毎年、繊研新聞が学生向けに実施するアンケートがある。その一つ、《学生のいま》アンケート㊥ ファッション業界の環境対応 「大量生産・大量廃棄」を問題視(https://b161.hm-f.jp/cc.php?t=M23727&c=42499&d=fc08)を取り上げる。
タイトルにある通り、学生はファッション業界の大量生産、大量廃棄を問題視しているようだ。最近では、小学校から授業で環境問題を学んでいる。中学校、高校では問題の本質や対処法にまで踏み込んでいく。さらに大学や専門学校に入ると環境・人権面についても学ぶことから、自分の考えをしっかり持ちサークル活動などを通じて課題解決に取り組む学生もいる。繊研新聞もアンケートでは、その辺の意見をしっかりと掘り起こしている。アンケートの質問と回答例は以下になる。
Q:「ファッション業界も環境に配慮すべきだと思うか」
A:「強くそう思う」「どちらかと言えばそう思う」 約86%
Q:「ファッション業界で問題だと思うこと」」
A:「大量生産・大量廃棄」 33件
A:「労働環境などの人権問題」 27件
A:「トレンドの短サイクル化による廃棄衣料の増加」 19件
A:「水の使用量」 17件
A:「二酸化炭素の排出量」14件
A:「マイクロプラスチックなど海洋汚染」 14件
個別の意見ではこんなものもあった。
「何年も前からファッション業界の環境問題は注目されていたにもかかわらず、いまだに解決されていないのが本当に悔しい」「格安ECサイトを利用する人が多く、服が消耗品のような扱いになっている」「今一度、現在のファッション業界が抱える環境問題について考え直す必要がある」(立教大生)
日本ではバブルが崩壊した後、「安い」アパレルが消費の主流になり、ファストファッションが流入すると、各社が競い合うように格安商品を投入した。そこでは価格、コストパフォーマンスのみが価値となり、背景にあるコストダウン、労働問題、環境負荷がなおざりにされた感は否めない。ところが、今は安い商品が市場に溢れすぎ、若者の関心も薄れている。並行して世界中でSDGsへの意識が高まり、アパレルの大量生産、大量廃棄が問題提起されるようになったことで、若者の意識も変わってきたと思われる。
別の大学生からは、日本の環境問題に対する姿勢の遅れを指摘する意見も出された。
「フランスなど欧州では法規制も強化され企業の意識も高いが、日本はまだまだ進んでおらず、企業の自主的な取り組みにとどまっており、さらなる進展とグリーンウォッシュへの対策が必要」「リサイクルを盛んにすべき」「企業内で完結できる循環システムが必要」「大量生産をやめる」「廃棄する梱包(こんぽう)材やハンガーなどを減らす」(ICU生)
確かに日本は海外に比べると、環境問題への国家ぐるみでの取り組みが緒についたとは言い難い。そこで、経済産業省は対応策を盛り込んだ報告書を近く発表するようで、柱の一つは衣料品のリサイクルになる。廃棄された衣料品の繊維を新たな繊維に再生する際の規格について、合成繊維、天然繊維で質量に対するリサイクル材料の割合や算出・表示方法を決定する。ようやくお上が腰を上げた感じだが、これから浸透していくのを待つしかない。
また、グリーンウォッシュも消費者は企業の取り組みをメディアを通して知るが、それがごまかしや上辺だけかどうかを判断する術を持たない。企業が発信する情報には透明性があるのか、一貫した情報を発信しているかなど、第三者機関がきちんと見極め、消費者はそうした客観的な評価に目を向けていくことが大切だ。こんなことが言える。某グローバルSPAの売場を見ると、山のような在庫が積み上げられている。これがワンシーズンで全て消化できるとは思えない。小学生でもイメージできることだ。
だから、経営者が声高に情報小売業だの、適時・適正の在庫投入だのと叫んだところで、じゃあ、「期末の在庫消化はどうなのよ」と突っ込んでみたくなる。大量廃棄を抑えるには、生産から調整していくべきで、売れ残ったものをいかにリサイクルするかは、生産する企業ごとで考えなければならない。フランスのようにルールを侵した企業にペナリティが与えられることも、深刻に受け止めるべきではないかと思う。だから、そうした取り組みについて、きちんと情報開示していない企業が言うグリーンウォッシュは疑った方がいいかもしれない。
