HAKATA PARIS NEWYORK

いまのファッションを斬りまくる辛口コラム

エコファッション始動。

2020-08-19 06:33:42 | Weblog
 7月1日から全国の小売業で、レジ袋の有料化がスタートした。こうした活動がプラスチックゴミの削減にどれほど役立つのか。所管庁の小泉環境大臣は、「大してつながらないです」とあっさり認めた上で、以下のように続けた。(https://news.livedoor.com/article/detail/18707062/)

 「レジ袋有料化の目的は量ではないんです。900万tあるプラスチックゴミのうち、レジ袋が占める割合は2、3%程度です。もともと、レジ袋を使わなくなったとしても、削減できるプラスチックゴミの量は微々たるものだということをわかった上で始まっているんです」と、説明する。

 じゃあ、なぜ有料化したのかについては、

 「目的が違うんです。目的はレジ袋有料化をきっかけに、世界的な課題になっているプラスチックに問題意識を持ってもらうこと」と、答えるにとどめた。

 メディアは「ポリエチレンは石油精製時に必ず発生する副産物で、レジ袋を使わなくても産出されてしまう。マイバッグなどを使うと逆に石油の消費が増える可能性もある」と、有料化しても環境問題は解決しないと反論する。小泉大臣はそう言われるのは先刻ご承知だったようで、目的の真意をかざしてメディアの指摘をかわした。

 制度がスタートして間もないので、成果を論じるには早急すぎる。おそらく、これからもレジ袋を購入するお客は一定数いるだろう。また、マイバッグについては、各自の生活スタイルによって使用するかどうかが変わってくる。その温度差は簡単に埋められないと思う。結局は活動を通じて消費者に対して少しずつ意識づけしながら、エコバッグやマイバッグの定着、さらに商品包装の簡素化やゴミの削減に繋げていくしかないのである。


統一規格のエコバッグを作れないか

 このコラムは環境問題に深く与する場ではない。だから、ファッション業界として独自のエコバッグ・キャンペーンが展開できないかと思う。業界でキャンペーン向けのプロトタイプ(原型)を開発してはどうだろうか。市販のものに共通するのは、持ち手のついた手提げ式。まちがあるか、ないかくらいでバリエーションはない。
 いろんなイベントで、エコバッグらしきものが配られている。筆者もY-3福岡店のパーティ、繊研新聞主催の展示会PLUG IN、COS×東京アートブックフェア等々でいただいた。また、IKEAにあった大胆な柄のクッションカバーやアンナ・サランダーの綿生地で作ったリバーシブルのマイバッグもある。日々の買い物では購入品目に合わせ、これらをローテーションで使い分けている。




 仕事用のショルダーバッグには、パリ在住の知人がくれた「MONOPRIX/モノプリ」のエコバッグやセレクトショップが購入時に付けてくれる巾着袋を入れている。ファッションについてはショップでの購入が極端に減ったので、ショッパーも貯まらなくなった。もう7〜8年くらいそうした買い物スタイルを続けているため、レジ袋が有料化されても何ら困らない。でも、袋は物を入れるだけで、正直、デザインがどうのこうのという次元ではない。

 だから、多くの人にエコバックを使ってもらうには、ファッションスタイルとして仕掛けるのも一つの手だと思う。ニューヨーク時代に利用していたDEAN&DELUCAのエコバッグもそうではないか。せっかく持つならお洒落な方がいいし、レジ袋有料化を機にまた売れ始めたのはそうした理由もある。一方で、小学校に入学する児童がランドセルを選ぶのは慣習化した学童様式ではあるが、子供たちにとっては個性を主張するファッションとしても定着しているはずだ。でなければ、あんなカラーバリエーションは必要ない。

 ならば、エコバッグにもレギュレーションを持たせる一方、ファッションアイテムとして楽しめる要素を加えれば、子供から大人まで浸透して、少しは定着するのではないか。ノベルティとして無償で配布されるようなバッグは、端からローコストで製造されている。どうしても石油由来の素材が使われてしまうのだ。エコやSDGsを考える上では、コストをかけて有償にし、購入してもらうことが肝になる。
                                                         
 そこで、筆者が考えるのはこうだ。業界で形、素材、仕様、価格を統一し、あとはメーカーやブランドがフリースペースにプリントデザインを施す。ベースの袋は市販のSP用Tシャツの感覚だろうか。あくまで参加はフリーで、強制ではない。手提げ式のエコバッグは、まとめ買いすると重量が増し子供や女性には厳しい。そこでドローストリングの「ナップザック」型にして、少しでも負担を軽減する。休日や会社から帰宅途中の利用を啓蒙するのがポイントだ。

 サイズは子供、女性にもフィットするようにS、M、Lの3サイズを用意。子供向けは、お菓子や雑貨など、女性向けは日々の食材や飲料が入ればいい。男性向けはインスタント食品や惣菜、2ℓのペットボトルくらいか。もちろん、背負えることができ、買い物頻度に合わせタイなら、誰がどのサイズを使ってもいい。なるべく買い物を分散させることで、食品廃棄などを少なくし、ゴミを削減する意味合いもある。


ナノ素材を使って3DPで袋を作る

 素材は脱石油社会、プラスチック削減を睨み、リサイクル可能なものにする。エコバッグを持とうというキャンペーンのプロトタイプだ。廃棄される綿やウールのウエアを粉砕してナノファイバー化した原料を使い、3Dプリンターを利用して袋を製造してはどうか。せっかくなら新しいことに挑戦した方がいろんな面で活性化が図られるはず。すでに布用の3Dプリンターが開発されているので、実用性と普及を図る意味でも支援していけばいいのだ。



 素材イメージはフラノや縮絨のように目が詰まった感じがするので、質感、堅牢度とも十分だ。ハトメには金属を使い、再生を可能にする。紐は綿ロープなら袋本体との親和性もあり、絞りやすく緩みにくいと思う。買い物に使用するまでは、ショルダーバッグやブリーフケースに入れておけるように嵩張らなくするのがミソだ。

 デザインは背面外側のスペースに施し、プリントに使用する顔料は、なるべく天然由来のものを使用する。ロゴやキャラクターだけでなく、クリエイティブな写真などをプリントできるようにすれば、ファッション性がアップして人気が出ると思う。繊維屑が混じり合う素材は、無彩色になる。デザインスペースのプリントは映えるだろうが、型紙の段階で凹凸を加えておけば、ログマークや幾何学デザインを型押し風にできる。

 小学生はアニメのキャラクターなどを好むだろうし、若者はロゴマークや派手な柄のプリントでも抵抗はないと思う。ビジネスマンやワーキングウーマンが帰宅途中の買い物で使う場合、スーツの色合いに合わせると型押し風がいいかもしれない。まあ、自分の背中は自分では見えないが、周りの視線を考えると、ホワイトカラー向けには無色の型押しが無難か。ただ、遠目に見るとデザインが浮き出て見え、インパクトや訴求力があるという仕掛けだ。

 エコバッグの価格を低減させたり、気候変動対策に向けた資金を確保することまで考えると、デザインスペースを広告媒体にする手もある。ただ、これには露出の問題が関わるから一定の数量が必要で、制作点数を決めて広告主に買ってもらうことが前提になる。また、災害が多発していることを考えると、非常持ち出し袋としての二次利用も考えられる。

 まあ、基本はブランドメーカーが自社をアピールするデザインとし、自社商品の購入でも使用してもらえばショッパーを節約することもできるし、ゴミの削減にも繋がる。そうした活動を通じて業界が脱石油社会を目指す趣旨を徹底していけば、あとは自由でクリエイティビティなものでいいのではないか。素材を探して自分で試作品を作ってみよかと思っている。
コメント
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