おっちーの鉛筆カミカミ

演劇モノづくり大好きおっちーのブログです
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ルナをみて

2008年12月06日 11時20分45秒 | 小説・短編つれづれ
 初夏。風が涼しい夜の公園。
 私は紀美と一緒に公園の「お山」の天辺で空を眺めていた。
「あの月……見えるじゃん?」
「うん」
 今日は満月より、少し欠けてるかな。
「実際見るとちっちゃいよねー」
「……」
 えっ? どういう意味?
「ほら、マンガとかじゃすごくおっきくない?」
「……」
 なるほど。うん、わかるよ。
「そう考えると、夕日とかもおんなじなんだけどねー」
 でもさ、あのね……
「……こうすれば、」
「えっ?」
「こうすれば大きく見えない?」

 夕子は両手の指でかぎかっこを作って、その中に月を丸ごと収めていた。
 紀美は一瞬夕子の指の間を覗いて、自分でも夕子と同じことをやってみた。
「……。え~、そんなの錯覚だよー。サギサギ。夕子の詐欺師~~~」
「ひどーいっ」


「地球って大きいな」
「そうですか?」
「そうだよ! だってあんなに……」
「……そうですね」
「大きいよ」
「大きいです」


「月って生き物がいそうだよね」
 紀美が言った。
「……。そう?」
 なんともいえない表情で夕子が応う。
「でも月には実際に人が行ってるし、調査もたくさんしてるんじゃないのかな?」
「夕子は甘いな」
「なんでよ」
 夕子は少しムッとする。
「人の目には見えないほど小さな生き物かもしれないじゃない」
「なにそれ? 微生物ってこと?」
「やっぱり甘い」
「なによ」
「ミクロン単位の人間がいるの。月には」
「はぁっ?」
「目に見えない人間ってことね、簡単に言えば」
「そんなのいるわけないと思うよ?」
「そいつらは小さすぎて踏んでも分子のすき間に入ってつぶれない」
「聞いてないしー」
「聞いてるよ。だって地球の常識なんて、他の星に行っても通じると思う?」
「……どうだろ。でもそんなの私たちの考えることじゃないんじゃないかな」
「冷たいなー夕子は。少しは私の妄想に付き合ってよ」
「ふふふ、だって紀美の想像ってぶっ飛んでるから」
「私はこの妄想でノーベル賞とるんだ」
「意味わかんないし」


「私はいつか地球に行ける乗り物を作ります」
「……遠いぞ」
「一生を掛けても」
「力を合わせれば、あるいは実現できるのかもしれないな」
「……はい」


 夜も更け、公園からの帰り際。
「ねえ夕子、」
「ん、なに?」
『るなをみて』
「えっ、なぁに?」
「なんでもないっ」
「ちょっと紀美さん!?」
「じゃぁ明日ね!」
「……うん。あした」
 これからもっと暑くなるけど、夏バテしないように、体力つけなきゃな。