HAKATA PARIS NEWYORK

いまのファッションを斬りまくる辛口コラム

2年目でお客の購買意欲をクールダウン。

2013-04-20 20:41:19 | Weblog
 JR九州が展開する駅ビル、アミュプラザ5店舗の2013年3月期の売上げが出揃った。これを見ると、小倉、長崎、鹿児島、そして博多デイトスが増収だったのに対し、「アミュプラザ博多」のみが前期比で2.1%の減収になっている。

 振り返れば2011年3月、九州新幹線鹿児島ルート開通に合わせて開業した「JR博多シティ」で、アミュプラザ博多は博多阪急と双璧をなす商業施設である。
 核テナントには東急ハンズを迎え、くうてんという飲食フロアや九州初進出のショップを充実させたことで、JR九州の唐池恒二社長は「九州各地はもとより、はてはアジア全域からお客を呼べる駅ビルだ」と豪語したほどだった。
 開業直後には東日本大震災が発生し、福島の原発事故も重なって、自粛ムードが広がり、海外からの旅行者の減少はあったものの、そんなことにはびくともせず開業景気は空前の売上げ、集客をもたらした。しかし、 それもたった1年で終わったのである。

 ただ、冷静に考えてみると、それは当たり前のことだ。 駅ビルを利用するのは通勤・通学、旅行、ビジネス出張のお客である。だから、メーンで売れるのは日用品やサービスといったデイリーユーズのカテゴリーか、旅行客が購入するお土産。あとはせっかく博多に来たのだから、地元料理を食べて帰ろうという食のニーズくらいだ。
 ファッションについては、遠くまで行かなくても同じものがあれば、駅利用のついでに買うくらいだろう。今はネット通販の時代である。いくらほしい商品があるといっても、新幹線に乗ってわざわざ買い物にいくとは考えにくい。

 アミュプラザ博多にしかないブランドなら、買いに行かないこともないだろうが、ここはヤング中心で、フラットなMDは否めない。九州初を80店以上、福岡初を数店揃えるが、とても集客力のあるテナントとは言い難い。人気ショップほど既存店があり、ネット購入も可能だ。
 所詮、九州の首都は天神である。地域1番店はここに集中し、レアなブランドも集まる。マーク・ジェイコブス、フラボア、コムデ・ギャルソンなどといったデザイナーズブランドは、天神でしか買えない。

 大阪では高級店、地域一番店として名が通っている阪急も、博多駅出店なると地域4番店にすぎない。どうしてもブランドリーシングでは、天神の後塵を拝してしまわざるを得ないのだ。
 であるからこそ、日頃から天神で買い物しているお客がわざわざ買いに行くとは考えられないのである。大型雑貨店の店長がハウスカード客の住所地を見て、「JR沿線の福岡市東区、県東部、南区に集中し、西部は少ない」と語っていたのが、それらを如実に物語る。
 西鉄電車の路線が天神まであることを考えても、県南部のフリー客を開拓するのは容易ではなかったということだ。

 結果として、初年度は開業景気に支えられただけで、2年目の反動減は起こるべくして起こったわけだ。ブームはやがて去り、終わるのである。
 新しいもの好きは消費者の大半に言えることだ。せっかくの大型商業施設だから、1度はチェックしておこうとなる。それで1年目の売上げは、目標比大幅アップという上ぶれになるが、ファッションをみると人気テナントの大半はアミュプラザ各店にリーシングされている。

 つまり、初年度はリアル店舗とショールームとして機能した。でも、2年目はそれらを学習しているだけに、近くのアミュプラザで十分いいということになる。それが他のアミュプラザ3店舗の売上げを押し上げた要因と言える。
 皮肉にもJR博多駅シティは2年目で、お客の購買意欲をクールダウンさせたということである。
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