『ケイン号の叛乱』(54)(1986.11.30.水野晴郎の懐かしの洋画劇場)
第二次大戦中、嵐の海上で艦隊からはぐれた軍艦ケイン号では、それまで威張り散らしていた艦長(ハンフリー・ボガート)が沈没の恐怖から精神錯乱に陥る。
下士官たち(バン・ジョンソン、フレッド・マクマレー)は艦長を解任し、嵐を乗り切って無事に帰還するが、艦長解任の是非をめぐる軍事裁判が開かれる。製作スタンリー・クレイマー、監督はエドワード・ドミトリク。
硬派のボガートが精神的な弱さを露呈する艦長役を演じているのも皮肉だが、法廷で彼を極限まで追及する冷酷な検察官(ホセ・フェラー)が実は…というラストにも皮肉が効いている。
裁判を通して軍隊の矛盾を突きながら、同時に軍隊の重要性を説くという二重構造は、作られた時代の背景に米ソ冷戦があったためか。
また、裁判のシーンには、赤狩りに巻き込まれたドミトリクの屈折した心理も反映されているという。