大量生産、大量廃棄の背景にメスを入れないと
欧州連合(EU)では、ナイロンは20%、ポリエステルは50%以上使えばリサイクル繊維を使っているという表示が可能になった。ユーロブランドの通販サイトを見ても、リサイクル繊維の表示をよく見かける。日本でも、2026年度にも日本産業規格(JIS)を策定し、27年には国際標準化機構(ISO)への提案を目指すという。規格に強制力はないが、環境に配慮した製品の流通拡大につなげる考えからだ。
ただ、新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)によると、新しく繊維製品へとリサイクルされる割合は、世界全体でも1%未満とされる。日本ではさらに低いと考えられる。繊研新聞のアンケートで若者が意見を発したことを見ると、若者の意識の方が高いかもしれない。まあ、自活しているわけではないので、勤労者と環境意識の温度差があるのは仕方ない。「働くようになったら、変わってくるよ」と言ってしまえばそれまでだが、大量生産、大量廃棄のままでは業界の未来は先が見えているのも事実。生産者、流通事業者、消費者の全てが環境問題を意識するのは決して間違いではない。
2024年3月、政府は外国人材が最長5年まで就労できる「特定技能1号」の対象に繊維業を加えた。これによりアパレルの縫製工場などは、外国人材を特定技能1号の対象としてが受け入れることになる。経産省は「国際的な人権基準に適合しているか」や、「勤怠管理の電子化」「月給の給与制度」などを追加要件として求める。また、国際的な人権基準への適合は第三者による認証・監査で確かめる。経産省は強制労働や児童労働、安全衛生など9分野84項目の監査要求事項を定めて、第三者監査を実施する方向という。
つまり、これまでアパレル工場で働く外国人は、コストダウンを図るためでしかなかった面は否めない。表には出てこないが、過酷な労働環境で働いていた外国人も多いと思う。逆にもっと好条件の働き口が見つかれば平気で移っていくものもいたようで、不法就労や不法滞在などの温床になっていたこともあるだろう。それもコストを下げて「安い」商品を作るため、また川下の小売業者が少しでも利益を上げるために納入掛け率を下げさせたことも要因だ。
最近は為替が円安傾向にあるため、国内生産に回帰している面はある。だが、販売価格が上がらなければ、国内工場も低価格商品の製造を余儀なくされ、抜本的な改革には結びつかない。川下の小売業が低価格商品の販売、納入掛け率の切り下げを要求する限り、川上の糸、繊維の製造や川中のアパレルメーカー、卸にしわ寄せが行き、コストダウンのために苦肉の策を取らざるを得なくなる。とどのつまりが大量生産による大量廃棄なのだ。
しかも、労働問題は移民問題とも連結する。EUでは移民を排斥する極右政権が誕生する国もある。アパレル工場が移民で成り立っているとは言えないが、日本の場合は外国人労働者を雇用しているところもあり、やがて移民問題は避けて通れなくなる。そのためにも日本人、外国人を問わず適正な賃金を支払うことで、彼らのモチベーションも上げて行くことも必要だ。労働環境を整備するにも工賃のアップは不可欠であり、川上や川中の価格体系の改善にも踏み込んでいかなければならない。
消費者も使い捨ての商品ばかりを購入していては、商品本来の価値を見出せるはずもない。まずはコストをかけて価格対価値をしっかり際立たせた商品を生み出すこと。それには川上の糸、繊維作りにも目を向けること。産地の環境を守り、確かな技術の元、質のいいものが生まれるには適正な利益配分が不可欠だとの啓蒙だ。以前、中国の新疆(しんきょう)ウイグル自治区で、繊維業での強制労働が問題になった。米欧のアパレル企業は20年以降に同地区の工場と取引を停止するなどして、人権問題を重視した経営にシフトしている。
2021年1月、ユニクロも同社が製造販売する綿シャツが米国ロサンゼルス港で米国税関によって差し止められ、米国へ輸入できない状態になった。 理由は、生産の一部、あるいは全てにおいて強制労働が問題視される新疆ウイグル自治区が関わっているのではないかと、疑われたからだ。同社は即刻全面否定したが、商社が提出した書類しかチェックしていないわけで、信憑性は藪の中と言えなくもない。やはり第三者機関によるチェックやブロックチェーン化を広く浸透していくことがカギになるが、企業側の努力も必要になる。
廃棄衣料の繊維をリサイクルすることについては先日、大阪大学の研究チームが電子レンジのマイクロ波で綿とポリエステルが混ざった繊維を分離して再生する技術を開発したとの報道があった。原理は混紡繊維とアルコールの一種であるエチレングリコール、触媒を混ぜてマイクロ波で数分加熱するだけと至って単純だ。ポリエステルだけがエチレングリコール中に溶け出し、残った綿は回収してそのまま再利用できる。溶液を結晶化すればポリエステルの原料も取り出せる。
廃棄衣料の運搬やプラントの建設などコストが課題だが、SDGs(持続可能な開発目標)の浸透で、資源を大量廃棄するアパレルには厳しい目が向けられ、価格が高騰する資源を再利用することにも注目が集まる。大阪大学だけでなく、全国の大学でも同様の研究は行われているだろうし、再生繊維を使ったクリエーション作りになると今度は専門学校生の出番になる。単に安いものを作るだけがビジネスではないことを多くが認識する日も近いだろう。
まずは、売れ残り商品から中古衣料までを再利用する取り組みがもっと必要だ。量販店はもとより専門店でも衣料品を回収し、集めた古着を仕分けして古着店に卸したり、リサイクルに回すフローを業界全体、全国レベルで行っていく必要がある。大学生や専門学校生が業界と一緒になってリサイクル活動に取り組めば、川上や川中を知ることができる。そして、業者への圧力や人権問題を知ることに繋がり、業界に対する違った知見をもつこともできる。単に作る、売るだけではない、新しい仕事を作り出す人材になってくれるかもしれない。そんな若者の業界進出に期待したい。
タイトルにある通り、学生はファッション業界の大量生産、大量廃棄を問題視しているようだ。最近では、小学校から授業で環境問題を学んでいる。中学校、高校では問題の本質や対処法にまで踏み込んでいく。さらに大学や専門学校に入ると環境・人権面についても学ぶことから、自分の考えをしっかり持ちサークル活動などを通じて課題解決に取り組む学生もいる。繊研新聞もアンケートでは、その辺の意見をしっかりと掘り起こしている。アンケートの質問と回答例は以下になる。
Q:「ファッション業界も環境に配慮すべきだと思うか」
A:「強くそう思う」「どちらかと言えばそう思う」 約86%
Q:「ファッション業界で問題だと思うこと」」
A:「大量生産・大量廃棄」 33件
A:「労働環境などの人権問題」 27件
A:「トレンドの短サイクル化による廃棄衣料の増加」 19件
A:「水の使用量」 17件
A:「二酸化炭素の排出量」14件
A:「マイクロプラスチックなど海洋汚染」 14件
個別の意見ではこんなものもあった。
「何年も前からファッション業界の環境問題は注目されていたにもかかわらず、いまだに解決されていないのが本当に悔しい」「格安ECサイトを利用する人が多く、服が消耗品のような扱いになっている」「今一度、現在のファッション業界が抱える環境問題について考え直す必要がある」(立教大生)
日本ではバブルが崩壊した後、「安い」アパレルが消費の主流になり、ファストファッションが流入すると、各社が競い合うように格安商品を投入した。そこでは価格、コストパフォーマンスのみが価値となり、背景にあるコストダウン、労働問題、環境負荷がなおざりにされた感は否めない。ところが、今は安い商品が市場に溢れすぎ、若者の関心も薄れている。並行して世界中でSDGsへの意識が高まり、アパレルの大量生産、大量廃棄が問題提起されるようになったことで、若者の意識も変わってきたと思われる。
