文明のターンテーブルThe Turntable of Civilization

日本の時間、世界の時間。
The time of Japan, the time of the world

以降、世界中の金融関係者は、ダボス行きと同じ熱心さでこの会議に参加するようになった

2011年07月10日 21時30分26秒 | 日記
弊社専務が、読書の頃合いを見計らったかのように、2冊の本を持って来てくれた。

「小津安二郎の反映画」吉田喜重、と、支配者たちの秘密の世界「中国共産党」リチャード・マクレガー

両方を同時進行で読みだしたのだが…それ位、どちらも読ませる本だった訳である。

芥川は、この章では、後者の本で、その書き出しからして既に、読者の方々に、伝えたいことが在った。

私達の国は、20年超…実際は30年超、「政治とカネ」等と言う、内向きの虚構ゲームをやり続けて来て、世界からpssssingされかかっていた訳ですが、

同じ頃に、貧困からの脱却を始めだした中国は、一気に世界の工場としての姿を現し出した2001年、ダボス会議に倣った国際会議を開いた。

以降、世界中の金融関係者は、ダボス行きと同じ熱心さでこの会議に参加するようになった」本文より。

つまり、中国の市場としての大きさに目を向けた訳である。

世界第二の超経済大国となった我が国が、内向きの縮こまりゲームを続け出していた事も拍車をかけただろう。

そうして、私達の政治とマスコミの、愚かしさの結果としての…今の、阿呆に、引っ掻き廻されている間に!

もし、あのような者が市民運動家だ等と言うのなら…。

2011年07月10日 20時47分49秒 | 日記
今、マスコミは、今こそ挙げるべきである…平成4年の大合唱すら挙げず、史上最低の阿呆を、市民運動家に戻った、だなどとの、戯(たわ)けを並べ立てている。

もし、あのような者が市民運動家だ等と言うのなら、そんな者には遇いたくもない、そんな名前など、聞きたくもないと、今、日本の、殆どの国民は思っているはずだ。

「白鯨」メルビル著 大傑作も出版当時理解されず…朝日新聞7月10日16面より

2011年07月10日 16時15分16秒 | 日記
池澤 夏樹さんと読む「白鯨」

後にも先にもない「前衛」小説  近藤康太郎 


…前略。

実際に捕鯨船に乗っていたメルビルには、鯨を捕るという能力に対する尊敬・畏敬がある。別に白人が一番、銛撃ちでうまいわけではない。捕鯨船は徹底した実力主義。そんなアメリカ的、多民族的な船の空気、海に向かって開かれた精神が、メルビルは好きだったんでしょうね」 (池澤さん)

…中略。

 「物語の中に百科事典が入り込む構成。前衛と言っていい手法。こんな小説は後にも先にもない」と池澤さんは語る。

…後略。

日経新聞7月10日23面 読書欄②

2011年07月10日 16時00分50秒 | 日記
ル・コルビュジエは生きている  南 明日香著

著者によるとフランスは20世紀の建築の保存にさほど熱心でなかったという。世界遺産への登録をめざすル・コルビュジエの建築や都市計画を例に、保存・活用への取り組みをルポしたのが本書だ。

大統領官邸まで見学できる建築遺産の日を設けたり、高校生に集合住宅の実物大模型を作らせたりーー。景観論争をあえてオープンな議論とするなどフランスらしい工夫は日本の近代建築にとっても参考になる。
(王国社・1900円)


再発  田中秀一著

がんという病の恐ろしさは「再発」「転移」の可能性かあることだろう。の再発の予防や治療の最前線について、平易な言葉で解説したのが本書だ。著者は長く医療を取材してきた新聞記者。

肺がん、乳がん、大腸がんなど部位別に項を立ててそれぞれの治療薬を紹介し、最近は延命にも効果かおるとされる緩和ケアについても詳説する。有名無名を問わず、多くの治療体験談が盛り込まれる。がん治療の「入門書」として、とても親切に作られている。
(東京書籍・1300円)


 文庫・新書

■『手業に学べ 心』 『手業に学べ 技』塩野米松著 

漆掻き、炭焼き、船大工、檜皮葺き…先代から受け継いだ技と心で自然の恵みを生活に役立ててきた手仕事の匠たち、全30人の生の声をまとめた本。素材選び、道具立て、作業工程など細部に裏付けられた素朴だが誇り高い人生の記録には、良質の小説を読むのに似た味わいがある。
(ちくま文庫・各950円)


