高麗橋桜花 徒然日記ー料理人はどこまでできるのか ー

「高麗橋桜花」店主・「大阪食文化研究所」主宰森田龍彦のブログです。どうぞご贔屓にお願い申し上ます。

なにわの職人技。

2006-05-29 | 農業・食育・食文化について

 今日で終わってしまいますが、阪神百貨店で浪花の技展が行われています。

 かつて、大阪で盛んだった錫器や天満切り子などを、実際に手にとって見ることができます。

 錫は7~9世紀に中国から伝わり、江戸時代に京都から大阪へと普及したそうです。錫はイオン効果があり、水の浄水機能やお酒をまるやかに美味しくすると言われています。

 また、天満切り子は江戸切り子と異なり、ガラスのカットが鈍角です。眺めて美しい江戸切り子に対して、グラスの中で反射する切り子の美しさが天満切り子の特長なのだそうです。底にもしっかりカッティングがされていて、大阪人の実を大切にする心を反映しているように思えました。

 また、大丸の現代陶芸サロンでも、大阪出身の若手陶芸家 篠原希さんの個展が最終日を迎えます。

 たまたま拝見した作品が凄く心に残って、1週間でに2度通いました。「器は料理の着物」と表現されることもありますが、この器に自分の料理を盛りつけたいな、と強く思う素敵な器でした。

 食材以外にも、大阪の誇れる職人の技にとても感動。いろいろと自分の中で、何か新しいものが生まれそうです。

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日本酒教室

2006-05-29 | お酒について

 地酒専門店山中酒の店という酒屋さん主催の 日本酒教室があり、講師を秋鹿酒造さんの方が勤めてくださいました。
  秋鹿酒造さんは、全国的にも有名な大阪の酒蔵です。秋鹿酒造さんの特長は、全量純米の酒作りと米から酒造りまでの一貫造りです。

 酒蔵さん自ら米造りを行っているのは、ほんとうに珍しいことです。米作りの特長としては、低温発芽により強い苗を育てること・植える苗を少なくして、農薬などを極力控えること・米ぬかと塩を使った発酵による土作りです。今では、全体の20%程が、無農薬で作られているそうです。

 酒作りの特長として、麹をしっかり熟成させる・山廃、生酛での酒母作りを増やしていく・良質の米の低精白で、より個性を大切にすることだそうです。

Img_3604  試飲させて頂いたお酒の種類は全部で13種類。 どれも米の旨みが濃くてハイレベル。同じ山田錦からでもいろいろな個性のお酒があり、とても楽しめた。また、同席させて頂いた方々も無類の日本酒好きの方々のようで、そのような方といろいろと意見交換出来たのも、とても良かったです。

 流石、全国にその名を知られる酒蔵さんだけあって、本当に美味しいお酒が多かったです。そして、酒蔵さんのおっしゃる通りに、「旨みがたっぷり、酸の効いた、後ぎれの良いお酒でした。」 ただ、中には旨みがかなり濃いので、しっかりと料理を選ばないといけないものもあったし、しっかりと見極めないといけないなと思いました。それと、今まで周って来た大阪の酒蔵さんの中にも、秋鹿さんに巻けないくらい美味しいお酒もあったことが再確認出来ました。

 今回、この教室を主催して下さった山中さんは、日本酒流通の厳しい時にも、ずっと日本酒を大切にされて来た、とても信頼の厚い方だそうです。山本さんのお店では、酒屋さんでは珍しく、試飲をして、買うことが出来るそうですし、いろいろなイベントを行っているそうです。

 また、なんと浪速魚菜の会の会員でもあるそうです。これを聞いた時は、とてもビックリしたし、とても嬉しかったです。こんなしっかりとこだわりのある、しかも良心的な流通の方がおられるので、大阪の地酒ももっと盛り上げていきたいなと強く思いました。

 
 

 

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旬の彩り 菜の菜さん 訪問

2006-05-27 | オススメなお店

 大阪府熊取にある和食 菜の菜さんを訪問しました。

 菜の菜のご主人佐野さんとは、浪速魚菜の会や上野修三先生の勉強会でご一緒させて頂いています。私よりだいぶ先輩ですが、会などの熱心な姿と物腰の柔らかな方で、機会があれば一度お店にお伺いしたいと思っておりました。

 お昼は1600円から、夜は簡単なコースが2000円後半から用意しているそうです。今回頂いたのは、お昼のおまかせ2000円。その中から何品かご紹介。

Dscn1607_2  菜盛り。八寸のようにいろいろな種類の料理が一皿に盛りこまれている。

地魚の揚げたものや、焼き筍、三種の田楽などが綺麗に盛りこまれていました。どれも、一手間掛けられていて、優しい味付けでした。

Dscn1608_1 犬鳴豚の柔らかに ぽてとそーす。

しっかりとバラ肉の脂が落とされていて、しかもしっとりと柔らかく仕上がっていました。ぽてとそーすは、たぶん豚の焚いた出汁でのばしてあると思うのですが、しっかり調和していました。今が旬の、碓井エンドウの付け合わせが嬉しいですね。

 おまかせの他にも、季節感のある一品料理があり、しかもとてもコストパフォーマンスは高いと思います。旬の大阪の食材を食すことが出来る、貴重なお店です。ご主人の人柄を反映してか、どれもバランスと良い、優しいお料理でした。

