波が、おそらく乳がんで亡くなる。 闘病記を描くのが目的ではないからと病名はでてこない。
その千波がホスピスに移る間際、階段からおちて足を折って入院中の牧子の元にやってくる。
長い付き合いの友人との永遠の別れを、エレベーターを使って表現される。
この場面にぐっときた。 入院経験のある方なら誰でもが感じるだろう 「外との隔たり」 「自分で出来ることの限界」 「ここから先にはまだ行けない」
「行ってしまった」 「私はここから出られない」 「これは本当のこと?」 というよなあのざわざわとした感じを思いだした。
よく描き出された場面だと思う。
後書きにはこういうことも書かれていた。ーーまた、登場人物の流すものとして《涙》という言葉も使うまいと思った。
だから、泣けないほどの哀しさが伝わってきたように思う。
ぐいぐいというような強い作風ではないが、さらりとすごいなあという後味が残っている。
また、他の本を読んでみたいと思う。