■『強毒型インフルエンザ』岡田晴恵著 

大きな災害をもたらす可能性がある新型インフルエンザ。日本でも近年、各地で鳥インフルエンザが発生している。
本書は、人に感染する強毒型がいつ出てもおかしくないと警鐘を鳴らす。震災対応に追われるなか、ウイルスの性質や感染の現状、予防法を解説し、感染症への関心を呼び戻す一冊だ。
(PHP新書・720円)

日経新聞7月10日23面 読書欄①

2011年07月10日 15時55分53秒 | 日記
ドラッカーが『マネジメント』でいちばん伝えたかったこと。  小宮 一慶著

「もしドラ」ブームをきっかけに、ドラッカーが社会現象になったのは記憶に新しい。ドラッカーの思想に触れてみようという気を起こさせた点で功績があったのは確かだが、実際に彼の経営学の著作や解説書を読んだら、ちんぶんかんぶんだったという読者も多いのではないか。

本書はそうした読者を対象にした補習用のテキストである。彼の抽象的な言葉でも読者に無理なく伝わるよう、ビジネスの実践場面をひきながら解説している。
(ダイヤモンド社・1500円)


情報社会のいま  公文俊平著

ツイッターなどソーシャルメディアが若者に人気だが、本書は情報社会学の大家がそうした若い世代に向け今日の情報社会を論じた本だ。「S字波」と呼ぶ独自の分析手法を用い、過去の産業革命や軍事革命などとの比較から、現在進行中の情報革命を位置付けた。

表題の「智民」は近代社会の「市民」の次に登場した、ネットワークで結ばれた新しい人々を指す。高校生にもわかるように書かかれており、若者に読んでほしい本だ。
(NTT出版・2400円)


中国ビジネス超入門  平沢健一著

中国で企業経営を経験した著者による極めて実践的なビジネス入門書。法務や税務など制度的な最新事情に加え、本書を特徴付けているのは、中国人との人間関係に多くのページを割いていることだ。

中国人が日本人上司に抱く不満や、好かれる日本人のタイプといった気になるテーマを現場の視点から書いている。
宴会での円卓の座席表、冠婚葬祭での注意事項、相手の面子を潰さないためのコツなど、赴任先や交渉で生き抜くための具体的な手法が満載だ。
(産業能率大学出版部・1600円)

「昭和天皇とワシントンを結んだ男」青木冨貴子著…日経新聞7月10日23面より

2011年07月10日 15時37分52秒 | 日記
占領期の政治的役割浮き彫りに

青木 冨貴子 48年生まれ。フリージャーナリスト。「ニューズウィーク日本版」元ニューヨーク支局長。著書に『目撃 アメリカ崩壊』

明治学院大学教授 原 武史   文中黒字化は芥川。

今年は、すでに出た著作、これから出る著作を含めて、昭和天皇に関する本の「当たり年」になりそうだ。だが、この天皇の歴史的評価は、戦中期はもちろん、占領期でもまだ定まっていない。

占領期の昭和天皇が、日本国憲法の定める象徴ではなく、政治的主体として行動したことは明らかである。例えば天皇は、米軍による沖縄の半永久的な軍事占領を勧めるメッセージをマッカーサーに送っていた。

国際情勢のなかで日本の共産化を防ぐため、政府を飛び越えてマッカーサーと直接やりとりしようとしたわけだ。しかし、本書によれば、昭和天皇は必ずしもマッカーサーを信用していたわけではなかった。

いやむしろ、日本本土に米軍基地を置くことに反対し、「日本はアジアのスイスたれ」と説くマッカーサーや、彼に追随する吉田茂に対抗して、米軍の駐留を主張すべく、ワシントンのダレスとつながる非公式のチャンネルをつくっていた。

その窓口となっていたのは、日本側が天皇の側近、松平康昌であり、米国側が「ニューズウィーク」東京支局長のコンプトン・パケナムであった。

本書は、著者自身が発見したパケナムの日記をもとに、このチャンネルが占領期の日本でいかに大きな政治的役割を果たしたかを浮き彫りにする。そして、マッカーサーによって一度は再入国禁止の憂き目にあったパケナムが、一九五一年にマッカーサーが更迭されることで、「高らかな勝利」をおさめたとする。

 鮮やかな分析である。昭和天皇に関しては、前述の沖縄メッセージといい、二〇〇六年に発見された「富田メモ」といい、一つの史料が天皇自身の歴史的評価を大きく変える場合が少なくなかった。

本書もまた、米国在住のすぐれたジャーナリストの手で、占領期の天皇が共産化による革命を恐れるあまり、きわめて高度な政治的能力を発揮していたことを明らかにした。

それはまた、政治権力を持たない昭和天皇の発言だけで占領軍や米国政府が動くことはなかったとする最新の研究書に対する、鋭い批判にもなっている。

「フルトヴェングラー家の人々」エバーハルト・シュトラウプ著…日経新聞7月10日23面より

2011年07月10日 15時22分56秒 | 日記
19世紀ドイツの市民社会描く

エバーハルト・シュトラウプ
▼著者は40年生まれのジャーナリスト。著者に『ヴィッテルスバッハ家』『プロイセン小史』など。

音楽評論家 山崎 浩太郎   文中黒字化は芥川。

没後半世紀を超えて、いまも日本のクラシック・レコード界では最大級のスター指揮者、ヴィルヘルム・フルトヴェングラー。

評伝も人気で、近年も内外の著者による新作が登場しているが、そのなかで本書は、かれの家系に着目した点に特徴がある。

トーマス・マンの『ブッデンブローク家の人々』のような題名だし、著者は歴史学を学んだジャーナリスト。だから、指揮昔の父祖や子孫の生涯も、指揮占と対等に年代記として描くのかと思って読みだしたが、そうではなかった。

あくまで中心は指揮者であり、序章をのぞく10章のうち、7章がその生涯に割かれている。ギムナジウムの校長をつとめた同名の祖父ヴィルヘルム、高名な考古学者の父アドルフ、さらに指揮者の子孫が記述の中心となるのは、残りの3章だけである。

本書の主眼は、指揮者を生み出した19世紀ドイツの市民社会がいかなるものであったかを、その肉親、師や友人知人の出自と人となりを紹介することで、描き出そうとする点にあるのだ。

富と教養をあわせ持つ、知識階級の人々。「市民」とひとくくりにしたのでは観念的になりやすいその姿が、フルトヴェングラー家の関係者たち多数の実例により、丹念に掘り返されていく。


その環境から出現したフルトヴェングラーが、市民社会にふさわしい「作曲家」ではなく、スター的な「指揮者」として成功してしまう。ここに時代の変化があり、そのお陰で、かれは20世紀のアングロサクソン的な大衆社会に適合し、そこで不滅の名声を得るのだが、同時にその小市民性をさらけ出してしまう。そうして、市民社会衰滅の象徴ともなる。

ナチス時代におけるフルトヴェングラーの行動への著者の評価はかなり手厳しい。日本の信奉者は拒否反応を示しそうだが、著者にとっては同国人の歴史だからこそ、これだけ批判的でいられるし、またその必要もあるのだろう。


暗示と皮肉と連想をつめこんだ博識の文章だけに、訳者は苦労したようで、意味のとりにくい箇所も散見するが、全体としてはていねいに訳出されていた。

「日本農業の真実」生源寺 眞一著…日経新聞7月10日22面より

2011年07月10日 15時06分07秒 | 日記
担い手の目線加え増す説得力

かつて日本の農業政策を語るとき、農水省・農協・族議員の「三角形」がかならず登場した。最近では農水族の存在感が薄まった代わりに、やる気のある農家とされる人の声を聞く機会が増えたような気がする。

とはいえ、日本の農業が古い体質から抜け出し始めたという明るい材料が増えているわけではない。選挙目当てで決まる政策の密室ぶりも、既得権益に縛られた農業構造の旧態依然ぶりも、担い手が高齢化しているために尻すぼみが必至の地方の窮状も、難題として今なお残っている。

一般向けに農業を掘り下げた本がこの10年ほどで増えた。筆者はそれ以前から専門家として発言してきたひとり。

日本農業の歴史的な転換点となった1993年のウルゲアイ・ラウンド合意以降、ほとんど進化していない日本の農政に対する筆者の視線は厳しい。そこに農家や農村からの目線を加えて批判や分析の説得力を増している。

