HAKATA PARIS NEWYORK

いまのファッションを斬りまくる辛口コラム

公金をドブに捨てるファッション事業。

2013-04-03 14:51:51 | Weblog




 3月2日にスタートした「ファッションウィーク福岡(F.W.F.)」は、4月7日で終了する。約1ヵ月間にわたって展開された、ファッション・ショッピングの街「福岡」を内外にアピールする共同販促のキャンペーンだ。
 果たしてその効果はどうだったのか。それを検証するまでもなく、こうした事業が一部の利害関係者による“利権の産物”であるということが、いよいよ白日のもとに晒されそうである。このコラムで永年に渡って指摘してきた問題点は、はっきりその裏付けになるやもしれない。

 そもそも福岡にふさわしいファッション事業とは何か。ここの焦点がボケているから、情報発信の名の下に事業を独占しようと、広告代理店やテレビ局の利権と化してしまうのである。
 歴史的に見ると、福岡は博多を中心に有史の時代から大陸との交易で栄えた商業都市だ。それをファッションに置き換えると、アパレル(企画・製造・卸)というより、小売り(販売サービス)の機能が強いのは、最初から分かりきっていることである。
 先日、ファッションライターの南充浩さんもご自身のブログで記されていたが、「ファッションで街興しとか、ファッションで街を全国区に、と言ったスローガンを掲げたイベントが地方都市で行われる。だいたいが神戸コレクションか、東京ガールズコレクションの地方巡業である場合が多い。

 個人的に、福岡でタレントライブの延長線上のようなファッションイベントを開催して、全国区になれたり、地元のファッション産業が振興したりするのだろうかと疑問に感じる。
 現在、めぼしいアパレル、セレクトショップの本社は9割方東京に存在する。神戸、京都、大阪にも本社を残している企業はあるが、本社機能や企画機能は東京に移転されている。
 岐阜にも量販店向けのアパレルがいまだに残っているが、かつての勢いはない。岡山・広島にもジーンズ専業アパレルがあるがこちらも苦戦傾向が続く。となると、ファッション産業が振興できる場所というと実質、東京しかない」と。

 なるほどである。そこであえて福岡にふさわしいものを考えれば、やはり小売り業支援しかないだろう。特に福岡は百貨店のシェアが少なく、専門店が強い市場ということで、全国のアパレル関係者が注目してきた街である。
 そこでF.W.Fが開催されたわけだが、終了まであと終日を残し、主要商業施設に置かれたガイドブックは、買い物客が手にすることもなく無惨に放置されたままである。特にこの3月は博多駅ビルが開業して2周年に当たるため、アミュプラザ博多や博多阪急は独自で販促・集客策に力を入れている。
 一方、天神地区の各商業施設も毎春にはポイント加算などの施策をとっている。つまり、その最中に共同キャンペーンを張る意味があったのかという疑問が残る。

 もっとも、キャンペーンが認知されない最大の原因は、その目的と企画内容が連動していない点にある。目的は街に出て商品を買ってもらうことなのだが、その販促策がスタンプラリーによる商品プレゼントと海外旅行、そして商品券程度でしかない。しかも、商品プレゼントはすべての店が準備してはいないのだから、相乗効果なんてあるはずもないのである。
 また、週末に開催されたトークショーやセミナーも、ほとんどが販促に繋がるとは言い難いものだ。今回のためにわざわざ企画されたものというより、すでに福岡アジアファッション拠点推進会議およびそのトータルプロデューサーの口利きでブッキングされた陣容に過ぎないからだ。
 
 例えば、雑誌レオンの創刊に参画した干場義雅氏のセミナー。これは第1回の福岡ファッションフォーラムで起用された大丸のメンズ課長の講演があまりに酷い内容だっただけに、その反省を踏まえて東京から呼ばれたに過ぎない。
 ただ、この御仁の話が本当に大人のメンズファッションに影響があるなら、まず一般聴衆より大丸の課長始めとした百貨店のバイヤー陣、デベロッパーのテナント誘致担当者が聞いて、男性客が買い物したくなる商品を揃えるのが先だろう。大人向けの商品については、いつも「メーカーがない」って言い訳ばかりしているのだから。



