国は和解条項を直ちに実行した。
県の「埋め立て取り消し」に対する「是正指示」だ。
県がこれを受け入れるはずはなく、国地方係争委員会に不服申し立てをするはずだ。
ここまでは、「和解案」に折込済みであり、県がとやかく言う筋合いではない。
だが、「和解」により裁判が一旦仕切りなおしで一本化され、急転直下の問題解決の可能性が出てきた。
翁長知事が「和解」の真意にやっと気が付いたようだ。
辺野古の工事を一時中止させ、代執行訴訟を取り下げさせたので、辺野古シュワブゲート前のジジ・ババ活動家たちとともに「県の勝利」と喜んだのだが・・・。
ぬか喜びだったと気が付いたのだ。(涙)
今朝の沖縄タイムスは、開き直りとも取れる大見出しが乱舞。
■一面トップ
知事「和解は2訴訟」
別裁判で権限行使も
菅氏は否定的な見解
■二面トップ
知事、敗訴でも対抗
和解条項 フリーハンド確保
防衛相「全作業止めた」
ボーリング調査も中断
国の是正指示
県が文書受理
指示に応じず係争委へ
辺野古「和解は2訴訟」 翁長知事、別裁判で権限行使も
翁長雄志知事は8日、県議会の本会議で、名護市辺野古の新基地建設に伴い、国と県が訴訟で和解した内容を与野党の県議に説明した。知事は和解条項に、是正指示の取り消し訴訟の判決が確定した場合、国と県が「判決に従う」と明記されていることへの対応を問われ「これは2件の訴訟に関しての和解だ」と強調。判決に従う合意は、現在争われている埋め立て承認の取り消しだけに適用され、その他の知事権限は行使できるとの認識を初めて明らかにした。仲村未央氏(社民・護憲)への答弁。
「取り消し」以外の知事権限は、基地建設に伴い、国が工程を変更したい場合に県の承認を求める「設計変更申請」への対応などがある。
知事は米軍岩国飛行場(山口県)の滑走路移設事業で、8回の設計変更が発生した経緯を指摘。「私は当選以来、設計変更も含め、たいへん厳しいものがあると話してきた。岩国の8回は参考になる。この問題は、なかなか厳しい状況になっている」と述べ、厳しい姿勢で審査に臨む姿勢を示した。渡久地修氏(共産)への答弁。
自民の照屋守之氏は、判決に従う合意の意味を確認。「新たな裁判で国が負けたら、辺野古移設を断念する。県が負けたら、協力して(辺野古移設を)進めるとの確約ではないのか」とただした。
町田優知事公室長は「若干、異なる。その訴訟の判決に従うが、あらゆる手法で新基地を造らせない県の方針は変わらない」と説明。新たな訴訟で敗訴しても、新基地建設の容認に転じるわけではないとした。
■菅氏は否定的な見解
【東京】菅義偉官房長官は8日の会見で、翁長雄志知事が名護市辺野古の新基地建設をめぐる是正指示の取り消し訴訟で県側が敗訴しても、その後の別の裁判では新基地建設阻止へ知事権限が行使できるとの考えを明らかにしたことに、否定的な見解を示した。
菅氏は「互いに同意した和解条項に従うべきだ」と述べ、是正指示の取り消し訴訟で確定した判決の効力はその後の裁判にも及ぶとの考えを提示。「和解条項を読めば皆さん分かるではないか」と翁長氏の発言に不快感を示した。「負けることを考えて発言したのかと思う」とも述べた。
>「取り消し」以外の知事権限は、基地建設に伴い、国が工程を変更したい場合に県の承認を求める「設計変更申請」への対応などがある。
>町田優知事公室長は「若干、異なる。その訴訟の判決に従うが、あらゆる手法で新基地を造らせない県の方針は変わらない」と説明。新たな訴訟で敗訴しても、新基地建設の容認に転じるわけではないとした。
翁長知事は裁判で負けても、それは二つの裁判に限定されるので次々と別の争点で法廷闘争を繰り返すというのだ。
裁判で敗訴したら判決に従がうと法廷で発言しておきながら、その一方で擬態答弁では「あらゆる手段で辺野古阻止」を続けると公言しているのだ。
