『桃色の店』(40)(1997.10.)
この映画、エルンスト・ルビッチの監督作としては後期に属し、良作としての評価もあまり得ていない。実際に見てみると、確かに、端々に“ルビッチタッチ”と呼ばれた粋なセリフや設定の妙は見られたが、全体的には大満足とは言い切れないところがあった。もっとも、この映画には原作戯曲があり、しかもルビッチは脚本を書いていないのだから、隅から隅まで“ルビッチタッチ”というわけにもいかなかったのだろう。
主演のジェームズ・スチュワートとマーガレット・サラバンにも増して、脇役のフランク・モーガン(『オズの魔法使』(39)や『町の人気者』(43)『甦る熱球』(49)にも出ていた)がいい味を出している。
ペンフレンド同士が、互いに相手だとは知らずに同じ職場で、しかも仲違いしながら働いているという設定は、いかにも古めかしい半面、ロマンチックでもある。今ならさしづめパソコン通信やインターネットで…ということになるのかもしれない。
【今の一言】
この映画は、このメモを書いた翌年、監督ノーラ・エフロン、出演トム・ハンクス、メグ・ライアンで『ユー・ガット・メール』としてリメークされた。設定が文通からEメールに置き換えられていたが、オレにも先見の明があったということか。
ジェームズ・スチュワート
「夫婦で見たら、見終わった後で『手をつないで帰ろうか』とか、そう思ってくれたらいいですね」
https://tvfan.kyodo.co.jp/feature-interview/interview/1186143
『初恋~お父さん、チビがいなくなりました』
https://blog.goo.ne.jp/tanar61/e/8068bb4e82d12be609c87ed261733573
「ザ・シネマ」で見た『ガンマン大連合』(70)『ミネソタ無頼』(65)ですっかりセルジオ・コルブッチ作品のファンになった妻がDVDを借りてきた。
悪徳判事ポリカット(ルイジ・ピスティリ)と、アウトローのロコ(クラウス・キンスキー)たちが支配する西部の町スノーヒル。ロコに夫を殺されたポーリーンは、声を失い“サイレンス”と呼ばれる凄腕のガンマン(ジャン・ルイ・トランティニヤン)に復讐を依頼する。
舞台背景は『続・荒野の用心棒』(66)の泥から雪に、主人公が持つ“秘密兵器”はガトリング機関銃からモーゼル拳銃に、主人公が背負うハンディは『ミネソタ無頼』の盲目から、『続・荒野の用心棒』の手の傷を経て、この映画のろうあへと変化しているが、これらはコルブッチの強いこだわりを感じさせる。
『イタリア人の拳銃ごっこ』(二階堂卓也)によると、コルブッチは「私の西部劇の背景にあるのは人種問題か革命だ。もう一つの特徴は主人公が何らかの形で肉体的な障害持っていることだ。ハンディキャップを抱えたキャラクターに強く惹かれるのは、主人公をより困難な状況に置くことによって、クライマックスが一層盛り上がるからだ」と語ったそうだ。
この映画の見どころは、ひたすら雪の中で繰り広げられる西部劇という珍しさ(タランティーノの『ヘイトフル・エイト』(15)に与えた影響大)、衝撃的かつ後味が最悪なラストシーン(トランティニヤンのアイデア説も)にあるが、『ミネソタ無頼』同様、ハッピーエンドの別バージョンがあるという。
『永遠のジャンゴ』
https://blog.goo.ne.jp/tanar61/e/056a162a14eb74d6884ef3f5b479dd41