 また、FACo(福岡アジアコレクション)の前日、3月24日に行われた「ファッション講座」は、CanCam専属の舞川あいくとスタイリストの亀恭子によるものだった。これはまさしくショーのタレントを活用するために「前乗り」させたものだ。
 雑誌や広告で数々のスタイリストと仕事をした人間からすれば、従来のスタイリストは仕事ぶりとは対照的にルックスは見られたものではなかった。だから、ずっと裏方の職業として成り立ってきたのである。
 しかし、このお方は多少の見てくれの良さから、出版業界の表舞台に出てセレブ本を刊行。さらに宣伝会議が発行する「編集会議」や「PRIR」でも顔を売り、代理店始めローカルメディアに憶えられたと思われる。
 しかし、所詮ファッション音痴のテレビプロデューサーから地方営業の場を与えられた程度で、ファッション業界に精通しているとはとても言えない。要はスタイリストというより、タレント活動と言った方が正確だ。それに何を期待しろというのかである。

 先日、ファッション業界誌「ファッション販売」の6月号で、地元ファッション専門店を取材する機会があった。この企業は推進会議、FACoにも関連しているのは承知していたが、取材のテーマは全く別物だったので、一連の事業に触れることなく社長のインタビューは進んだ。
 ところが、取材の終わりがけになって社長の口からは、「最近、全国のファッション事業がいろいろ書かれているのを見るけど、うちが扱う商品を含めてファッションショーなんかやったところで、商品はほとんど売れない。あれは主催者の幻想だ」というコメントが出て来た。
 そこで、机の上に無造作に置かれたガイドブックを指して、F.W.Fについて話題を振ってみると、「うちは全く効果がないから、よそもそうじゃない。広告代理店に良いようにされているようだね」とまで語ってくれた。
 この社長は地元のファッション専門店で20数年のキャリアをもつだけに、その言葉には説得力がある。おそらくこのキャンペーンに参加した多くの小売業者がそう感じているのではないだろうか。

 まあ、ガイドブックを見ると、利害関係者の思惑がそこかしこに浮かび上がる。まずFACoの告知であっても、出演する押切もえ、蛯原友里、山田優といった有名タレントの写真が使われることはない。
 これはTGCを業界メディアが取り上げた時からそうだが、タレント事務所が肖像権管理を徹底しており、「使うならカネを払え」という意味でもある。報道写真ですら使用規制は厳格なのだから、ローカルメディアは完全に足下を見られているということになる。
 また、ガイドブックに堂々とページを割かれている「福岡市には『カワイイ区』がある!?」も、福岡市からの補助金をガイドブックの制作費に回すためのものだというのがわかる。しかし、企画段階では予想だにしなかった篠田麻里子の退任、福岡市顧問A氏の同事業にまつわる数々の疑惑によって、笑えないオチがついた。
 他にも推進会議の企画運営委員長による私物化、トータルプロデューサーRKB毎日放送に対する疑念など、新たな問題もクローズアップされつつある。当コラムで数年に渡って指摘してきたことに、地元も気づき始めたということである。



 最後にガイドブックをザッと見ただけでは気づかないが、業界とそれに関わる人間の動きを読む当コラムとしては、以下のイベントにも触れておきたい。
 F.W.F期間中の3月9日、博多リバレインのHAKATA JAPANで、カラープランナーによる「あなたに似合うネクタイ選びます!」が開催された。
 イベントはすでに終わり、筆者はネクタイを締めないので、あまり興味はない。でも、仮に当日参加する機会を得たのなら、「離婚で苦楽を共にしてきた女房、子供を捨てた結婚相手に似合うネクタイはどんなものか」という質問をしてみたかった。
 あっと、他に書かなければならない記事、やりのこしたデザインがあるので、当コラムはこの辺で締めることにしよう。
コメント
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