HAKATA PARIS NEWYORK

いまのファッションを斬りまくる辛口コラム

クリエイティブと言えば予算がつく不可解さ。

2013-04-13 13:32:14 | Weblog
 さる2月末、福岡市役所の経済観光文化局コンテンツ振興課に「クリエイティブ福岡推進協議会」という組織が設置された。
 メディア関係者に配られた「CREATIVE LAB FUKUOKA」のリリースには、設立主旨として「ゲームをはじめとするデジタルコンテンツやファッション、デザイン、映画、音楽などのクリエイティブ関連産業については、今後の成長エンジンとして地域経済を牽引することが見込まれています」と、記されている。
 また、ご丁寧にも「福岡は若い人材が豊富で働きやすい街として、東京や県外の企業から高い評価を受けており、関連産業の集積も期待されています」と、福岡を過大評価するコメントまで付けてある。
 そして、福岡のクリエイティブ関連産業を振興する手段として、「若い人材がクリエイティブなまち・ふくおか」を内外に向けて情報発信するためのイベントとして「The Creators~POWERED BY CREATIVE LAB FUKUOKA」などの各種イベントを開催するとある。その中心が9月に開催する「ASIAN PARTY」で、この3月にはプレイベントも開催されている。

 これは福岡市の25年度の予算編成でも事業項目として挙げられ、ちゃんと予算が計上されている。 ASIAN PARTYは、「5.磨かれた魅力に、様々な人がひきつけられている」の項目として、2億2,224万円の予算がついている。
 また、クリエイティブ関連産業の振興、誘致推進事業、そしてクリエイティブ・エンターテインメント都市づくり推進事業、クリエイティブ産業拠点機能調査検討事業は、「7.創造活動が活発で、多様な人材が新しい価値を生み出している」の項目として、それぞれ3,423万7,000円、6983万2,000円の予算が計上されている。
 どれも凄い額である。しかし、CREATIVE LAB FUKUOKAのプレスリリースをじっくり読むと、「福岡のクリエイティブ関連産業を振興する」と言いながら、またもや「手段」としてのイベントばかりが挙げられ、それに予算のほとんどが使われそうなのである。

 もう、おわかりだろう。ファッション、デザイン、イベント、情報発信、そして今回は新たに“クリエイティブ”というキーワードまでくり出して、またもや利害関係者が公共事業を食い物にする“新たな利権”が見えてくるのである。
 まあ、当コラムの主旨からすれば、ゲームや映画、音楽については畑違いなので、言及は差し控えることにする。ただ、ファッションについては十分言わせて頂こう。
 そもそも、ファッションで言うクリエイティブ、クリエーターとは何か。いちばん分かりやすいところでは、欧米のコレクションのモード、メゾンブランドの服づくりだ。そしてそれを行うデザイナーである。
 ただ、服づくりにはテキスタイル、いわゆる生地や副資材が必要なので、コレクションの1年から1年半までに発表される「テキスタイルデザイン」からクリエイティブワークは始まっていると言える。
 具体的には、色の配色や繊維の組織、プリント、加工などを考え、生地のデザインを創り上げる。これに携わるクリエーターが「テキスタイルデザイナー」だ。
 そして、ファッションデザイナーは、シーズンのイメージを膨らませ、スタイル画を描き、オリジナルで生地を作るか、テキスタイル展でセレクトした生地を用いて、服づくりを行っていく。
 最近では、ブランドビジネスをより強固なものにするため、単なる服づくりだけでなく、VMD(ヴィジュアルマーチャンダイジング)やコミュニケーション(広告、販売促進)までの一貫したクリエイティブ戦略を考える「クリエイティブディレクター」も登場している。
 日本のファッションで見ると、NBアパレル、中小アパレルが行うファブリケーションや企画デザイン、ファッションソフトハウス(企画デザイン会社)が手がけるダイレクトなトワルデザインも、クリエイティブワークに含めることができる。