 ◇住所 大阪府泉南郡熊取町五門東3-33-36 0724-53-7286

 ◇営業時間 お昼11:30~14:00   晩17:00~21:00 定休 日曜日

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北庄司酒造さん訪問。

2006-05-26 | お酒について

 この2月から、大阪の酒蔵さんを巡るようになって、改めて大阪の食文化の底力を知ることが出来、また大阪にも十二分に美味しいお酒があることがわかりました。

 今回訪問させて頂いた酒蔵さんは、泉佐野市日根野にある北庄司酒造さんです。

 本来は個人の見学を受け付けていません。ですが、折角近くに来ているし(なんと犬鳴豚の川上さんのところから車で5分程で着いてしまいます。)、お酒は購入出来るようなので、その時に少しでもお話を聞ければ良いな、と思いながらの訪問。

 蔵主さんは不在でしたが、運良く専務の北庄司文良さんに蔵の中を案内していただけることに。

 創醸は大正10年と比較的新しい酒蔵さんです。しかし、この日根野は平安時代より荘園として栄え、江戸時代から酢・酒作りが行われいたことを示す文献が残っているそうです。荘園時代からの肥沃な土地での稲作と、「出づ水」の由来を持つ、和泉山系を源とする良質の水が、この地の酒作りを支えたのです。

Dscn1621  平成8年に蔵は改築され、今は本醸造以上の特定名称酒を中心に造っているそうです。拝見させて頂いた蔵の中の印象は、酒母室や枯場を併設した麹室などが広くしっかりとスペースを取られていること。杜氏を据えずるに、蔵主さんを含めた社員総勢4名の少数ながらの、丁寧な酒作りを感じることが出来る蔵内でした。

 蔵の中を案内して頂いた後に、蔵の思いを聞きながら試飲をさせて頂きました。

 主に使われる酒米は、五百万石と山田錦だそうで、酒作りは10月中旬から4月末まで行われるそうです。純米・大吟醸は丁寧な袋絞りで、貯蔵のサーマルタンクを使用するもの以外は、20度を超えるまでは空調を使わないでより自然な酒作り作り・一貫した手作りの酒作りを大切にしているそうです。

 北庄司さんが目指すお酒は、旨み・甘みがありながら、キレのあるお酒。酒作りに関しては、こだわりのある一貫した手作りを大切にしているそうで、「お酒は生き物なので、毎日が不安です。」と苦笑しながらおっしゃっていました。

Dscn1624  試飲させた頂いたお酒で、私が購入したのは「荘の郷 純米酒」 精米度65%の山田錦と五百万石を使用していて、常温・燗でも美味しいだろうと思わせるお酒で、凄くバランスの良さを感じます。

 私の料理人なので、いくら大阪で作られるものでも、美味しくないものは絶対に使いたくない。少量ながらの、こだわりを持った酒蔵で造られる美酒。また一つ、大阪の自慢のものに出会うことが出来ました。感謝・感謝。

 

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犬鳴ポーク 川上さん訪問

2006-05-25 | 生産者訪問

 大阪泉州 犬鳴山の山麓に犬鳴ポークの川上さんの養豚場はあります。

 私が知る限りでは、大阪で唯一の養豚生産者さんではないでしょうか。最近では浪速魚菜の試食会や市内のレストランでも見かけることも増えてきましたね。

 川上さんの養豚の特徴はなんといってもリサイクル飼料を使っていることです。近くにある泉佐野市食品コンビナートなどから人間が食べることが出来る食品残渣(=食品の残り物)を乾燥・乳酸発酵などを経て、豚さんの90%の肥料にしているいまいます。パンやちくわ・ラーメン・うどん・古くなった備蓄米などのでんぷん質とコーンフレークの粉・粉糖やふすま(小麦などの籾殻)を与えているそうです。

Dscn1616  養豚の一般的な餌はとうもろこしなどの脂質の多いものを与えて生育を早めるそうですが、上記のようなでんぷん質主体の餌を与えるために、通常の出荷が生後6ヶ月なのに対して、1~2ヶ月間長く飼育するそうです。また、飼育期間を長くすることにより、大きさ自体は小柄ながらも質の良い肉質になるそうです。(画像は生まれて数日しか経っていない子豚さんです。)

 今、格安の豚肉の多くは、ウインドレス呼ばれる飼育方法だそうです。窓のない真っ暗な部屋で育てることにより子豚の成長を早め、手間がかかりません。しかし、抵抗力も弱まります。それは当然のことで、窓のない真っ暗な部屋や無菌に近いような環境で自分が生活できることが想像出来ますか?そうとても不自然な環境で育てられたものが、私達の周りに当たり前のように流通しているのです。

 川上さんは、最後にブランド豚の生産者としてではなくて、大変かもしれないが大阪で頑張っている生産者の一人として今回のことを受け止めて欲しいとおっしゃっていました。

 週に一度、自ら朝市でお客さんとの対面販売を行っています。その中で、如何に偏った情報や知識が浸透しているかを身をもって体感しているそうです。でも、お客様が朝早くから犬鳴ポークを楽しみ買いに来てくれる姿を見ると、さらに大切にしていきたいと思うそす。

 私の同世代の生産者の方が頑張っておられると、本当に刺激を受けますね。しかも、流行ではなくて、しっかりとした信念を持った生き方にもとても共感を覚えます。今度は是非、私が作った料理を川上さんに食べて頂きたいです。

 

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