田中雄二の「映画の王様」

映画のことなら何でも書く

『ある町の高い煙突』

2019-04-15 20:04:10 | 新作映画を見てみた


 明治時代末期から大正時代にかけて、茨城・日立鉱山の亜硫酸ガスによる煙害に対して、当時世界一となる大煙突を建設した人々の姿を描く。原作・新田次郎。監督・脚本は『天心』(13)の松村克弥。

 足尾鉱毒事件の田中正造代議士の半生を描いた『襤褸の旗』(74)のような、日本の近代を背景にした社会派劇。国策・殖産工業に伴い、雇用などで地元も潤うが、同時に自然破壊や公害、事故なども発生するという、原発と同様の縮図がここにもあったことが分かる。そして、理想と現実のはざまで、企業と地元住民が一体となって事にあたり、よい結末を得たという希有な例が明かされる。

 新田次郎原作映画は、1970年代後半にブームがあり『八甲田山』『アラスカ物語』(77)『聖職の碑』(78)と作られた。最近では『劒岳 点の記』(09)があるが、これらに共通するのは、実話を基に、極地や山岳地を舞台にして、世間からは黙殺されながらも何事かを成し遂げた、あるいは徒労に終わった無名の男たちを描くというテーマである。この映画も、無名の男たちという部分は重なるが、一種のハッピーエンドを迎えるところがこれまでのものとは大きく違う。こうした知られざる歴史を描く映画はもっと作られてもいいと思う。
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【ほぼ週刊映画コラム】『ビューティフル・ボーイ』

2019-04-15 16:09:01 | ほぼ週刊映画コラム
エンタメOVOに連載中の
『ほぼ週刊映画コラム』

今週は

ドラッグ依存症の根深さを描いた
『ビューティフル・ボーイ』



詳細はこちら↓
https://tvfan.kyodo.co.jp/feature-interview/column/week-movie-c/1186006
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『シルバー・サドル 新・復讐の用心棒』

2019-04-15 10:28:18 | 映画いろいろ
 今週の「ザ・シネマ」の西部劇は、ジュリアーノ・ジェンマ主演の『シルバー・サドル 新・復讐の用心棒』



 監督は後にホラー映画で名を成すルチオ・フルチ。今までこの映画の存在を知らなかったが、日本では劇場公開されず、テレビ放映のみだったという。ジェンマの最後のマカロニ・ウエスタン出演作ということで、マカロニ・ウエスタンの黄昏を感じる、というよりも、この時期(78年)までこうした映画が作られていたことに驚いた。 

 銀色の鞍がトレードマークの賞金稼ぎが、父の仇の血を引く少年と出会い、彼を守ることになる。ジェンマと少年の絡みは『シェーン』(53)を思わせるところもあり、ジェンマのバディ役で、アメリカからの出稼ぎ?ジェフリー・ルイスがなかなかいい味を出している。ジェンマが乗馬シーンなどで見せる身のこなしの良さや、鮮やかなガンプレーに、『荒野の1ドル銀貨』(65)『南から来た用心棒』(66)『怒りの荒野』(67)などで演じたヒーローの残り香が感じられた。

ジュリアーノ・ジェンマ
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