徹夜の突貫ツアーの始まり。仕事終了後に、急いで準備。一緒に行くスタッフの車に乗り込んで、酒蔵での徹夜の作業に備えて腹ごしらえ。丁度、そのスタッフの方が寝屋川方面だったので、以前から行きたいと思っていたうづら屋さんに行くこと。
最寄り駅は京橋になるのだけれど、徒歩で15分も掛かります。でも、多くの方がその料理の美味しさを求めて、連日賑わっているとのこと。料理人仲間でもとても評判なお店です。
一応、焼き鳥となっているのですが、その充実ぶりは凄いですよ。 シャラン産の鴨や白金豚、イべりコ豚。ホワイトアスパラガスやジャンボマッシュルームなどなど、とても充実した厳選された食材達。それをシンプルに炭火でベストな状態で焼いて提供してくれるのです。それも一皿400円からととても身近です。
いろいろと手を加えることだけが美味しい料理じゃないことを再認識させてくれるお店です。料理人はどうしてもいろいろと自分の技術を料理に反映させたいと思うし、シンプルな料理方法は手を抜いているようで嫌(実は一つの技術を完全に身につけることはとても難しい)で、ついつい手を加え過ぎてしまう時があります。いろいろと料理の技術がある方が、ここまで思い切って炭で焼くということに特化できることは本当に凄いことだと思います。何を食べても美味しいですし、何度も通いたいお店でした。メニューを右から順番に最後までくださいと言いたくなる程のお店です。
しっかりと腹ごしらえした後に、中尾酒造さんを目指して出発。 摂津郷(茨木市)の「中尾酒造」さんは、酒作りの全てを一人で切り盛りされている酒蔵さんです。ダメともで一度蔵見学を申し込んでみると、2日後に今期最後の仕込を行うとのこと。運良く、先に予約されていた方の了承を得ることに出来て、見学できることになりました。指定された時間は深夜の2時。用意していただいたジャージを着て、実際に麹室で作業をさせて頂いたり、蒸し米を冷やして留添えの仕込みのタンクに運んだり。とても貴重な体験をさせて頂きました。
中尾さんの凄いところは当主自ら杜氏を務めて、一人で酒造りをしていること。また、地元の茨木で三島雄町という酒好適米を復活させて、それを使って酒作りを行っていること。また、その作業を公開するだけではなくて、実際に体験させてくださるところです。気さくな人柄の中に、とても熱いものを持っておられる方です。(この日も地元の料理屋の方が助っ人に。その方もとても丁寧に説明してくださいましたが、このような地元のサポーターがいるのも中尾さんの人柄なのでしょうね。)
中尾さんに何故、このような作業を公開するようになったのですか?の質問に、「間違った情報があまりにも多すぎる。それをただ言葉で伝えるだけではなくて、ありのままの姿を感じてもらうことを大切にしています。」
では、酒作りで心掛けていることは何ですか?-酒作りは取り戻しが効かない作業。なので、日々精進です。
作業が終了したのが、朝の5時。蒸米の残り湯で、機材等を丁寧に洗っていきます。酒作りの時には、一人でこのような地道な作業を繰り返すそうです。後片付けも終了し、中尾さんにお願いして試飲させて頂くことに。凡愚・龍泉などの生酒は、とてもすっきり感があり、口当たりも良い。特に見山という純米吟醸のお酒は秀逸。かなり気に入ったのですが、今期の販売は4月頃になるそうです。とても残念。
酒に酔い、人柄に酔う、そんな素敵な中尾酒造さんです。ほんとうに長い時間、有難うございました。
しばらく仮眠をとった後、高槻は富田町にある「寿酒造」さんを訪問させて頂きました。
寿酒造さんは、先日お伺いした清鶴酒造さんからも近く、昔からの富田酒を造り続けてこられた酒蔵さんです。清酒国乃長を作る酒蔵さんとご説明すればピンとくるでしょうか。蔵を案内してくださったのは詰口チーフの大宅さん。とても穏やかですが、丁寧に素人の私の質問にも答えてくださいました。寿酒造さんも地下水を使ってらっしゃのですが、汲み上げた後に循環させて水に丸みを持たせているそうです。また、杜氏さんを筆頭にしっかりを意思の疎通が出来ており、おやっさん(杜氏さん)の的確な指示・酒作りに取り組む姿勢が 酒蔵見学時にも伝わってきました。また、杜氏さんも分析室などでしっかりお酒の状態を確認しながらの作業。勘だけに頼らない姿勢に感心。職人技はこのような細かな作業の積み重ねから生まれるものなのでしょうな。
大宅さんに寿酒造さんのお酒作りの目標をお伺いしたところー「辛くてサラッ、ではなくて、ふくみを多い酒。飲んでズンとくるお酒作りを蔵として目指している」そうです。
また、お酒作りと別に地ビールや焼酎、梅酒も作られている酒蔵さんでもあります。
地ビールは全国でも10番目という初期から取り組まれて、また焼酎も粕取り焼酎といって酒粕を使って焼酎を造っています。この焼酎は日本酒と焼酎の両方の風味をもっていて、とてもおもしろい感じでロックで飲んだら美味しいでしょうね。梅酒にも氷砂糖のかわりに日本酒が使われていますので、上品な甘みになっています。(地ビールの生を試飲してみたかった・・。)
試飲のあとに私が選んだのが、生一本というお酒。純米生酒で超芳醇甘口となっていますが、決して甘過ぎず女性の方にとくに好まれそうな美味しいお酒です。あと、小瓶の梅酒と粕取り焼酎も買いましたよ。
最後に当主の方に寿酒造が大切にしていることをお伺いしました。-「安さ勝負などで、質の悪いものを作らない。曲がったことをしない。職人気質、良いものを作る事に集中すること。」
だんだん大阪の酒が好きになってきますね。作り方や目指すものの違いはあるかもしれませんが、どの酒蔵さんも凄くこだわりを持って酒作りに取り組んでおられます。もっと、大阪で作られる酒の良さを、多くの人に知ってもらいたいですね。