話芸の修行をつんだ落語家のテレビへの出演は最近は殆ど見られない。
高齢化社会と言われながらテレビは若者に媚びて若手のお笑い芸人にしか出番を与えない。
若手お笑い芸人がテレビのゴールデンタイムに出ない日は無い。
あまり多すぎて名前をと顔が一致しないのは歳のせいなのか。
カラオケで「新曲を 覚えた頃は もうナツメロ」と一句詠んだ頃と同じ状況に陥っている。
≪芸名を 覚えた頃は もう消えた≫
「レギュラー」という芸名のお笑いグループを知っているなら話は簡単だが、知らない人の為に説明しよう。
話芸だけでで漫才をやるのではなく、ラップ調のリズムに乗ってネタをしゃべる。
彼等の芸にウケている娘に「こんな芸の何処が面白いのだ。面白くも何とも無い」と言ったら、「世代の違いよ」の一言で終わった。
ここでお笑いの勉強会をするつもりは無いが、同じ若手お笑いコンビに「オリエンタル・ラジオ」がある。
カタカナの付く芸名が多いのも覚えにくい理由の一つだと思う。
前に「アンタッチャブル」を「アンダチャンプル」と誤認したオヤジの話をしたが、今人気のお笑いコンビにも「アンタッチャブル」と言う名前がある。
・・おっと、何の話だったか、・・そう、「オリエンタル・ラジオ」の出る場面を何度か見たが、今度は何故だかこれがミョウにオモシロイ。
気になるので又懲りずに娘に聞いてみた。
「オリエンタル・ラジオはオモシロイね」
「エー? 随分いい加減だね」
「どうして?」
「だって、この前レギュラーは面白くないって言ったでしょう。 レギュラーもオリエンタルラジオも同じラップ系の同じ系列よ」
「なるほど。 そういえばそうだ。 しかし、とにかくレギュラーはツマラン。 でもオリエンタルラジオはオモシロイ」
「だからいい加減だって言うのよ!」
これで話は簡単に終わった。
しかしこれで引っ込んでしまっては天邪鬼のモウロクウンチク爺と取られかねない。
確かに両コンビともリズムに乗ってネタ話をしゃべる点では同じだ。
それに音声つまり言葉のリズムだけでなく、体の動きでリズムを取り視覚に訴える点でも同じだ。
話すネタの良し悪しがツマラナイとオモシロイの分水嶺か。
いや、そうでもない。
この謎解きに取り掛かることにした。
しかし、これは大変な課題だ。
「レギュラー」も「オリエンタルラジオ」も全く知らないと予想する読者が対象だ。
聴覚と視覚でリズムの面白さを訴えるコンビの特徴をどうやって「文字で」説明する。
相手が理解できても出来なくてもお構いなく書きまくれるのがこの日記の気軽さなのだが・・・
これは、ネタの内容ではなくコンビが発する「演奏様式」の問題だと悟った。
「レギュラー」のリズムは4拍子で、「イチ・ニー・サン・休」と行進曲のリズムに乗せてネタをしゃべる。
実際テレビ画面でも二人並んでその場で行進しているように両手を振り、その場で足踏みしながらトークをする。
「イチ・ニー・サン・」の部分でネタを凝縮してしゃべり、「休」のところで息継ぎをする。
一言で言えば、「レギュラー」と言うコンビは日本人の好きなマーチのリズムに乗って言葉と身体で表現するお笑いと言える。
それでは「オリエンタルラジオ」は?
ペアで演ずるのも同じ、若手で男子なのも同じ、リズムに乗って言葉と身体で表現すると言うところも同じ。
でも、リズムが違った!
「オリエンタルラジオ」の得意ネタに「武勇伝」というのがある。(武勇伝だけ?)
「ブユー・デン」「ブユー・デン」と2回繰り返して「デデーン・デンデン・ブユーデン」と続き、シンコペーションを含む2拍子のリズム(ブユーデン)に乗ってネタを展開する。
その時ネタに合わせて全身を使ってコミカルな動きを表現する。
2拍子と4拍子は兄弟のようなリズムで、どちらも基本的には行進曲に使える。
リズムを文字表現で伝えるのは至難のワザだが、「ブユーデン」の2拍子は二つ合わせて4拍子にすると行進曲には遅すぎるし、1拍を二つに割って四つ打ちにすると早すぎて行進曲が小走り曲になってしまう。
この早めの2拍子にシンコペーションが絡む。
「ブユーデン」の2拍子の「ブユー」の部分がシンコペーションになる。
それで、シンコペーションって?
学校の楽典の授業を想いだして欲しい。
一小節の中にはリズムを強く打つ強拍の部分とやや強く打つ中強の部分がある。
2拍子の曲は「強(イチ)・弱(ニー)」と続き、4拍子は「強(イチ)・弱(ニー)・中強(サン)・弱(シー)」と続く。
そこで強と弱、或いは中強と弱が入れ替わることである。
ム・ム・・・・やはり、リズムを文字で表すのは難しい。
こうなったらやけくそだ。
例を挙げて説明しよう。
中学時代に馴染んだフォスター「故郷の人々(スワニー河)」が学校の授業で出てくるシンコペーションの好例だ。
この曲は4拍子で普通に進行するが、二小節目の「河(がわー)」の「が」と「わー」の強弱が入れ替わっている。
これ即ちシンコペーションの例である。 あー疲れた。
故郷の人々
訳詞者 堀内敬三 フォスター
1 はるかなるスワニー河(がわ) 岸辺(きしべ)に
老(お)いたるわが父母(ちちはは) われを待(ま)てり
はてしなき道(みち)をば さすろう
身(み)にはなお慕(した)わし 里(さと)の家路(いえじ)
寂(さび)しき旅(たび)を 重(かさ)ねゆけば
ただなつかし 遠(とお)きわが故郷(ふるさと)
それで結局何がいいたいのか。
①「レギュラー」も「オリエンタルラジオ」も同じ若手お笑いコンビで、どちらもラップ調のリズムに乗ってネタをしゃべる。
②しかし、「レギュラー」のリズムは一見元気良く見えるが、実際は単調なマーチリズムで間延びしている。
③「オリエンタルラジオ」のリズムは軽快な早めの2拍子でシンコペーションが流行りのラップ調に良くマッチしている。(例に出した故郷の人々はゆったりした遅めの4拍子でシンコペーションもその分間延びしている)
結果的に武勇伝という古めかしい言葉の音声に潜む軽快なリズムを生かした。
それから・・・・?
ハイ、結論です。
「オリエンタルラジオ」は今後大ブレークして「ブユーデン」は流行語になると予想する。
リズムが軽快なのでコマーシャルにも引っ張りだこになるだろう。
私ならコンビニのおでんのコマーシャルに使う。(一寸時期外れか)
「おでーん・でん・でん」「おでーん・でん」・・・「○○おでんは おでーん でん」
書いている内にバカバカしくなってきた。