食料自給率は高ければ良いのか、日本の農業の担い手はだれなのか、コメの生産調整 (減反)をいつまで続けるのか、民主党の戸別所得補償は正しいやり方なのかー-。

割り切りが難しい問題の論点を客観的に見つめ直すことができる。農水省と農協、政治家、そして古い農家、新しい農家をひっくるめて眺め、目をこらす「農業観」が今ほど必要なときはない。

「水の透視画法」辺見 庸著…日経新聞7月10日22面より

2011年07月10日 14時58分34秒 | 日記
個の予感が生む文明批判の深み

作家、辺見庸の文明批評は特異な手法をとる。対象を客観的に眺め論じるのでなく、自身の内外にしのびよる変化の兆し、予感に耳をすまし、言葉以前の言葉を拾い集める。

極めて主観的で個人的な作業。それは古来、予言者でもあった詩人の仕事に似ている。近年、秀でた詩作を発表しているのは偶然ではない。

死刑制度への断固とした抵抗。ひたひたと広がるファシズムへの警告。熱中症で孤独死する老人を生む国への怒り。2008年3月から3年の間、折々に心を揺らした社会事象を取りあげながら、同時に、いつか見たアジサイやツユクサの記憶、映画の一場面、忘れ難い面影といった私的な事柄を丹念に描写する。

巨大な社会の変動を、あえて小さな個人の営みと同等、同量に扱う。多数者の常識によらず、書き手である「私」から読み手である「あなた」へ、個から個へと言葉を届ける。今、ものを書く者のモラルだとして追求してきた試みが、一つの完成形に達した。

問題を外側から指弾したところで解決などしない、と辺見はいう。そして自らと他者に問う。誠実さや善良さを冷笑する「無意識のすさみ」と闘えるか。

無残に消費され意味を失った言葉を回復できるか。3月11日の津波で宮城県の郷里を失った後、悲しみの内にその言葉は深みを増す。予兆の結末をたぐる作業は一人ひとりに委ねられている。

「水の透視画法」辺見 庸著…日経新聞7月10日22面より

2011年07月10日 14時58分34秒 | 日記
個の予感が生む文明批判の深み

作家、辺見庸の文明批評は特異な手法をとる。対象を客観的に眺め論じるのでなく、自身の内外にしのびよる変化の兆し、予感に耳をすまし、言葉以前の言葉を拾い集める。

極めて主観的で個人的な作業。それは古来、予言者でもあった詩人の仕事に似ている。近年、秀でた詩作を発表しているのは偶然ではない。

死刑制度への断固とした抵抗。ひたひたと広がるファシズムへの警告。熱中症で孤独死する老人を生む国への怒り。2008年3月から3年の間、折々に心を揺らした社会事象を取りあげながら、同時に、いつか見たアジサイやツユクサの記憶、映画の一場面、忘れ難い面影といった私的な事柄を丹念に描写する。

巨大な社会の変動を、あえて小さな個人の営みと同等、同量に扱う。多数者の常識によらず、書き手である「私」から読み手である「あなた」へ、個から個へと言葉を届ける。今、ものを書く者のモラルだとして追求してきた試みが、一つの完成形に達した。

問題を外側から指弾したところで解決などしない、と辺見はいう。そして自らと他者に問う。誠実さや善良さを冷笑する「無意識のすさみ」と闘えるか。

無残に消費され意味を失った言葉を回復できるか。3月11日の津波で宮城県の郷里を失った後、悲しみの内にその言葉は深みを増す。予兆の結末をたぐる作業は一人ひとりに委ねられている。

「英文学者 夏目漱石」 亀井俊介著…日経新聞7月10日22面より

2011年07月10日 14時39分37秒 | 日記
「智に働く」研究の開祖顧みる

亀井俊介 32年生まれ。アメリカ文学者、比較文学者。著者に『わがアメリカ文学誌』など

東京大学教授  河合 祥一郎  

三谷幸喜の新作舞台『ベッジ・パードン』で、ロンドンに留学して英語に苦労する夏目金之助を野村萬斎が演じて好評を博したが、実際の夏目がいかなる英文学者であったかは、この本が解き明かしてくれる。

英文学者として夏目漱石を考えることは重要だ。作家漱石としてのキャリア12年と比べて、英文学者とし
て研究に勤しんだ年月は、学生時代も合わせて18年になるという。夏目は日本における英文科の「開祖」とも言うべき存在であるから、その姿を顧みることには、昨今衰退の一途をたどる英文科のありようを見直すという意義もある。

ただし、夏目にとって英文学研究は容易なものではなかった。漢詩の機微は「情」で理解できるが、英文学研究は「智に働く」からだ。

ロンドン留学中に英文学の主要作品を読了した末に、「根本的に文学とは如何なるものぞ」という大問題を打ち立て、科学的なアプローチで文学作品を分析しようとしたのも、英文学が「智」的な学問だと判断したからだろう。

夏目は英文学研究のまとめのような形で『文学論』を書くが、これがまた実に難解である。智に働いて角が立つ。しかし、著者はここに夏目の英文学研究の大成を見る。夏目は『文学論』を書き改めながら、次第に豊富な実例をもとに批評的観賞をほどこすようになっていき、やがて「智」と「情」が見事に緩り合わさった境地に至っていると巧みに論じている。

夏目は大量の英文学作品を読んでおり、本書が指摘するように、そうした英文学研究が漱石の作家活動の土台となったことは間違いない。東大で夏目の授業を受けた学生が、夏目が引用する作品の豊富さに驚いたそうだ。

しかも、漱石は、英語の発音にかなりの自信があったようで、東大講師時代、英文学講義で作品を英語で読みあげて学生たちに書き取らせ、学生は書ききれずにあとで図書館に行って調べたそうだ。

今なら学生にプリントを配ってしまうところだが、そんな親切をしないほうがかえって学生のためなのかもしれない。今度、東大の授業で真似してみたらどうだろうか。

「悲しみの女神たち(上・下)」ジョナサン・リテル著…日経新聞7月10日22面より

2011年07月10日 14時27分48秒 | 日記
ナチスの悪夢 描く壮絶な小説

フランス文学者 野崎 歓    文中黒字化は芥川。

上下巻、のべ千ページになんなんとする大冊だが、若き著者は第1稿を40日ほどで書き上げたという。何物かに取り憑かれたとしか思えない、異様なまでの速筆である。

読者もまた、読み出すやいなや物語の魔に取り憑かれ、熱に浮かされたようにページを繰り続けることとなる。破滅に向かってひた走るナチスドイツの、悪夢のただ中に降り立つのだ。

語り手はかつてのSS将校。戦後は身分を偽ってフランスで生き延びてきた。物語の大きな流れを形作るのは、ユダヤ人たちの辿る途方もない受苦、受難の道のりである。虐殺の現場ではいったい何か起こっていたのか。作戦を遂行した側の視点で綴られる文章は、ときに耐えがたいほどの残酷さをはらむ。

だが同時に、すべてはガラス越しに見つめられた光景であるかのように透明、静謐で、語り手は一種、現実から遊離したようなポジションを保ち続ける。暴力の嵐の吹きすさぶ中、徐々に自制心を失っていく同僚や部下に注ぐ眼差しには、冷徹な批判性が宿る。しかしそんな彼ですら、ユダヤ人を「劣等民族」とするナチの「世界観」を疑おうとはしない。

音楽を深く愛し、フランス文学を耽読する人物が、粛々と「最終解決」の実現に身を砕くのだ。「人間にとっての正真正銘の危険、それはわたしであるし、それはあなたである」。嫌悪と、不思議な共感に呪縛されつつ、われわれは彼の言葉をかみしめるほかはない。

語り手の少年時代をめぐる回想が、物語のもう一方の極をなす。双子の姉に捧げた絶対の愛、そして両親との確執ゆえに、彼の人生はギリシア神話のような悲劇味を帯びる。第三帝国の瓦解と軌を一にして、彼自らのドラマもクライマックスを迎える。

ヒトラーはじめ実在人物が続々と登場し、狂気にとらわれた者たちの姿があざやかに描き出されていく。ミステリー的な興味も盛り込まれ、思いがけないどんでん返しにも事欠かない。

読後、小説とはこれほど壮絶なものでありうるのかという驚きがふっふつと湧き起こってくる。戦慄の、必読の大傑作と断言したい。

「阪神港」復活への船出…朝日新聞7月10日34面より

2011年07月10日 14時06分46秒 | 日記
神戸・大阪両港4年後統合
コスト減・サービス向上 カギ
選択と集中 浸透なるか


…前略。

神戸市の吉井真・みなと総局参事は「選択と集中という政策が浸透していない」と不満げだ。
80年にはコンテナ取扱量で世界4位だった神戸港だが、08年は44位まで落ち込んだ。

国内で首位の東京港でも24位。躍進したのはシンガポールや中国、韓国など。経済の発展がめざましく、コンテナの大型化にあわせて港も大型化させた。ところが日本は各地がそれぞれ港湾整備を進め、集中とは逆に「分散化」させてしまった。


「ハブ港湾は1港でいい」「国際物流の地図は変わった。現状維持できればいい方だ」という声もある。港湾政策に詳しい黒田勝彦・神戸大名誉教授は「老人を若者によみがえらせるのは無理。国際的な基幹航路を何とか維持し、日本の産業を空洞化させないようにする最低限の手だてが国際戦略港湾だ」とみる。

(大峯伸之)

首相が5人代わっても、我々は努力した…朝日新聞7月10日4面より

2011年07月10日 13時52分15秒 | 日記
イノウエ米上院議員

…前略。

ブッシュ前政権でホワイトハウス国家安全保障会議(NSC)上級アジア部長を務めたマイケルーグリーン米戦略国際問題研究所(CSIS)日本部長は「9月前半に日米首脳会談をやることは勧めない。

菅首相が首脳会談をやるためだけに、首相の座に2~3週間とどまっても何の利益にもならない。

…後略。

(ワシントン=伊藤宏)

海外マネー、流入加速 金利、日米逆転で…日経新聞7月10日3面より

2011年07月10日 13時17分55秒 | 日記
短期国債、買越額最高に 円高の一因に

文中黒字化は芥川。

日本の金融市場に海外マネーが流入している。海外投資家の今年上半期(1~6月)の日本の短期国債の買越額は過去最高となるのが確実になった。1~5月の累計買越額は49兆9000億円と、既にこれまでの上半期の最高を更新。

日米の利回りが逆転して日本の短期国債への投資妙味が高まったためだ。海外の中央銀行が外貨準備高の多様化を進めて円資産を増やしていることも背景にある。最近の円高傾向の一因となっている。

日本証券業協会の統計によると、1~5月の日本の短期国債の買越額は、統計が公表されている2004年4月以降、最高だった10年上半期の44兆8000億円を上回った。短期国債は期間が1年以下の国債。

期間が1年超の中長期債も7兆4000億円の買い越しで、短期と中長期を合わせた国債全体も57兆3000億円と、上半期で最高を更新する見通しだ。

海外マネー流入の要因の一つである日米の短期国債の利回り逆転は、米国の債務上限引き上げを巡る政府と議会の交渉が難航していることが背景にある。米財務省が債務増加を抑えるために短期国債の発行を抑制し、米市場で需給が引き締まって利回りが急低下(価格は上昇)したためだ。

3月下旬から日米の3力月物の短期国債利回りが逆転。最近は日本の0・09%程度に対し、米国はO・02%程度で推移しており、米投資家などが資金を日本国債に移したもようだ。

日本の財務省の対外・対内証券投資によると、米投資家は5月、1年10ヵ月ぶりに日本の短期国債を買い越した。市場では米住宅金融公社や米金融機関などが買っているとの観測が出ている。

さらに米の量的緩和第2弾(QE2)で投資マネーが高金利国に流れ込んだ結果、自国の通貨高を抑えるために為替介入を実施した新興国の外貨準備が急増。新興国は運用先として、円資産を増やしているようだ。

国際通貨基金(IMF)によると、3月末の世界の外貨準備に占める円資産の比率は前年からO・8ポイント増え3・8%に拡大した。

英国からのファンド経由で中東のオイルマネーが入っているようだ。外貨準備多様化の一環として買われているのは短期債が多いが、中国などはより利回りが高い中長期債へのシフトを進めている。4月には中長期債の買越額が過去最高になり、5月も高水準で買い越しだった。

海外投資家の短期債と中長期債を合わせた日本国債の保有シェアは残高ベースで約7%にとどまるが、売買高でみると約2割を占める。

国債全体でみた1~5月の海外からの買越額は10年下半期(55兆円)も上回って継続的に拡大していることから、債券市場への影響力が拡大しているだけでなく、「円高の一因になっている」(国内大手証券)との指摘もある。