巷では、このように、ある教育・医療の効果を喧伝する本を見かけることが多い。
しかし、慶應義塾大学の中室牧子氏およびハーバード大学の津川友介氏によると、これらの本の内容を鵜呑みにしても、子どもが東京大学に合格したり、がんが治るとは限らない。

なぜなら、「●●教育法で育てる」ことと「東京大学に合格する」ことのあいだ、あるいは「■■を飲む」ことと「がんが治る」ことにあいだには、「因果関係」があることが証明されておらず、「相関関係」しかないからだという。

これはどういうことだろうか。

「相関関係」と「因果関係」は
まったくの別物である

 学力が高い子どもは、体力があるという場合が多いらしい。
 図表1を見てほしい。学力テストと体力テストの都道府県別平均値を散布図で表したものだ。子どもの学力テストの点数が高い都道府県では、体力テストの点数も高いことがわかる。

 では、「子どもの学力が高いから、体力がある」と考えてよいのだろうか。つまり、子どもに体力をつけようと思ったら、まずは子どもの学力を上げるべきなのだろうか。

 残念ながらそうとは言えない。子どもの学力と体力の関係のように、「2つのことがらのあいだに一見関係があるように見える」状態を相関関係があるという。

 しかし、相関関係があることは、因果関係があることを意味しない。「2つのことがらのうち、どちらが原因で、どちらが結果かということが明らかである」状態を、因果関係があるという。この場合、学力が高いという「原因」によって、体力があるという「結果」がもたらされたのであれば、この関係は「因果関係」だといえる。