田中雄二の「映画の王様」

映画のことなら何でも書く

『殺人幻想曲』

2019-04-16 13:07:35 | 1950年代小型パンフレット
『殺人幻想曲』(48)(1994.4.)



 妻(リンダ・ダーネル)の浮気を確信した指揮者(レックス・ハリスン)が、妻を殺そうとするが…。疑心暗鬼から妻の殺害を企てた男の末路を描いたコメディ。後にダドリー・ムーア、ナスターシャ・キンスキー主演で『殺したいほど愛されて』(84)としてリメークされた。

 『モーガンズ・クリークの奇跡』(44)から続けて見たプレストン・スタージェス監督作だが、彼の映画はブラックなセリフの速射砲であり、一瞬たりとも目が離せないところがあって、それほど長くはない上映時間の割には、見ていて結構疲れることに気づいた。

 とはいえ、『モーガンズ・クリークの奇跡』とこの映画の面白さは、女に振り回されて泥沼にはまっていく男の哀れさが、映画が進むにつれてどんどんと加速していくところで、女性上位の映画として見られなくもない。

 また、この映画では、ヒッチコックばりに、オーケストラが演奏する曲に合わせて、妻を殺す幻想が三通り浮かび上がってくるところが面白いのだが、後半に展開される、当時の未熟な録音技術故の同じギャグの繰り返しにはくどさを感じた。

 で、ギャグのくどさという点で、このスタージェスの影響を最も強く受けたのはジェリー・ルイスではないのかと思った。実際、『底抜け楽じゃないデス』(57)は『モーガンズ・クリークの奇跡』のリメークでもあるわけだから、この推理は当たらずといえども遠からずという気がする。

レックス・ハリスン


ジェリー・ルイス
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『決断の3時10分』『3時10分、決断のとき』

2019-04-16 08:27:32 | 1950年代小型パンフレット

『決断の3時10分』(57)



 牧場主のダン(バン・ヘフリン)は、逮捕された無法者の首領ウェード(グレン・フォード)の護送を志願する。報酬金が手に入れば、牧場や家族が救えるからだ。一方、ウェードの手下たちはボスの奪還を画策する。ウェードを監獄まで乗せる列車が到着する3時10分までに、さまざまな思惑が交錯する。原作はエルモア・レナード、監督はデルマー・デイビス。

 フランキー・レインの歌がオープニングとエンディングに流れる手法は、テックス・リッターを使った『真昼の決闘』(52)や、この映画と同年に作られた『OK牧場の決斗』(57)をほうふつとさせる。護送の過程と列車に乗るまでの緊迫感から一気に解放するラストシーンが心に残る。


『3時10分、決断のとき』(07)(2009.7.22.松竹試写室)



 『決断の3時10分』のリメーク作。昨年、知り合いから字幕なしの輸入盤のビデオを借りて見たのだが、やはり試写室とはいえ、字幕付きの大画面で見ると印象が異なる。

 ハッピーエンドが心地良かったオリジナルと比べると、父と子の葛藤劇に変化し、随分暗く屈折した映画にしてしまったと思ったのだが、今回見直してみると、ロードムービーとしての面白さや、心理劇としての緊迫感はこちらの方が上かもしれないと感じた。

 ラッセル・クロウがカリスマ性と知性を持った悪党ウェード役を好演し、クリスチャン・ベールが十八番の屈折した役どころの牧場主ダン役で対抗する。ゲスト出演?のピーター・フォンダが年を取って父ヘンリーそっくりになっていたのには驚いた。ジェームス・マンゴールド監督作。

(2009.8.10.新宿ピカデリー)
 久々の西部劇の劇場公開(しかも3時10分の回がある!)ということで、初日に同行の士の方々と一緒に見ることにしたのだが、満員で入れずびっくり。これはクリスチャン・ベール効果なのか、はたまたラッセル・クロウ効果なのか。結局、時間をつぶして3時間遅れで見ることに。

 この映画、輸入ビデオ→試写→劇場とグレードアップするたびに印象が良くなる。今回は特に音の良さが耳に残った(アカデミー録音賞候補に挙がっていたのにも納得)。ラスト近く、2人が銃弾の嵐の中、汽車に向かって飛び出すところでは、ちょっと『明日に向って撃て!』(69)のラストを思い出した。やはり劇場で見る西部劇はいいが、新宿ピカデリーの造りはいまいちだった。

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