HAKATA PARIS NEWYORK

いまのファッションを斬りまくる辛口コラム

ズシリ。2年目の反動がのしかかる。

2012-06-02 11:35:21 | Weblog
 ここ数日、立て続けにJR博多駅周辺で働く人々と話す機会があった。まず一人は博多駅筑紫口にあるホテル関係者。二人目は博多駅前に近いホテル裏でバーを営むオーナー。三人目が駅から少し離れた場所にセレクトショップを構えるバイヤーだ。
 三名に共通するのは、新博多駅ビル「JR博多シティ」が開業した昨年は、ここ数年にない好調な売上げだったこと。ホテルは駅ビルの飲食フロア「くうてん」から溢れたお客が一気に押し寄せ、収益の柱であるレストランの売上げが急増。 バーは店近くのホテルにクーポンを設置していたことと、駅ビル内の飲食フロアが深夜まで営業しないため、ホテル近くの飲み屋には有利に働いた。セレクトショップは、「駅ビルに期待したほどのブランドや目新しいテイストがない」と、感じたお客が立ち寄って衝動買い。改めて博多ファッションの威力、地元専門店の強さを見せつけた。

 ところが、今年は各店ともその反動が一気に来ているという。レストランは、くうてんからお客が溢れてもホテルまでは来ず、駅が開業する前の客足に逆戻り。バーは、新幹線を利用する日帰り出張のビジネスマンが増えたため、終電ギリギリまで飲める駅校内の立ち飲み業態にお客を奪われてしまった。
 さらにオーナーは「公務員の飲酒運転も一般客の心理面に影響し、外飲みがかなり敬遠されている」ことも挙げ、モラルを欠く公務員のツケが全うな飲食業者に廻るのは堪らないと。セレクトショップは物見遊山のお客が一気に引く一方、開業景気の混雑を避けたお客が逆に戻っていない状況という。

 各店ともこうした状況はある程度予測し、それぞれ対策を立てていた。レストランはくうてんの高級店に対抗し、輸入ワインを組み合わせたスペシャルディナーを企画。しかし、駅ビル以外の店舗に向かうお客の財布の紐は固く、売上げの中心は利益が取れないバイキング料理という。
 バーはホテルで行なわれる結婚式の2次会向けをアピールし、新規客の獲得を目論んだ。この狙いは間違いではなかったが、「最近の若者は男性でも低アルコール系ばかり注文するので、客単価が上がらない」と、オーナーは嘆く。

 セレクトショップは新規客にハウスカードを勧めるなど顧客管理をきちんと行ない、電話やDMでセールや新商品の案内をこまめに行なっていた。ところが、駅自体が観光地的で一度見れば十分だし、お直しなどの受け取りを考えると地元以外のリピートは難しく、県外からの客足は一気に遠のいている。
 この店はオープンから一環して、専門店系アパレルの商品を中心にMDを構成。あくまでも路面店のスタンスを崩さず、接客によってバイヤーイチオシの商品を販売してきた。ただ、いくら商品に魅力があるとは言っても、「わざわざ新幹線代を使って再来店するお客はほとんどいない」とマネージャーはいう。   
 バイヤーも「駅ビル効果なんて一時的なものというのがよくわかった。うちは地元のファッションリーダー狙いを貫く」と、気持ちを切り替える。

 では、当のJR博多シティはどうだろうか。2012年6月1日の時点で、開業2年目第一四半期(3月~5月)の業績は、発表されていない。だから、ここでは細かな論評は避けたい。そこで初年度実績を見ると、SCのアミュプラザ博多が356億円(計画比119%)、百貨店の博多阪急が380億円(同103%)。アミュプラザ博多は衣料、雑貨、飲食がほぼ均等な売上げで、目標を大きくクリア。博多阪急もデパ地下が100億円以上を売り上げるなど、鉄道系の強さを見せつけたかたちだ。

 ただ、 周辺の状況から類推して、JR博多シティに2年目の反動がないとは考えにくい。特に気になるのが博多阪急だ。新幹線効果などあれだけの集客がありながら、売上げが計画費103%は期待はずれだったのではないか。駅ビルの関係者からも、柳沢興平店長が「坪効率が天神の岩田屋の半分くらいしかない」とこぼしていたとの話しが漏れ伝わってきている。
 先日、地元紙が「高級ブランド、福岡に熱視線/グッチのイベントが大成功し、伝説はフクオカショックとなった」なんて記事を載せ、テレビ朝日のワイドショーもこの記事を取り上げ、天神や「博多駅にはルイ・ヴィトン、エルメスが並ぶ」と、福岡は高級ブランドが売れる市場として紹介した。

 しかし、当の柳沢店長は開業時の囲み取材で、「ラグジュアリーブランドは持ってきていないから」と、阪急梅田店との違いをハッキリ語った。つまり、現場の人間として、メジャー化したルイ・ヴィトン、エルメスでは競争力がないことを十分認識していたのかもしれない。それゆえ、本人が2年目のジンクスを一番気にかけているはずである。
 仮に博多阪急が1ケタ程度の減収なら、アミュプラザ博多が初年度の好調を維持できれば、全体目標はクリアできるだろう。だが、それはアミュプラザ博多が2年目も絶好調という前提での話だ。JR博多シティは周辺への影響を含め、初年度があまりに良すぎた。それだけに2年目の反動がズシリとのしかかっているのは、間違いなさそうである。
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