HAKATA PARIS NEWYORK

いまのファッションを斬りまくる辛口コラム

紐付きでいいこと。

2018-10-03 04:29:43 | Weblog
 レザーが似合う季節になった。と言っても、今回は小物の話である。アイテムはベルト、長財布、二つ折りウォレット、キーホルダー、マネークリップなどだ。スマホ用のケースやポーチも登場している。

 最近は国産回帰の流れから、栃木産地の革を利用して職人が作るなど、手作りの良さを打ち出しブランド化する動きもある。一方、他ジャンルのデザイン思想をインスパイアしたものもローンチ。スポーツカーや高速列車のデザイナーが革小物を創ると、こんなにもエアロダイナミズムになると言わんばかりだ。

 ところで、革小物はとかくブランドや材質が注目されるが、財布やウォレットには現金やカードを入れるし、キーホルダーには鍵を付ける。それらは日々の生活に必要なものだから、盗難や紛失は避けなければならない。そこで使い勝手の良さや防犯対策も条件になる。生活のすべてをスマホ管理にしていると、落とした弾みで故障すると、自宅に入ることもホテルに泊まることもできなくなる。だから、お財布スマホでは防犯のみならず、落下や衝撃への対策も欠かせないのだ。

 振り返ると、初めてジップ付きのウォレットを持った時、ジャケットの内ポケットに入れたものを脱いだ間に落としたことがある。ポケットのボタンを留めるのを忘れていたのだ。幸い、電車高架の草むら近くで、すぐ後を通った電力会社のサラリーマンが拾ってくれ、最寄りの交番に届けてくれた。行きつけのバプレストランに寄った帰りで、現金はさほど入ってなかったが、会社のID、免許証、クレジットカードを紛失すれば、たいへんなことになるところだった。

 以来、落とさないで済む財布を探した。そんな時、たまたま出かけた池袋パルコで見つけたのが吉田カバンが製造する「LUGGAGE LABEL」のウォレットだった。マット系のファブリック製でカードがたくさん入り、ロウ引きの丈夫な紐が付いていた。バネ付きの留め具で紐の長さが調整でき、首にかけたり、ベルト通しにつなげておけば、落とさなくて済む。パラシュート素材のPORTERは好きになれなかったが、このウォレットはテカテカ光らないので気に入った。

 ちょうど、この頃からニューヨークを頻繁に訪れ、長期滞在する年もあった。マンハッタンではひったくりが横行しているので、日本大使館から「バッグや財布を盗られないように注意してほしい」とのお達しがあった。当時、地下鉄には「トークン」を買わないと乗れず、ブースで財布を出すときが要注意だった。横からひょいっと持って行かれることが無きにしも有らずだったからだ。

 その後も、このウォレットは古くなる度に同じ物に買い替えてきた。初めて買った時から20数年が経つが、ついに数年前に生産中止となったと、天神地下街の「KURACHIKA」で知らされた。ほぼ同じ形状、機能をもつものをPORTERが引き継いで発売していた。こちらは紐や留め具は付いておらず、価格は1000円ほどアップしていたが、機能と素材がほぼ同じなので即決した。

 同じ綿の紐は資材メーカーからひと巻きを購入しなければならないので、ABCマートにあったシューレースをカットして代用した。ロックは以前のものが使えるし、ユザワヤや東急ハンズには他のデザインも販売されている。じゃあ、革のウォレットが全く必要ないかと言えば、そんなことはない。冠婚葬祭などでスーツを着る時には、さすがにファブリックで紐付きの財布とは行かないからだ。

 また、最近のカジュアルなジャケットはコストダウンからか、それとも膨れて見えないようにするためか、始めから内ポケットが無いものも少なくない。そんな時はウォレットをブリーフケースやショルダーバッグに入れないと仕方ないので、レザーだろうとファブリックだろうと紐付きが重宝する。

 ZOZOTOWNを見ると、Dカンがついて紐が付けられる革のウォレットが並んでいるが、どれもデザインが今イチだ。そこで以前に購入していたジップウォレットに、自分でDカンを取り付け、革のストラップをつなげようと考えた。余った革を紐状にカットしてDカンを通し、ロウ引きの糸で縫い合わせる。それを財布に取り付けるのだが、いちばん楽な方法はカシメで固定すること。次が糸で縫い付ける方法である。

