先日、NHK Eテレの「フランケンシュタインの誘惑E+」が、ロボトミー手術を実践したウォルター・フリーマンについて語っていた。ロボトミーは、精神疾患患者の脳の一部を切除しおとなしくさせる手術。現在では人間性を剥奪する史上最悪の外科手術とされているが、1950年代までは奇跡の手術として日本を含め世界中で盛んに行われていた。
番組の中にケン・キージーの小説『カッコーの巣の上で』が出てきた。これを映画化してアカデミー賞を受賞したミロス・フォアマン監督作では、ラスト近くで主人公のマクマーフィー(ジャック・ニコルソン)が、無理やりロボトミー手術を受けて廃人になるシーンがある。つまりロボトミーは権力や体制、そして不自由の象徴でもあったのだ。
そしてマクマーフィを安楽死させたチーフ(ウィル・サンプソン)が、「持ち上げた者には奇跡が起きる」とマクマーフィーが言っていた水飲み台を持ち上げて窓を破り、ジャック・ニッチェ作曲の不思議な音楽に乗って精神病院を脱走するシーンで幕を閉じるのだが、その時、映る患者がクリストファー・ロイド、ダニー・デビート、そしてこの映画に出演後、白血病で亡くなった名脇役のウィリアム・レッドフィールドたちだった。今でもこのラストシーンを見ると感動する。
https://www.youtube.com/watch?v=c3Dz6FOE_Gk
『アカデミー賞のすべて』