HAKATA PARIS NEWYORK

いまのファッションを斬りまくる辛口コラム

外国人の採用評価は諸刃の剣でもある。

2012-06-14 16:16:40 | Weblog
 ユニクロやセオリーを展開するファーストリテイリングは、日本の正社員に適用している制度に統一する「全世界共通の人事制度」を1年以内に導入するという。まず、ユニクロはじめ、セオリー、 コントワー・デ・コトニエなど国内外の正社員候補の約5000人を対象に、「業績」に応じて大まかに5つのランクに分け、適切な評価を加えて個人の適性や希望などをみながら人材配置を行なっていくようだ。

 ファーストリテイリングはここ数年、グローバル化、世界標準などを声高に叫んでいるのとは対照的に、アパレルを志望する若者の間では人気が凋落。「働きたいアパレル企業ランキング」(ファッション販売)でも、10年度は4位だったのに対し、11年度は30位まで激降している。
 また、一般大学生が選ぶ「2012年就職人気企業ランキング」(ダイヤモンド・ビッグ&リード社調べ)でも、文系男子で150位、文系女子で100位、理系男子で99位、理系女子で30位のすべてに入っていない。同じくグローバル化、世界標準に直面し、競争激化に晒される商社や金融、メーカーが名を連ねているのとは対照的だ。
 メディアの過熱報道が一段落した今、優秀な大学生があの店舗での仕事ぶりを見た時、「大学を出てまでやる仕事じゃない」と感じたとすれば、無理もない。実際はその先にMDやSV、マーケティングなどの仕事もあるのだが、大学生にそこまで理解させられない企業ブランドなのだから、何とも皮肉な話である。

 もっとも、同社が昨年9月に発表した事業計画では、アジアを中心に中国100店、韓国50店、シンガポールやインドネシア、マレーシアなどのアセアン諸国100店を出店、さらに欧米にも20店を出店する目標というから、同社にとっては「何も採用する人材は日本人で無くて良い」という逃げも利く。
 当の柳井正社長自身は内心、「なぜ、日本の優秀な学生に人気が無いのか」と、歯がゆい心境だろう。プライドが高い同氏だけに「ならば優秀な学生なら外国人で構わない」と、本心をすり替えた態度表明に出たと考えれば、説明もつく。
 ユニクロの場合、まず店長候補として採用され、店長が最初の目標となるため、日本人が中国やアセアンの僻地に赴任して、文化も習慣も違う現地人をマネジメントするのは容易いことではない。だから、現地事情、母国語に精通した学生の方が向いているはずである。

 問題は異動や昇格を決める「評価」制度だろう。業績に応じて5つのランクにわけ共通の評価を行うというが、これがグローバルスタンダードとして、外国人にも納得できる内容かどうかである。
 ユニクロのキャリアアップは、店長候補が店長に就任すると、次ぎの昇格はラインスタッフの「スーパーバイザー」もしくは「本部スタッフ」のMDや生産、調査・研究開発、マーケティングなど、さらに「ブロックリーダー」、「海外営業」などを経て、「執行役員」に昇りつめるという流れだ。
 優秀な外国人であればあるほど、ジョブマーケットでの自分の価値を重要視している。だから、採用側は「まず、店長というポジションに何が求められていて、何を達成すれば、どのくらいの報酬またはキャリアアップの種がもたらされるのか」ということを明示しなくてはならない。
 ただ、業績に応じた評価をする場合、店長やSV、ブロックリーダーは売上げという目標が設定されているので明確だ。しかし、店長候補といっても新人は配属される店舗では「コレください」的な応対で終始し、一般専門店のような接客販売を行なうわけではない。そのため、個人の売上げが把握しづらく、評価も難しい。

 だから、本社や店舗の目標によって、各自の到達点(数値目標や能力、業務の遂行プロセスなど)を明確に設定し、それらを店長や直属の上司が結果と達成度合いで評価し、本人にも明示するという方法しかないだろう。店長や上司には予算・売上げ管理、在庫コントロールと一緒に、こうした極めて明確な人事評価の能力も必要になってくるのである。
 グローバル評価では、日本的な「あのスタッフはいつも頑張っているからA」といった極めて感覚的なものは通用しない。しかし、到達点が設定され業績評価が公開されると、「自分はこれほど業績を上げているになぜBなのか」と、納得できない外国人が店長や上司と衝突するというケースも出てくるだろう。
 その辺のドライさと日本企業的な懐の深さを両立させた人事評価ができるか。日本企業が優秀な外国人を採用する人事制度は、「諸刃の剣」であることも忘れてはならない。
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