 しかし、どうしても財布に加工の後が残ってしまう。そこで財布にキズを付けずにDカンを取り付け、革紐のストラップをつないでも抜けない方法を何とか考え出した。



 ストラップ用の革紐は東急ハンズでイタリアンレザーの紐(1m 600円)を調達し、裏とコバにトコフィニッシュを塗って仕上げ加工した。Dカンとつなぐカン、紐の輪っかを通す金属パーツはユザワヤで見つけたナスカン(238円)、紐の固定には東急ハンズで購入したツメ付け留め金具(4個120円)を使用した。 紐がナスカンと接する部分のみ、手持ちの別革を内張りして補強。紐の末端はニッケル製のバネ付き「二つ穴留め具」(1個240円)で始末し、革のストラップを作り上げた。

 これなら、PORTERのウォレット同様に首にかけることもできるし、ベルト通しに付けても十分内ポケットに入る。バッグのストラップに紐を付ければ取り出しやすいし、盗難防止にもなる。スーツやきちんとしたジャケットスタイルには革のウォレットの方が似合うから、どうしても持ちたくなる。さすがにPORTERのひも付きでは、TPOもあったもんじゃない。こ洒落たレストランやシティホテルでもチェックを済ませる時も、さっと財布をストラップから外せば、スマートに支払いができる。

 ZOZOTOWNがオーダースーツに参入したことで、メディアでは注目の的になっている。ただ、ほとんどのオーダーがお客の体型に合ったものを作り上げると言うばかりで、ビジネス向けの機能を施した仕様はない。昭和の高度成長期以前はスーツと言えば、ほとんどが「誂え」だった。ビジネス紳士は懐中時計をベストのポケットに入れ、チェーンやストラップの端を輪っかにしてボタンに留めたり、棒を付けてボタンホールに指したりしていた。小粋なお洒落と同時に貴重な時計を落とさない工夫がなされていたのである。



 ウォレットはともかく、スマホは手から滑り落ちても地面に落下しなければいいのだ。その点、スマホはポシェットに入れて、首から下げ内ポケットに隠すこともできるが、ウォレットはストラップを付けてベルトやベルト通しに付けると、ニットを着た時にどうしてもストラップ部分がめくれあがってしまう。カジュアルスタイルならごまかしも効くが、やはりジャケットが膨れるのは避けたいところ。 ならば、ストラップをどこかに留められるような仕様がオーダージャケットにはあってもいいのではないかと思う。

 ファッション小物の代表格で、ブランドアイテムの主力になる財布類はネット通販にとって格好の商材だ。ヤフーではセールスランキングを公開し、3000円程度のものが売れ筋になっている。写真を加工して革の光沢を出すことで高級品っぽく見せているものもあるが、「皮革製品」との表示を突き詰めると「合成」でも間違いではない。お客が現物を見ないのを良いことに、革製品では衣料品以上に紛い物が横行しているとみられる。

 一方、革産地の本革を使い、職人が手作りしたものも、販路拡大のためにネット通販を活用している。もちろん、ブランドや信頼性を担保するために並行して実店舗を出店するところもある。プロモーションを兼ねて店頭に工業用ミシンを起き、その場で「注文を受け、加工もしますよ」というイメージを訴求しているが、それならストラップを付けるためのDカンを取り付けてくれるようなオプションがあってもいいような気がする。

 このコラムを書いている今は10月3日水曜日、午前5時前。この後、7時40分福岡空港発の飛行機で東京出張に経つ。羽田空港から都心にアクセスするモノレールや京浜急行の改札でもキャリーケースを引っ張りながら、バッグから片手でウォレットを取り出し、電鉄系のICカードを入れたまま、スムーズなタッチができる。もちろん、雑踏でスリやひったくりを心配する必要もないし、海外出張にも安心して出かけられる。

 うちの事務所から地下街を抜け、地下鉄天神駅から福岡空港まで30分もかからない。余裕で東京にも海外にも飛び立てる。手作りレザーストラップが旅に安心をプラスしてくれる。紐付きでもいいことはある。

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