HAKATA PARIS NEWYORK

いまのファッションを斬りまくる辛口コラム

形骸化した「会議」は何も生まない。

2012-06-20 14:40:11 | Weblog
今年も実効性を欠く企画内容

 福岡アジアファッション拠点推進会議が開催している「福岡ファッション拠点推進フォーラム」が、今年も7月9日(月)16時~に開催される。
 プログラムは、昨年度の活動報告及び今後の取り組み、講演会、福岡アジアコレクション(FACo)に出展した地元ブランドによる取り組み発表。前回とほぼ同じプログラムである。

 福岡ファッション拠点推進フォーラムは今回で4回目になるが、いったい何を目的に行なわれているのか、未だに良く判らない。なぜなら、フォーラムの第一部である昨年度の活動報告及び今後の取り組みは、たった30分しかない。これには福岡県知事、福岡市長他の挨拶も入っているため、実質は20分程度だ。
 しかも、内容は主催者側が一方的に語るだけで、事業の実効性や成果などに不明確な点が多い。また地場メディアにも参加要請をしている割に、質疑応答や疑問点を指摘できる機会は、全く設けられていないのである。
 二部の講演会は毎年、違ったテーマや講演者になることはしかたないが、推進会議の事業目的からすれば場当たり的で、旬のテーマ性を欠く。初回が博多大丸のメンズ課長、2回目がタレントのIKKO、昨年が山本寛斎である。今回は雑誌CanCamの嶋野編集長で、テーマも「アジアでも大人気!Can流ファッション講座」(ゲスト:CanCam専属モデル 近藤しずか)であるからからだ。

 雑誌メディアが取り上げるテーマはアパレルや小売りがすでにマーケティングをやって、アジア向けの商品づくりや業態展開を行なっているからこそ特集できるわけである。CanCamはそうした情報を取材して編集したに過ぎず、しかも講演内容は一般読者向けだろうから、地場業界に取って有益なものなのかは、甚だ疑問である。
 まして、専属モデルの話なんて現地でのショーの裏話や観客の反応など、だいたい大筋は読める。ミーハーなモデル志望ならいざ知らず、これを地場のファッション業界関係者が聞いて何のためになると言うのか。
 三部のFACoに出展した地元ブランドによる取り組み発表も30分程度で、出展者すべてが発表するわけでない。税金の恩恵を受けてブランドや商品のプロモーションが出来ているのに、1~2社が代表で発表し、お茶を濁すにはいかがなものか。
 しかもショーへの出展はFACo主催者の審査に合格して可能となる。よって企業活動なり、商品企画やデザインなり、売上げ実績なりと選ばれる何らかの理由があるはずだ。それら選考理由がディスクローズされないのは、かえって審査方法に対する疑問が涌く。

 もっとも、明らかに主催者側が意図しているような部分もある。フォーラムの期日が「月曜日」であることだ。これは推進会議の参加団体であるFUBA(福岡美容生活衛生同業組合)の組合員が「店休日」で、主催者側が参加動員をかけやすいからなのは明らかである。
 参加者の数が多ければ多いほど、主催者側は費用を拠出する福岡県や福岡市に対し、「今年もこれだけの参加者がありましたよ」と、示しが付く。県や市の部局には書類で報告が上がるだけだから、上層部は「数字」のみをチェックし、議会への報告もそのまま素通りできる。
 フォーラムがいくら稚拙な企画内容であろうと、参加者がさくらに近い動員であろうと、主催者側が責任を追及されることはない。つまり丸く収まるわけだ。
 しかし、冷静に考えると、本来フォーラムの対象となるべき地場ファッション業界関係者が月曜日の16時という中途半端な時間に仕事をそっちのけで、参加できるだろうか。明らかに配慮を欠くスケジューリングだし、過去のプログラムを見ても、とても業界に役立つようなものは何一つない。もし、主催者側がそこまで計算していて、月曜日にしているのなら、明らかに確信犯である。


公職と私的活動の混同は許されない

 昨年の講演者は、ファッションデザインの第一線からほぼ退いている山本寛斎氏だった。ただ、推進会議の企画運営委員長Y氏が校長を務めるファッション専門学校がその後に学生のファッションイベントを開催し、寛斎氏をプロデュース・演出に起用している。はたしてこれは全く偶然の一致なのか、それとも芸能界でよく行なわれる「バーター取引」が介在していたのか。
 真実のほどは別にしてもファーラムという公共事業と、一専門学校の私的事業があまりに近づいているのは、尋常ではない。過去にもY校長の専門学校は推進会議の各事業に参画し、自校の活動も事業を通じてアピールしている。3年前に福岡県が国の緊急雇用基金2700万円を投じて開発したポータルサイトの「ファッションサイト福岡」の制作にも、自校を参画させている。  
 緊急雇用事業の対象となる失業者でさえ厳しく審査されるのに、基金事業の発注業者を選考する企画運営委員長という立場があれば、利害関係者をフリーパスで参画させるというのは納得がいかない。
 以上のことを鑑みると、今回のCanCam編集長の講演についても、自校への何らかの波及効果を考えてのことではと勘ぐられても仕方ないだろう。

 本来、公共事業の企画運営委員長という立場は「公職」である。それを私的な活動のために利用するというのは、職権を逸脱した行為である。それに対し、何ら異議を申し立てない、またどこかで握りつぶされているのなら、「福岡アジアファッション拠点推進会議」は、民主的な「会議」の体を成していないことになる。
 参加する関係団体も、単なる事業予算獲得のために頭数に揃えられているだけではと、言われても仕方ないだろう。一方で地場メディアは事業の実効性や問題点について、認識はあるはず。なのに黙殺しているのは多少の利害があるからだろうか。県議会にしても自ら課題を問い質そうとしないのは、明らかに不作為である。
 昨年も同コラムで福岡ファッション拠点推進フォーラムの問題点を取り上げた。すると、「あなたはなぜここまで書くのですか。…批判は弱虫の証拠」と、奇特にも拙書なんぞにコメントしてくださった方がいらっしゃった。
 この方がどんな立場の方か存じ上げないが、問題点があるから批判をしているわけで、反論したいのなら、きちんと論拠を示していただきたい。もし、この方が利害関係者だとしたら、この程度のレベルで事業に参画していることが情けなくなる。

 よくコラムで評論していると、「批判も問題定義”も結構ですが、打開案を示して実行さているのとは違うご様子」なんてコメントをいただく。こちらは問題点があるから指摘をするわけで、それを解決しようとせず、こちらに打開策を出せというのは、筋が違うのではないか。
 自分たちの論理に行き詰まると、伝家の宝刀のごとく「批判をしても何も生まない」とのロジックで反論される方々がいらっしゃるが、それで自分たちの「無作為ぶり」が正当化されるはずもないことを、まず先に自戒すべきである。
 福岡アジアファッション拠点推進会議がきちんとした議論の場を設けていただけるのなら、いくらでも意見を述べ、企画提案するのは吝かではない。推進会議の真の事業目的である「地場産業の振興」「人材育成」に対し、当方はファッション業界人として十分なアイデア、ノウハウを兼ね備えているからである。
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする