3年と4か月前、十日町市の竹所という集落に建つ、ドイツ人の建築家、カール・ベンクスさん設計による家を取材しました。
2015年2月取材記事⇨「ある山村にて」
そのカール・ベンクスさんの事務所があり、拠点になっている十日町市の松代に行ってきた。
竹所にあるベンクスさんの自宅。この家は鬱蒼とした緑の森の中にあり、
ピンク・ベージュのカラーと相まって、緑の森とコーデイネートしていると思う
竹所の集落を回ってみると3年前と同じで、居宅は増えておらず、7〜8軒ほど、そのうち半分は別荘のようで、人の気配はなかった。一軒の建物が増えていたが、作業小屋であった。もともと雪が深く、住居として住むには、竹所は余程の覚悟がないと生活には適していないと、私は思っている。ここに居を構えた方は、どんな思いを持ってこの地とベンクスさんの設計を選んだのだろうか。
上記はカールベンクスさん設計によるものと思われる建物。(十日町、松代集落)
3枚目の画像の家は窓辺に大きな筆がかかっていたので、書家の方が住んでいると思われるが、好感の持てる設計、色である。
ベンクスさん設計の家の近くには、従来からあるこの地の建物が建っている。飾り気のない何ら変哲もない、昔ながらの木造建築物である。そこで改めてパステル調の、ドイツの家とまごうようなカラーの家と比べると、従来の建物が、何とも心が和み、浮つかず落ち着いて見えてくる。
それは私だけなのだろうか。
日本人は元来、突出することを嫌う。特別目立つこと、他人と差異を持つことは、その地で安穏と生きていけないことを意味していた。目立たず、ひっそりと生きる。個人主義はご法度なのだ。そんな国民性は私は嫌いだが、反面、集団様式美を生み出してきたと思う。それが顕著なのは、福島の大内宿、岐阜、富山の白川郷、五箇山等の建物なのではないかと思う。その意味で、昭和の佇まいの多くを残した松代の建物そのものを、資源として生かすメンテナンスができないのだろうか。松代をドイツビレッジカラーに誘導していくのも、ありなのだろうが。
1980年代に観光で興隆を誇った清里が、今や廃村状態であるという。そんな記事を読み、昭和の街並みが色濃く残った松代に、改めて気がつかされたのである。