「しかし、現状のように、国と沖縄県双方が延々と訴訟合戦を繰り広げている、この関係が続いていけば、結果として膠着状態となり、家や学校に囲まれ、市街地の真ん中にある普天間基地の、そして沖縄の現状が、これからも何年も固定化されかねません。そんなことは誰も望んでいないとの裁判所の意向に沿って、和解を決断いたしました」
つまり、国の方針は「辺野古移設が唯一」変わりがないが、「国と沖縄県双方が延々と訴訟合戦を繰り広げている」ことは避けたい、ということだ。
つまり訴訟の単純化により不毛な訴訟合戦に終止符を打ち、どちらが勝つにせよ早めの決着を裁判長が提案したことになる。
翁長知事の「敗訴でも対抗」という開き直りに対して、菅官房長官は次のように述べている。
「お互いに同意した和解条項に従がうべきだ」
「和解条項を読めば皆さんわかるではないか」
それでは、「和解条項」(10項目)の第9項を検証してみよう。
「9 原告(国-引用者)および利害関係人(沖縄防衛局)と被告(沖縄県)は、是正の指示の取り消し訴訟判決確定後は、直ちに、同判決に従い、同主文およびそれを導く理由の趣旨に沿った手続きを実施するとともに、その後も同趣旨に従って互いに協力して誠実に対応することを相互に確約する」(5日付琉球新報)
係争中の3つの「辺野古訴訟」は、すべて、「埋め立て承認取り消し」をめぐるもの。
「和解」後「協議」しても合意しない場合は、国から県に「是正の指示」を出し、やがて新たな裁判(「是正指示取消訴訟」)まで行くのは折り込みずみ。その判決には国も県も従う、というのが第9項の前段である。
「その後も同趣旨に従って互いに協力して誠実に対応することを相互に確約する」との後段部分は、今後予想されるの辺野古新基地建設をめぐって「国と県の争い」は、今回の判決の「主文およびそれを導く理由の趣旨」に沿って処理するという確約になる。
では「主文およびそれを導く理由の趣旨」とは何か。
それは1月29日に裁判長が提示した「代執行訴訟和解勧告文」には次のように明記されている。
「現在は、沖縄対日本という対立の構図になっている。それは、原因についてどちらがいい悪いという問題以前に、そうなってはいけないという意味で双方ともに反省すべきである」
「今後も裁判で争うとすると、仮に本件訴訟で国が勝ったとしても、さらに今後、埋立承認の撤回がされたり、設計変更に伴う変更承認が必要となったりすることが予想され、延々と法廷闘争が続く可能性があり、それらでも勝ち続ける保証はない。むしろ、後者については、知事の広範な裁量が認められて敗訴するリスクは高い」
つまり、国勝訴の判決の後、翁長知事が意固地になって「あらゆる手段」で「辺野古阻止」に向い、「撤回」や「工事変更不承認」などが行われ、すべての裁判に国が勝訴する保証はない。(この辺は裁判長が国を和解に導くための脅し)
したがって、和解により一本化した訴訟の判決に双方が従がう、つまり「訴訟合戦」に終止符を打つことを明記したのが和解条項第9項だ。
多見谷裁判長が、「国勝訴」の判決を下すのはほぼ確定的だ。
県側が要求した9人の承認申請で環境の識者や安全保障の識者の証人申請を却下したのが何よりの証拠である。今回の和解を当初は「急がば回れ」で、辺野古の工事が一時中断するのは残念と考えた。
だが、裁判が一本化により単純化し、さらに「判決に従がう」という言質をとることにより、不毛な訴訟合戦に終止符を打つ公算が大きくなった。
結果的には、「急がば廻れ」のはずの和解が逆に翁長知事の「あらゆる手段」を封印する結果となったのは皮肉である。
ところが、翁長知事は4日の会見で、「あらゆる手法で、基地を造らせないということはこれからも信念を持ってやっていきたい」と述べている。
翁長知事は和解条項第9項の意味を知っているはずだ。
いやしくも県知事になるほどの人物が明文化された和解条項の意味を理解できないほどバカではないはずだ。
知っていながら知らない振りをしているとしたら、これほど県民をいや全国民を愚弄する話はない。