別の大学生からは、日本の環境問題に対する姿勢の遅れを指摘する意見も出された。
「フランスなど欧州では法規制も強化され企業の意識も高いが、日本はまだまだ進んでおらず、企業の自主的な取り組みにとどまっており、さらなる進展とグリーンウォッシュへの対策が必要」「リサイクルを盛んにすべき」「企業内で完結できる循環システムが必要」「大量生産をやめる」「廃棄する梱包(こんぽう)材やハンガーなどを減らす」(ICU生)
確かに日本は海外に比べると、環境問題への国家ぐるみでの取り組みが緒についたとは言い難い。そこで、経済産業省は対応策を盛り込んだ報告書を近く発表するようで、柱の一つは衣料品のリサイクルになる。廃棄された衣料品の繊維を新たな繊維に再生する際の規格について、合成繊維、天然繊維で質量に対するリサイクル材料の割合や算出・表示方法を決定する。ようやくお上が腰を上げた感じだが、これから浸透していくのを待つしかない。
また、グリーンウォッシュも消費者は企業の取り組みをメディアを通して知るが、それがごまかしや上辺だけかどうかを判断する術を持たない。企業が発信する情報には透明性があるのか、一貫した情報を発信しているかなど、第三者機関がきちんと見極め、消費者はそうした客観的な評価に目を向けていくことが大切だ。こんなことが言える。某グローバルSPAの売場を見ると、山のような在庫が積み上げられている。これがワンシーズンで全て消化できるとは思えない。小学生でもイメージできることだ。
だから、経営者が声高に情報小売業だの、適時・適正の在庫投入だのと叫んだところで、じゃあ、「期末の在庫消化はどうなのよ」と突っ込んでみたくなる。大量廃棄を抑えるには、生産から調整していくべきで、売れ残ったものをいかにリサイクルするかは、生産する企業ごとで考えなければならない。フランスのようにルールを侵した企業にペナリティが与えられることも、深刻に受け止めるべきではないかと思う。だから、そうした取り組みについて、きちんと情報開示していない企業が言うグリーンウォッシュは疑った方がいいかもしれない。
大量生産、大量廃棄の背景にメスを入れないと
欧州連合(EU)では、ナイロンは20%、ポリエステルは50%以上使えばリサイクル繊維を使っているという表示が可能になった。ユーロブランドの通販サイトを見ても、リサイクル繊維の表示をよく見かける。日本でも、2026年度にも日本産業規格(JIS)を策定し、27年には国際標準化機構(ISO)への提案を目指すという。規格に強制力はないが、環境に配慮した製品の流通拡大につなげる考えからだ。
ただ、新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)によると、新しく繊維製品へとリサイクルされる割合は、世界全体でも1%未満とされる。日本ではさらに低いと考えられる。繊研新聞のアンケートで若者が意見を発したことを見ると、若者の意識の方が高いかもしれない。まあ、自活しているわけではないので、勤労者と環境意識の温度差があるのは仕方ない。「働くようになったら、変わってくるよ」と言ってしまえばそれまでだが、大量生産、大量廃棄のままでは業界の未来は先が見えているのも事実。生産者、流通事業者、消費者の全てが環境問題を意識するのは決して間違いではない。
2024年3月、政府は外国人材が最長5年まで就労できる「特定技能1号」の対象に繊維業を加えた。これによりアパレルの縫製工場などは、外国人材を特定技能1号の対象としてが受け入れることになる。経産省は「国際的な人権基準に適合しているか」や、「勤怠管理の電子化」「月給の給与制度」などを追加要件として求める。また、国際的な人権基準への適合は第三者による認証・監査で確かめる。経産省は強制労働や児童労働、安全衛生など9分野84項目の監査要求事項を定めて、第三者監査を実施する方向という。
