田中雄二の「映画の王様」

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「ザ・シネマ」B級映画大会『ホワイト・ドッグ』『ガンマン大連合』

2019-04-01 09:53:02 | 映画いろいろ
「ザ・シネマ」が、日曜の朝に、昔の場末の映画館が組みそうな“2本立て”を放送。くくりはエンニオ・モリコーネだ。



『ホワイト・ドッグ』(82)

 黒人だけを襲うように調教された白い犬の恐怖を描く。監督はサミュエル・フラー。共同脚本はカーティス・ハンソン。撮影ブルース・サーティース、音楽モリコーネと豪華なスタッフ。

 犬を使って人種差別問題をあぶり出すという発想は斬新だが、アメリカでは上映禁止となり、日本でもビデオで出た後、やっと劇場公開されたと記憶している。B級の巨匠フラー面目躍如の適当さと工夫が随所に見られる。

 それでも、子供の頃、友人の家の犬に噛まれたことがあるので、あまり犬をかわいいとは思えない自分にとっては十分に怖い映画。スティーブン・キング原作の狂犬病に感染した犬の恐怖を描いた『クジョ―』(83)を思い出した。それにしても出演した犬はよく調教されていたと思う。今は動物の扱いにうるさいから、こんな映画はできないだろう。

『ガンマン大連合』(70)

 メキシコの革命軍に武器を売りに来たスウェーデン人のヨド(通称ペンギン=フランコ・ネロ)は、ひょんなことから将軍の副官のバスコ(トーマス・ミリアン)と共に、政府軍に捕らわれた革命指導者の教授(フェルナンド・レイ)の救出に向かう羽目になる。セルジオ・コルブッチ監督のマカロニウエスタンというよりも、一種の革命劇。

 基本的にはネロとミリアンのバディムービーだが、そこにジャック・パランス演じる謎の男が絡む。革命、悪党、だまし合い、殺し合い、共闘、裏切り、爆破、マシンガン、金、女、SL…とマカロニウエスタンの要素が満載。

 残酷で汚らしくて下品だが、そこに男のロマンも感じさせるところがミソ。少々うがった見方をすれば、同じくメキシコ革命を描いたセルジオ・レオーネの『夕陽のギャングたち』(71)とは兄弟のような映画だということもできる。

 何よりみんなが楽しそうに演じている感じがした。以前は、この映画のパランスのようにマカロニに出たハリウッドスターのことを、単純に“都落ち”だと感じていたのだが、必ずしも本人たちはそうは思っていなかったのかもしれない。

 で、この映画の音楽もモリコーネ。お得意の口笛とハモニカを使った甘いメロディと、それとは対照的な「同志たち、殺っちまおうぜ」と歌う物騒なテーマ曲(作詞はコルブッチ)が印象に残る。いまさらながら、すごい作曲家だと思わされた。
コメント
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