妻(リンダ・ダーネル)の浮気を確信した指揮者(レックス・ハリスン)が、妻を殺そうとするが…。疑心暗鬼から妻の殺害を企てた男の末路を描いたコメディ。後にダドリー・ムーア、ナスターシャ・キンスキー主演で『殺したいほど愛されて』(84)としてリメークされた。
『モーガンズ・クリークの奇跡』(44)から続けて見たプレストン・スタージェス監督作だが、彼の映画はブラックなセリフの速射砲であり、一瞬たりとも目が離せないところがあって、それほど長くはない上映時間の割には、見ていて結構疲れることに気づいた。
とはいえ、『モーガンズ・クリークの奇跡』とこの映画の面白さは、女に振り回されて泥沼にはまっていく男の哀れさが、映画が進むにつれてどんどんと加速していくところで、女性上位の映画として見られなくもない。
また、この映画では、ヒッチコックばりに、オーケストラが演奏する曲に合わせて、妻を殺す幻想が三通り浮かび上がってくるところが面白いのだが、後半に展開される、当時の未熟な録音技術故の同じギャグの繰り返しにはくどさを感じた。
で、ギャグのくどさという点で、このスタージェスの影響を最も強く受けたのはジェリー・ルイスではないのかと思った。実際、『底抜け楽じゃないデス』(57)は『モーガンズ・クリークの奇跡』のリメークでもあるわけだから、この推理は当たらずといえども遠からずという気がする。
レックス・ハリスン
ジェリー・ルイス