つまり、これまでアパレル工場で働く外国人は、コストダウンを図るためでしかなかった面は否めない。表には出てこないが、過酷な労働環境で働いていた外国人も多いと思う。逆にもっと好条件の働き口が見つかれば平気で移っていくものもいたようで、不法就労や不法滞在などの温床になっていたこともあるだろう。それもコストを下げて「安い」商品を作るため、また川下の小売業者が少しでも利益を上げるために納入掛け率を下げさせたことも要因だ。
最近は為替が円安傾向にあるため、国内生産に回帰している面はある。だが、販売価格が上がらなければ、国内工場も低価格商品の製造を余儀なくされ、抜本的な改革には結びつかない。川下の小売業が低価格商品の販売、納入掛け率の切り下げを要求する限り、川上の糸、繊維の製造や川中のアパレルメーカー、卸にしわ寄せが行き、コストダウンのために苦肉の策を取らざるを得なくなる。とどのつまりが大量生産による大量廃棄なのだ。
しかも、労働問題は移民問題とも連結する。EUでは移民を排斥する極右政権が誕生する国もある。アパレル工場が移民で成り立っているとは言えないが、日本の場合は外国人労働者を雇用しているところもあり、やがて移民問題は避けて通れなくなる。そのためにも日本人、外国人を問わず適正な賃金を支払うことで、彼らのモチベーションも上げて行くことも必要だ。労働環境を整備するにも工賃のアップは不可欠であり、川上や川中の価格体系の改善にも踏み込んでいかなければならない。
消費者も使い捨ての商品ばかりを購入していては、商品本来の価値を見出せるはずもない。まずはコストをかけて価格対価値をしっかり際立たせた商品を生み出すこと。それには川上の糸、繊維作りにも目を向けること。産地の環境を守り、確かな技術の元、質のいいものが生まれるには適正な利益配分が不可欠だとの啓蒙だ。以前、中国の新疆(しんきょう)ウイグル自治区で、繊維業での強制労働が問題になった。米欧のアパレル企業は20年以降に同地区の工場と取引を停止するなどして、人権問題を重視した経営にシフトしている。
2021年1月、ユニクロも同社が製造販売する綿シャツが米国ロサンゼルス港で米国税関によって差し止められ、米国へ輸入できない状態になった。 理由は、生産の一部、あるいは全てにおいて強制労働が問題視される新疆ウイグル自治区が関わっているのではないかと、疑われたからだ。同社は即刻全面否定したが、商社が提出した書類しかチェックしていないわけで、信憑性は藪の中と言えなくもない。やはり第三者機関によるチェックやブロックチェーン化を広く浸透していくことがカギになるが、企業側の努力も必要になる。
廃棄衣料の繊維をリサイクルすることについては先日、大阪大学の研究チームが電子レンジのマイクロ波で綿とポリエステルが混ざった繊維を分離して再生する技術を開発したとの報道があった。原理は混紡繊維とアルコールの一種であるエチレングリコール、触媒を混ぜてマイクロ波で数分加熱するだけと至って単純だ。ポリエステルだけがエチレングリコール中に溶け出し、残った綿は回収してそのまま再利用できる。溶液を結晶化すればポリエステルの原料も取り出せる。
廃棄衣料の運搬やプラントの建設などコストが課題だが、SDGs(持続可能な開発目標)の浸透で、資源を大量廃棄するアパレルには厳しい目が向けられ、価格が高騰する資源を再利用することにも注目が集まる。大阪大学だけでなく、全国の大学でも同様の研究は行われているだろうし、再生繊維を使ったクリエーション作りになると今度は専門学校生の出番になる。単に安いものを作るだけがビジネスではないことを多くが認識する日も近いだろう。
まずは、売れ残り商品から中古衣料までを再利用する取り組みがもっと必要だ。量販店はもとより専門店でも衣料品を回収し、集めた古着を仕分けして古着店に卸したり、リサイクルに回すフローを業界全体、全国レベルで行っていく必要がある。大学生や専門学校生が業界と一緒になってリサイクル活動に取り組めば、川上や川中を知ることができる。そして、業者への圧力や人権問題を知ることに繋がり、業界に対する違った知見をもつこともできる。単に作る、売るだけではない、新しい仕事を作り出す人材になってくれるかもしれない。そんな若者の業界進出に期待したい。