 では、 CREATIVE LAB FUKUOKAが挙げるファッションで、クリエイティブな項目とは何か。プレスリリースでは、「主要イベント」の第2項目に「福岡アジアコレクション(FACo)」とある。しかし、このファッションイベントのどこがクリエイティブなのだろうか。
 主催は「福岡アジアファッション拠点推進会議」と記載されているが、このプロデュースをしているのはRKB毎日放送というローカルテレビ局だ。そこがこのイベントを神戸コレクションを実施している大阪のイベント会社、アイグリッツに丸投げしているだけに過ぎない。
 アイグリッツは、タレントのブッキング、音響照明など神戸コレクションのフォーマットのままにタイトルと商品、地元モデル、会場設備を変えるぐらいだから、何のクリエイティブ能力も必要ない。業界で「FACoは神戸コレの地方巡業」と揶揄されているのが、何よりの証拠だ。

 地元からもメーカー、個人デザイナーがそれぞれ9ほど参加しているが、それ以外のNBが30ほどもあるのだから、もはや地元色などほとんど感じない。おまけに地元メーカーといっても、商品づくりは中国生産のSPAや売れ筋卸系がほとんどで、クリエイティブワークに力を入れているわけではない。
 唯一、個人デザイナーが自身のオリジナル作品を出展しているため、こちらはクリエイティブワークの産物になるだろう。ただ、彼らは作品づくりをすべて自費で行っていて、こちらに主催者側から資金が投下されるいるわけではないので、まったく本末転倒である。
 まあ、RKBのプロデューサーがやっていることは、イベントのスポンサー営業と行政へのおべんちゃら、そしてスタッフの弁当手配くらいだろうから、クリエイティブな仕事など微塵もないのは、はっきりしている。

 驚いたのはCREATIVE LAB FUKUOKAの主要イベントである「The Creators~POWERED BY CREATIVE LAB FUKUOKA」にも、RKB毎日放送が一枚噛んでいることだ。
 内容はデジタル技術を駆使した映像パフォーマンス、アーチストライブ、トークーショーなどとなっているが、いわゆる東京などから関連のタレントを呼んだイベントに過ぎない。つまり、FACoで味を占めたのか、FACoだけでは物足りないのか。またもや別の担当者が手前味噌の企画を打ち立てて、行政から公金をせしめようとしているのが垣間見えるのである。

 ローカルテレビ局は、最大の収入源であるスポットCMが頭打ちになっている。そのため、放送以外の「事業」収入の確保に活路を見出さなければならない。だが、民間のビジネスで早々に巨額なカネが動く事業なんて考えにくい。そこで、「公共事業」に触手を伸ばし始めたということだ。
 福岡アジアコレクションを主催する福岡アジアファッション拠点推進会議が事業を始めた2008年当時、RKB毎日放送には所管する福岡県と福岡商工会議所が初年度に約3,000万円、2年目、3年目にも2,000万円ほどの事業資金を拠出している。
 この資金は2年前から無くなり、福岡県や福岡市からの補助金だけになっているが、裏を返せば「いつまでもカネは出せんぞ。自分でスポンサーを捕まえるなり、お前のところでペイする事業モデルにしろ」なんてニュアンスが、上層部が行政と蜜月のRKB毎日放送にとって、事業をゲットするための交換条件だったとすればどうだろうか。あくまで推測の域を出ないが。

 しかし、福岡県や福岡商工会議所が出さなくなった資金を、今度は別の事業を立てて福岡市に肩代わりしてもらおうとRKB毎日放送が企てたとすれば、説明もつく。
 そのための大義、キーワードがファッションであり、今回の「クリエイティブ」なのだ。自社の事業を少しでも有利に進め、より収益を高めるには、公共事業化して少しでも公金を引っ張り出した方が手っ取り早い。それくらいは誰でも思いつく。
 もっとも、福岡アジアコレクションを始めとする一連の事業で、RKB毎日放送が培ったのはクリエイティビティなんかではない。誰の目から見てもわかる「浅知恵」ってことだけは、はっきりしている。
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする